<2015年10月6日オンエア>
(上川)皆さまこんばんは、上川陽子です。
(鈴木)コピーライターの鈴木真弓です。どうぞよろしくお願いします。10月に入りました。行楽シーズン真っ只中、ということで、陽子さんのもとにも、静岡から国会見学ツアーの依頼が増えているんじゃないですか?
(上川)そうなんです。修学旅行の小学校の皆さんを大勢お迎えしていますよ。この秋は静岡市内の40校、約2000人の児童生徒さんたちに、私の職場でもある国会議事堂をご案内しています。私自身が公務で手が離せないときは事務所のスタッフに案内してもらっています。
(鈴木)40校2000人ってすごい数ですね。
(上川)子どもたちにとって修学旅行は思い出の旅ですね。私自身、小学校時の修学旅行も国会議事堂でした。ちょうど先月、参議院において平和安保法制で紛糾していた日に、松野小学校(児童総数は48人)から6年生7人を迎えていました。
(鈴木)ニュースで見ましたが国会内が大混乱していたあの日ですね。
(上川)朝、衆議院の門の前でお迎えしたときは「今日は国会にとって特別な日ですからよく見てくださいね」とお話しました。「もし衆議院で同じようなことが起きたらと思うと、今日は奇跡的な日なんです」と。そうしたら、見学の途中で、ちょうど委員会待機中の安倍総理が出てこられたそうです。総理は子どもたちの姿を認め、手を振って挨拶してくれたそうで、子どもたちは大喜びでした。
(鈴木)松野小学校6年生のみなさんにとっては強烈な“政治体験”になったんじゃないですか?
(上川)国会が表も中もドラスティックに動いていた、きわめて重要な日でしたからね。あの日に国会に行って総理大臣に会ったということが、子どもたちにとって何かしら政治というものに興味を持つきっかけになるのでは、と期待しています。
今、法務省の中で私が力を入れているのが法教育です。やっぱり子どもたちにとって小さなときからルールを守る、他人の意見に耳を傾け尊重する、自分の主張もしっかりするという積み重ねをしてほしいと思うのです。
9月12日には法務省としては6回目の車座ふるさとトークを群馬県高崎市立佐野中学校で行いました。高崎市は全国の中でも先駆けて協議会を作って法教育に取り組んでいる自治体で、今回はふるさとトークの前に佐野中学3年6組の生徒たちの模擬裁判を1時間の授業の中で見せていただきました。
この裁判は実際に起きた犯罪をテーマに起こったもので、3年6組の教室を裁判所に見立て、3人の裁判官、隣を囲むように6人の裁判員、被告席及び弁護人、そして検察官で法廷を再現するんです。手前に傍聴人役、その後ろにそれらすべてを膨張する大人たち、という配置です。
(鈴木)法廷内はすべて生徒さんたちが演じるんですか?
(上川)授業ですから先生が指導しますが、同時にプロの検察官が検察官役の生徒の隣でフォローするんです。
(鈴木)本物の検察官が付き添っているんですね。
(上川)付き添うというか、法廷の中で展開する動きを把握しながら、適宜介入しその意味や考えるヒントなどを問うたり解説したりします。生徒たちはそれぞれの役割を演じ、冒頭陳述や論告求刑なども行います。裁判員の評議の場面では、端緒となる証拠が証拠として足りうるか皆でディスカッションして結論を出します。有罪か無罪か意見は分かれるんですが、大切なことは自分で考えたことを発表する、あるいは人の意見をしっかり聞くということ。指紋の証拠能力についてもさまざまな角度から検討を重ねます。つまりディスカッションする力がそこで養われるわけです。模擬裁判は大学レベルでは見たことがあるんですが、中学生レベルでは初めてなので強烈な印象でした。これは非常に有意義な教育であると。
(鈴木)指導される先生方が素晴らしいのですね。
(上川)佐野先生という女性の社会科の先生ですが、ご自身で教材を作るなど大変熱心に取り組んでこられたそうです。そのような現場の先生方をサポートする意味でも共通の教材が必要であり、先生の指導力についてもしっかりとした研修が必要ではないかという問題提起をいただきました。
( 鈴木)法教育とひと口に言っても法律を学ぶということ以外に、考える力を養うという意味で非常に価値のある教育ですね。
(上川)そうですね。その後に行なわれた車座トークでは、協議会のメンバーである大学教授や高校の先生、大学生、PTA、弁護士会の方々に交じって、模擬裁判に参加した生徒さん2人も加わったのです。その一人が「裁判というのは遠い存在だったけどすごく身近に感じられてよかった」と感想を述べていました。やはり体験授業というのはテキストで学ぶ以上に多くの学びがあるな、それこそが法教育の醍醐味であると大変勇気づけられました。
(鈴木)最近聞いた言葉ですが、人間は、口は1つだけど耳が2つあるのは、しゃべるよりも2倍人の話を聞くことが大事だから、ということらしいのです。お互いの顔を見ながら相反する意見を戦わせ、とことん議論し合うなんて、スマホ世代の子供たちがふだんの生活ではなかなか経験しませんよね。その意味でも模擬裁判の体験というのは子どもたちにとって大きかったのではないでしょうか。
(上川)今の子どもたちを取り巻く社会環境は、スマホのように文字や映像の情報を直接得られる機会が非常に多く、その情報をどう受け止め行動に移していくべきか、しっかり考える以前に情報が多すぎて対応しきれない部分もあると思います。来年の参議院議員選挙からは選挙権が18歳に引き下げられます。車座トークでは中学生の一人から「模擬裁判もいいいいけど模擬選挙もやってみたい」という声も上がり、大人たちがびっくり感心しました。そういうことにもチャレンジしてほしいなと思います。
(鈴木)教育現場へのサポートも必要になるでしょう。
(上川)そうですね。今の国語、英語、数学といった受験科目に、ぜひこういう分野も取り入れてほしいという提言が、実は保護者の皆さんからもありました。受験科目に入れないとこういう勉強が主流になってこないという本音の提案ですね。しっかり文科省にも伝えますとお応えしておきました。
(鈴木)その意味では得るものが大きな車座トークでしたね。
(上川)高崎市だけでなく全国でのいろいろな取り組みをサポートすることを政治の中でしっかり考え、具体的な施策にしていかねば、と思いました。
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(鈴木)さて、後半は静岡での活動についてうかがいます。先月のシルバーウィーク、静岡市では徳川家康公顕彰四百年祭のメインイベント「駿府天下泰平まつり」が開かれました。陽子さんも参加されたんですよね?
