5月1日オンエアのかみかわ陽子ラジオシェイクの続きです。
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(鈴木)さて後半は、宇宙とは正反対の、地球の海の奥深い話をしたいと思います。海の底というのは宇宙と同じくらい、人間にとって可能性に満ちたフロンティアなんですよね。
(上川)私は、フロンテイアという言葉を聞くと体がウズウズしてきて力が湧いてくるんです。開拓者精神というのが大好きなんですね。議員時代には宇宙にも海洋にも、力を入れてきました。
実は女性初の国土交通大臣であった扇千景大臣から、あるときお電話をいただきまして、「大陸棚推進議員連盟」という組織を立ち上げ、事務局長に就任してほしいと言われたのです。
わが国は、約447万平方kmという世界で6番目に広大な排他的経済水域を擁する海洋国家です。私自身、「22世紀 海洋国家日本」と題した百年レベルの国家戦略を、当時の福田総理に提言したこともあるんですよ。この先、日本が持続可能な発展を続けていくためには、何としても海洋資源や空間を有効に活用し、海洋権益をいかに確保していくかが重要です。そんな問題意識が前提にありました。
(鈴木)海洋資源というと、最近では「メタンハイドレート」というのが、次世代の新エネルギーとして注目されていますね。
(上川)海底資源の中でも、希少鉱物資源である「レアメタル」や「メタンハイドレード」が注目されています。
「メタンハイドレート」は、メタンガスと水が結び付いたシャーベット状の物質で、火を付けると燃えることから「燃える氷」と呼ばれています。燃える時に出るCO2が、石油や石炭の半分以下というエコ資源なんですね。これが水深500〜1000メートルの海底の地下に、数百メートルの層にわたって存在すると期待されています。日本の周辺海域では、北海道周辺と本州南方沖の斜面、そして静岡県の遠州灘沖も有望といわれています。
経済産業省に、「メタンハイドレート研究開発コンソーシアム」という組織ができて、2016年度ぐらいをめどに試掘をして研究開発する目標で活動しています。まさに新エネルギー開発の期待の星です。
(鈴木)・・・なんかすごいですねえ。ちょっと初歩的な質問で申し訳ないんですが、公海と大陸棚と排他的経済水域ってどう違うんですか?
(上川)まず、日本の領海は12海里、そしてその先の200海里までを排他的経済水域といい、海底資源はもちろんのこと、海洋にある資源も占有することができます。
それより外は、公の海である「公海」が広がり、船舶は自由に通行することができるルールとなっています。そして、国連の海洋条約により、新たに「大陸棚」が200海里の外側、つまり公海上に伸びていることが証明できれば、その部分の海底資源を占有できることになったのです。
ここで問題は、日本の周辺海域で、大陸棚がどこまで外側に伸びているか、海底の様子を調査し、証明しなければなりません。私たちの住んでいる陸地にも2000メートル級の山や谷がありますが、それと同じように、海の中にも海嶺といわれる山や海溝といわれる谷があるんですよ。
そうした海洋のうち、太平洋岸の調査区域を設定し、1万メートルの海底を探査できる探査船「地球」や資源探査ができる船を総動員して、数年がかりで調査し、さらに集めた膨大なデータを解析して、その結果を国連に「大陸棚」を申請するプロジェクトが発足したんです。その過程で、私たちの「大陸棚推進議員連盟」が全面的に応援しました。
(鈴木)「大陸棚」は各国が独自に調査するわけですか。
(上川)実は、「大陸棚」については、海洋権益をめぐる国際関係が背景にあります。
現在、海洋は、「海洋法に関する国際連合条約」(UNICLOS)によって管理されていますが、大陸棚の定義は、第2次世界大戦以前は、地質学的に大陸や島をとりまくなだらかな斜面の台地を海底水域と認定し、水深200メートルを範囲として大陸棚、と位置付けました。
ところが1945年、アメリカが天然資源の保護を理由に、「たとえ公海であってもアメリカ海岸に接続している大陸棚の海底下の管理と天然資源の権利を有する」と宣言したのです。トルーマン宣言といわれるものです。そして、13年後の58年には「領海のすぐ外側の200メートル海底までとし、それ以外でも天然資源の開発が出来るならそこまでOK」となり、高い技術力を持つ国が事実上、無制限に大陸棚を拡張できることになりました。
