かみかわ陽子のラジオシェイク第10回オンエア(2)アッパレ会幹事・川野泰寛さんを迎えて

 1月22日(日)8時30分からFM−Hiでオンエアの「かみかわ陽子のラジオシェイク」、つづきです。今回は初めてゲストをお迎えしました。




 
(鈴木)さて、ラジオシェイクは昨年4月からスタートして、今日で10回目の放送となりました。年も改まったということで、今回はスタジオに特別にゲストをお迎えしました。陽子さんからゲストをご紹介いただけますか?

(上川)初めてお迎えしたゲストは、川野泰寛さんです。「市民と静大・共同企画講座をすすめる会〜アッパレ会」の幹事で、静岡文化芸術大学大学院文化政策研究科2年、25歳です。こんにちは川野さん。
 
 
(川野)はじめまして、川野です。

(上川)今日は大学院のある浜松から来てくださったんですね、ありがとうございます。

(川野)こちらこそ、お招きありがとうございます。

(上川)アッパレ会ってなかなかいい名称ですねえ。1月は新成人が船出する時期ですし、受験や就職を前に若者を取り巻く環境について考えてみようと、当事者でもある川野さんに、若者代表、ということで来ていただきました。川野さんは大学院の2年生だそうですが、就職のほうは・・・?

(川野)おかげさまでなんとか、この4月から不動産関係の会社に勤めることになりました。

(上川)大学院での研究と関係は?

(川野)残念ながらまったく関係のない営業職です(笑)。大学院ではアッパレ会や天晴れ門前塾の活動の延長といいますか、大学における教育政策や地域連携について研究しています。

(上川)その「アッパレ会」というのは、市民と大学の壁を超えて、互いに学びの機会を持つ地域活動の会ということですが、具体的にどんなことをやっているんですか?
 
 
(川野)もともと地域活動に熱心な社会人の方々が、静岡大学人文学部の履修生の成果発表会や郊外ゼミを経済的に支援するために2004年に立ち上がったものです。具体的には「情報意匠論」と「静岡の文化」の二つの授業をサポートしており、「情報意匠論」から生まれた『天晴れ門前塾』とSPACのリーディングカフェも支援しています。
 『天晴れ門前塾』は「情報意匠論」を専攻していた学生の有志が、第一線で活躍する社会人の方々を講師としてお招きし、少人数のゼミを自主的に行うというものです。
 この組織には静大生に限らず、静岡県内の大学、短大、専門学校生が参加しています。市内各地を会場に、毎年、5つから7つぐらいのゼミが企画され、学生は一つを選択し自由に参加します。年度末の3月にはゼミ生が合同で成果発表会を開催します。そんな活動を2005年から2010年まで続けました。

(上川)ここに資料があるんですが、ゼミのテーマは実に多種多様ですね。静岡の町の歴史を学ぶゼミ、仕事に対する心得やリーダー論を学ぶゼミ、日本経済の話、農業の話、ジャーナリズムについて等。社会のあらゆる項目について取り上げ、講師も静岡を代表する、現役バリバリの社会人の方々です。
一般に、大学で社会人を招いて講義やゼミを行うという例はよくありますが、学生のほうから地域に飛びこんで一線で活躍される方々から直接学ぶというケースは珍しいですね。新しい試みとして期待されるところですが、5年間で終わってしまったんですか?

(川野)門前塾のほうは現在、休止状態なんですが、学校間の垣根をとった組織も珍しいし、サポートするのが企業やNPOではなく、一般市民有志の会というのも全国的に非常にレアなケースなので、ぜひ続けてほしいと思っています。

(上川)川野さんはどんなゼミに参加されたの?

(川野)私は参加もしましたが、運営の裏方を中心にやってきました。静大1年生のとき先輩に「ちょっと手伝わないか」と声を掛けられ、2年生のとき運営スタッフになり、3年〜4年と代表を務めました。どうも自分自身で熱心にやり過ぎて後輩をうまく育てられなかったせいか、自分が静大を卒業した一昨年、昨年と、門前塾の活動は休止状態になっています。

(上川)それはもったいない話ですねえ。

(川野)こういう活動に限らず、今の学生にとって一番大事なのは「動機づけ」だと思うんです。自分がこの活動を必要とする理由ですね。
 私は最初、先輩からやれと言われて受身で参加したのですが、運営の仕事は社会人の方との接触が多いので、コミュニケーション能力が大いに鍛えられました。そうなると途中からどんどん楽しくなって、運営することが楽しいというように、参加の動機が明らかに変わっていったんです。

(上川)大学教育や地域連携について研究しているとおっしゃいましたが、天晴れ塾の活動を通して研究テーマが煮詰まっていたのですね。この活動がなければ別の研究をしていたのでは?

