かみかわ陽子のラジオシェイク第16回オンエア(1)新東名に活かされた県産木材

 5月15日18時30分〜FM−Hiでオンエアのかみかわ陽子ラジオシェイクの内容を2回に分けてご紹介します。

 

 

 


 

MC/高田梨加  陽子さん、こんばんは。


 

 

(上川)こんばんは。上川陽子です。


 

 

(高田)新東名が開通して1カ月経ちましたね。陽子さんは利用されましたか?


 

 

(上川)ええ、ゴールデンウィーク中に、静岡から浜松までの区間だけですが探索してきました。道路が広くて、坂やカーブも少なく、ついついスピードが出てしまう道路ですね。


 

 

(高田)山間地を通るだけあってトンネルが多いようですね。


 

 

(上川)運転してくれた事務所のスタッフが、トンネルの中では前を走る車がとても見やすかったと言っていました。照明の当て方にも工夫があったようですね。今までのトンネルは路面が明るく、前の車がやや暗く見えていたのですが、新東名では、プロビーム照明といって、路面を暗くし、前の車が明るく見えるよう角度を変えているそうです。


 

 

(高田)陽子さんご自身はハンドルを握ることは?


 

 

(上川)免許は持っていますが今はほとんどありません。実は私、お恥ずかしいんですが、トンネル恐怖症なんです(苦笑)。トンネルのような狭い空間に入ると圧迫感を感じて、目がクラクラっとします。新東名のトンネルを通ったときも、最初のうちはちゃんと見ておかなきゃ、と思っていたんですが、途中から目をつむってじーっと息をこらしていたんです(笑)。


 

 

(高田)まあ、陽子さんにそんな弱点がおありだったとは意外ですねえ・・・!

 今日は、その新東名についてのお話をうかがえるそうですので、楽しみにしています。ではここからは聞き手のコピーライター鈴木真弓さんにバトンタッチいたします。


 

  ♪


(上川)改めまして、リスナーのみなさん、こんばんは。上川陽子です。


 

 

(鈴木)コピーライターの鈴木真弓です。どうぞよろしくお願いいたします。いやあ、トンネル恐怖症とは知りませんでした。新東名のトンネルは車のヘッドライトをつけ忘れても気がつかないくらい明るく走りやすかったですよ。もちろんつけ忘れてはいけませんが・・・。


 

 

(上川)トンネルの照明はプロビーム方式のセラミックメタルハライドLEDという環境にもやさしい新技術を採用しているようです。

 ほかにもトンネルを掘るときには、トンネルボーリングマシンという最新鋭の導杭掘削機で、まず穴を通してから幅を広げていくという工法をとりました。地質を確認し、必要なところには補強を施しながら掘削できるので、工期が短縮し、コストも削減できたそうです。新東名には、このように、さまざまな新技術・新工法が導入され、日本が世界に誇る道路技術をあますところなく発揮されましたね。


 

 

(鈴木)新東名の建設は、途中で予算が削減され、紆余曲折あったようですが。


 

 

(上川)新東名は1987年に計画が閣議決定され、89年に基本計画が公示されまして、1993年から工事がスタートしました。しかし10年経った2003年の第1回国土開発幹線自動車道建設会議で建設費が削減されることになり、2005年には道路公団の民営化で、ますますコスト削減努力が求められるようになったんですね。


 

 

(鈴木)公共事業には何かと風当たりの強い時代でしたね。


 

 

(上川)道路作りに限らず、日本のモノづくりは、狭い国土で資源が少ないとか、コスト削減といった厳しい条件があったからこそ、創意工夫が生まれ、試行錯誤を繰り返し、切磋琢磨された上に、高い技術が確立してきたと思うんです。

 事実、新東名は予算が削られたにもかかわらず、静岡県区間に限って言えば、予定よりも1年も早く開通できました。これには、災害などの緊急時に、現東名とのダブルネットワークが必要だという地元の後押しもありましたが、実際、私も走ってみて、工事の難しい山間部で、よくこれだけの道を1年も前倒しで開通させたなあと素直に感動しました。


 

 

(鈴木)高い品質と低コストの実現という矛盾する課題に立ち向かう、日本のモノづくりらしさの象徴といえますね。


 

 

(上川)新東名には山間部に造られましたので、周囲の自然環境に対する配慮も行きとどいているんですよ。高速道路の両サイドにグリーンののり面が続いているでしょう。あそこには道路を作るときに伐採した森林の根株から堆肥を作って吹き付け工事をしてあります。新たに植えた木も、地元の自生する木から種を採取して育てた同じ品種の木です。外から違うものを持ち込んでその土地の自然の循環を壊すことのないよう配慮したんですね。目立たないことですがとても重要なことです。


 

 

(鈴木)新東名は、新緑の季節のドライブにはもってこいのグリーンハイウエイです。そういう目に見えない工夫もあったんですね。


 

(上川) それだけではありません。上り線の掛川・平島トンネルを出たところに、約1?の木の遮音壁があるんですが、ご存知ですか?