(鈴木)アメリカが、いわば海洋資源を争う時代の引き金を引いたんですね。
(上川)1960年代は、アジアやアフリカ諸国が続々と独立して国連入りをし、経済的自立を目指して資源ナショナリズムを全面に押し出します。そうなると、どこの国にも属さない手つかずの公海に手を出す国も出てきます。
そこで、67年に、世界の海は国際機関が平等に管理し、平和利用すべきだという「バルト提案」が出され、82年に海洋法条約が採択されたんですね。このとき、領海線から200海里以内を『排他的経済水域』と定義づけ、水域内での天然資源の探査・開発・保存・管理を保障したんです。
国連の海洋法は82年に採択されはしましたが、国連加盟の60カ国以上が批准しなければ条約として正式に発効されないので、実は発効されたのは12年後の1994年なんです。しかも、加盟国が「うちの国の大陸棚はここまでです」と申請するのに、調査に膨大な時間を要し、国連の委員会のほうもはっきりガイドラインを決めたのが99年のことでした。99年以前に条約を批准した国については、99年から10年間を申請期間とし、96年に批准した日本もここに該当します。
(鈴木)ちょうど陽子さんが国会で活躍されていた時期と重なりますね。
(上川)ええ。それで私も申請手続きに関わることになったんです。日本は2008年11月に申請しました(注)。九州パラオ海領南部海域、南硫黄島など7つの海域約74万平方メートルを申請したんです。
(鈴木)他の国ともめたりしませんでしたか?
(上川)申請についての審議内容は非公開なんですが、大陸棚が向かい合っている国同士、海岸線を隣接する国同士、たとえば太平洋上や北海周辺の国は、当然、権利主張が重なってきますね。
日本は2010年に「海底資源エネルギー確保戦略」を発表し、東シナ海や日本海でも、中国・韓国と排他的経済水域をめぐる主張の対立が表面化しました。とくにこの領域でのレアメタル資源探査は、次世代エネルギー開発にも大きな期待がかかります。日本がこの問題で、外交上、どうやって折り合いをつけるのか、他国と権利主張がぶつかり合っている国々、とくに発展途上国は、非常に注目しているんですね。
(鈴木)そういう話を伺うと日本には外交、防衛に強い政権が必要だと実感しますね。
(上川)大陸棚の問題に限ってみても、外交防衛の最前線にかかわるものですし、これからの安全保障は、防災対策や水資源環境の問題も含まれます。大陸棚の調査で巨大地震の巣を見つけられたわけですし、水を巡っては石油に代わるほど国際紛争の火種になると懸念されています。
日本のよう島国は、海洋資源の権益を守るということが国益に直結するのです。同じ島国のイギリスがいち早く近代文明を築いたのは、世界の海に船を出し、水兵たちが世界中の国の情報を集め、本国に報告した、情報力の強さだとも言われます。日本は少なくともこの分野の情報戦を勝ち抜かねばならない、と実感します。
エンディング~BGM~
(鈴木)今日は宇宙と海洋の興味深いお話をうかがいました。なんだか世界地図や地球儀をじっくり眺めてみたくなりました。
(上川)夢のある話にしようと思ったんですが、つい、政治的な話題になってしまって、堅苦しかったかな・・・。でも海に囲まれた資源の乏しい日本という国の未来を、子どもたちがどんなふうに描いてくれるのか、お聴きになっている親御さん世代が、子どもたちに考えるきっかけを与えてくださると嬉しいな、と思います。
(鈴木)ところでGW期間中はどんな活動を予定されていますか?
(上川)新茶のシーズンです。安倍藁科の中山間地に点在するお茶工場を応援に行く予定です。
(鈴木)わかりました。そろそろお時間となりました。次回もよろしくお願いします。
(上川)よろしくお願いします。最後までおつきあいくださったリスナーのみなさま、本当にありがとうございました。それでは、再来週までごきげんよう。
*注)この回の収録後の4月27日、外務省は日本の大陸棚の拡大が太平洋4海域の計31万平方キロメートル(国土面積の約82%)に認定されたと発表されました。日本政府は2008年に7海域74万平方キロメートルの拡大を申請していますので、今回認められなかった海域についても審査内容を分析し、今後の対応を検討するとのことです。