(川野)たぶんといいますか、確実にそうですね。

(上川)今はどんな具体的にはどんな研究をされているの?

(川野)大学院では文部科学省の「GP(グッドプラクティス)」という事業を研究しています。全国から毎年300〜600件ぐらい応募があって、50〜100件ぐらいが採択されるんですが、採択された取組みを平成15年度〜平成22年度までまとめて分析しています。採択された事例の中の100件程度が大学と地域の連携事業です。これらが、どのように学生の教育に活かされているのかを、今、調査をしているところです。

(上川)どんなことが見えてきましたか?

(川野)問題だなと思うのは、現状では、私立大学や一部の公立大学では、就職支援教育を、学問教育よりも優先していること。つまり大学が、職業訓練学校か専門学校みたいになっているんです。それをGP事例として採択してしまった=文科省が認めてしまっているんです。採択事例の中には、授業すべてを必須化し、就職試験の面接方法まで科目として教える大学もあるんです。

(上川)聞いてはいましたが、高等教育の場が想像以上に職業予備校化してしまっているんですね。

(川野)そのとおりです。

(上川)学ぶ動機や面白さを考える機会がなければ、社会に出てからも応用のきかない、意欲がともなわずに型にはまった仕事しかできない社会人になってしまう・・・日本の先行きに強い警鐘を鳴らしているような重い指摘です。

(川野)大学に、高校までの教育と、社会が求める教育の隙間というか矛盾点を埋める役割を求められているのは事実です。だからといって社会を知るための就職支援一辺倒ではなく、もう少し教育・研究を大事にして、地域連携をうまく利用していくような方法を大学は模索すべきだと思うんです。

(上川)キャリア教育自体も工夫が必要なんですね。天晴れ門前塾のような活動は、まさにキャリア教育の新しいタイプの取り組みと位置付けしていいんじゃないでしょうか? ぜひ続けてほしいですね。

(川野)はい。自分も出来る限りのサポートをしていきたいと思っています。

(上川)この静岡から市民や学生の力で新しい発信ができたことを知って大変嬉しく思いました。その思いをつなげていくことも政治の責任だと実感しています。今日は大変いいお話をうかがえました。ありがとうございました。
 


 
(上川)今日は新年のスタートに当たり、川野さんというこれからの日本を背負って立つ若者代表の方にきていただきました。私が学生の頃は、大学が象牙の塔のような時代でしたが、地域に開かれたところで学生の力を広げていくという試みが芽生えているということ、とくに静岡の中で具体的な試みが始まっていること、大変心強く思いました。
 静岡は大学がたくさん集積していますので、個人や市民のご努力だけでなく、行政も巻き込んでどんどん広がっていけばいいなあと思います。

(鈴木)・・・若いイケメン相手に軽口の一つも出るかと思ったんですが(苦笑)、内容の深さに聞き入ってしまいました。

(上川)大学生の皆さんにとっては就職試験に直面し、大変な時期だと思います。静岡県内の11月末時点の大学生就職内定率が60.2%といわれる今、本当に若者が将来に夢や希望が持てる社会を作らなければとひしひしと思います。今日は新年早々、深く考えさせられました。

(鈴木)リスナーのみなさんにも、内定率の数字ばかりでなく、今の大学を取り巻く環境全体について問題意識を持っていただけるといいですね。

(上川)これからも色々なテーマでお話をしてまいりたいと思います。みなさんからもさまざまな声を寄せていただいていますので、考える機会を増やしていきたいと思います。

(鈴木)2012年のラジオシェイクも、より問題に深く寄り添ってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

(上川)最後までお聴きくださったみなさま、ありがとうございました。ごきげんよう。
収録中の上川(左)、川野さん(中央)、鈴木(右)
収録中の上川(左)、川野さん(中央)、鈴木(右)
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