 

(鈴木)いえ気が付きませんでした。


 

(上川)新東名の遮音壁は景色が見えるよう透明の板で出来ているところが多いんですが、この区間だけ木の丸太を積み重ねたウッディ調の壁なんです。景色は見えませんが、周囲の雰囲気にはとてもマッチしています。

 実はこの防音壁に使われた木材は、すべて静岡県産の木材です。私は初当選のとき、自民党の若手議員とともに「地産材の活用推進議員連盟」というのを立ち上げまして、国産材の新たな利用促進のための政策作り・予算づくりに奔走しました。木材需要が減り続けると、森林を管理する手が減り、森は荒廃し、土砂災害は頻発し、水資源も枯渇してしまうという悪循環が起きるのです。これを食い止めるには、とにかく林業を活性化させなければならないという危機感がありました。


 

(鈴木)確かに、手入れのされていない放置林や竹藪が増えていますね。


 

(上川)当時、すでに安倍・藁科川上流域の山も「伐採するほど赤字」と林業従事者が頭を抱えている状況でした。私は議連のメンバーを静岡市内の木材利用住宅の視察にお連れしたり、全国の木材利用事例を視察した中、ちょうど新東名の工事が始まっていたことから、地元材を使って木製の遮音壁を作ろうというプロジェクトを立ち上げたんです。

 静岡木材業協同組合の方々と一緒に、当時の道路公団に要望に行きまして、「耐久性とコスト面で、金属製防音壁と匹敵するレベルになれば、採用の可能性あり」という約束を取り付けました。その後、実用に向けて試験研究を積み重ね、見事採用されました。


 

(鈴木)ちょうどいいタイミングだったんですね。


 

(上川)議連の活動が功を奏し、2010年には「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。これによって、高速道路利用者のための施設、サービスエリアやパーキングエリアや遮音壁が、晴れて、木材利用推進の対象になりました。

 新東名では、掛川平島トンネル上り線出口の1.060メートルの遮音壁のほか、浜松サービスエリア、遠州森町パーキングエリア、掛川市パーキングエリア、藤枝サービスエリア、静岡サービスエリアの休憩所お手洗いの内装や植栽の支柱などに、静岡県産材が使われています。


 

(鈴木)静岡のサービスエリアでお手洗いを使いましたが、確かに木目の落ち着いた内装で、とてもよかったです。あれ、地元の木材だったんですね。


 

(上川)静岡県産材を普及させるには、建物の内装や家具にもっともっと使ってもらわねばなりません。近年、価格の安い外国産木材や加工品が大量に輸入され、価格や工法面で太刀打ちできず、国産材需要は急落の一途をたどっています。静岡木材業協同組合のみなさんも危機感を持っていらっしゃいますが、森林の所有者、木材業者、加工業者、流通販売業者と立場の異なる人々を一つにまとめるのは至難の技です。新東名のような、誰もが手を上げやすい、公共性や社会性の高いプロジェクトが必要になるんですね。


 

(鈴木)陽子さんならいろいろアイディアを提案できるんじゃないですか?


 

(上川)ええ、実は、山のない自治体の小学校に静岡の木製机と椅子をプレゼントしようというプロジェクトを提案したんです。静岡市内の各小学校には、静岡産の木製机と椅子が普及しているんですが、森林を持たない都市部や海岸部の自治体の子どもたちにも送ろうと、議連メンバーで大阪府選出の議員に話を持ちかけ、大阪の学校に静岡産木製机と椅子を送ったんですよ。


 

(鈴木)えっ、大阪で静岡産の木の机と椅子が使われているんですか?


 

(上川)そうなんです。このように、木材をきっかけに都市と中山間地の地域間交流がもっともっと進展してほしいと思います。

(つづく)
 

 


 

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