(上川)私は9月19日から21日まで駿府城公園で開催された「第56回全日本花いっぱい静岡大会」の開会式に参加しました。この大会は法務省の「社会を明るくする運動」とまったく同じコンセプトで始まったものです。
(鈴木)以前、ラジオシェイクで紹介してくださいましたね。戦後まちが荒廃し人々の心にも余裕を持てない中で、「社会を美しく・明るく・住みよく」しようと始まった運動ですね。
(上川)そうです。法務省が呼びかけた「社会を明るくする運動」と連動し、花を通じて人々の気持ちを豊かにとの願いを込めて始まったのが「花いっぱい運動」です。昭和27年、松本市の小学校の教論だった小松一三夢さんという方によって始められました。以来、多くの市民有志の共感と協力のもと、昭和30年には「全日本花いっぱい連盟」が結成され、第1回全国大会が開かれました。それ以降、全国の都市で巡回されるようになり、今年の静岡大会で56回目になります。「花いっぱい」というコンセプトは世界共通であり、法務省としても有益であると考えています。
(鈴木)土を触り植物を育てることで心をいやす園芸セラピー効果ということもいわれますよね。
(上川)町を花で飾るのは町づくりのコンセプトとしてありますが、花を植えるだけでなく、落ち葉や枯葉を掃除し、道路をきれいにする運動へと広がるんです。東日本大震災の復興ソングに「花は咲く」がありますが、花いっぱい運動にもつながるでしょう。民の力でつなげていくことが社会づくりの大きな力になるのです。
(鈴木)戦後始まったそういう運動を、今回、家康公顕彰400年祭に合わせた理由とは?
(上川)ご存知の通り、家康公が築いた平和な時代、将軍から庶民までが身分や階級を越えて園芸を楽しんでいたといわれます。草花を生けたり盆栽にしたりと、日本人特有の価値観や美意識で園芸文化が花開いたんですね。平和な時代を尊ぶ思いは、戦後の「社会を明るくする運動」や「花いっぱい運動」に通じるものです。
(鈴木)確かに、平和な時代でなければ花を育て、盆栽を愛でるという心の余裕は生まれませんよね。
(上川)せっかく静岡市で開く全日本花いっぱい静岡大会を、家康公の顕彰事業と組み合わせ、花いっぱいの静岡市を全国に発信しようと市民・事業者・行政の協働で開催したというわけです。今回は趣味の園芸フェアin静岡、花壇コンテスト、家康公ゆかりの園芸展、秋の園芸市、緑化体験などさまざまな催しが開かれました。盆栽を育てるというのは気の長い話ですから、こういう文化が家康公の時代から本格的に根付いたということを駿府静岡の魅力として、2020年にもつなげていってほしいと思います。
(鈴木)そう考えると駿府城公園ももっともっと一杯いろんな花を植えて、日本を代表する花の公園になってほしいですね。
(上川)大変いいアイディアですね。同時にお茶のまち静岡も発信していきたいと思います。その場合、駿府城公園のみならず南アルプスまで続く茶畑を借景とした景観の魅力が強みになります。
(鈴木)海外の方は日本の茶畑が素晴らしいと絶賛します。
(上川)しかもお茶は健康によいということですからこの部分も推進していきたいですね。実は10月25日に大きなイベントがあります。以前、私が駿府本山お茶まつり実行委員会の委員長を拝命したとお話したことがあると思いますが、5月に摘み取った新茶を茶壺に詰めて井川の大日峠で半年熟成させ、秋に熟成茶を味わった家康公の故事に倣い、井川から茶壺を運ぶ「お茶壺道中」を再現するのです。25日には久能山東照宮で茶壺の封を開ける「口切の儀」を行い、家康公に奉納します。多くの方に来ていただきたいと思います。
(鈴木)陽子さんは道中の先陣を切って歩かれるんですね?
(上川)今年は中東の大使をお招きしようと考えているんですよ。静岡のお茶の800年前の聖一国師を祖とした歴史をまるごと海外にも伝えたいと思うのです。明治時代、静岡の茶は日本の輸出品の主力となり、茶町から清水港を経て海外へ輸出されていた歴史がありますから、これを平成の時代のビジネスとしてつなげたいと思います。
さあ、そろそろお時間となりました。最後までおつきあいくださったリスナーのみなさま、本当にありがとうございました。それでは次回まで、ごきげんよう。