出張先インドでの記者会見において「総裁選に臨む覚悟」を問われたのに対し、私は次のような趣旨のお話をしました。
総裁選に臨む覚悟
●私は新人議員の頃から、団塊ジュニア世代が65歳を迎え、65歳以上の世代が全人口の約35%を占める、いわゆる「2040年危機」の問題に強い関心をもち、取り組んできました。これからの日本は人口減少と少子高齢化が進むにつれ、様々な社会問題~労働力の不足や年金・医療・介護システムの脆弱化、経済の縮小スパイラルなど~が徐々に表面化し、2040年に至って決定的に回復不能な危機的状況に陥る事態が予想されています。
●私自身は、国際社会において光り輝いていた1980年代までの日本を知る世代ですが、バブル崩壊後の日本は社会の持続可能性すら見通せない厳しい状況にあります。2040年頃、日本が直面するであろう「真の危機」を思えば、今こそ危機克服のための大きな構造的・社会的変革が必要です。
●しかし日本がそうした危機的状況に到るとの警鐘が鳴り続ける中、政治はこれまで危機の実相と真の改革の必要性を国民にありのままに伝え、負担が伴う政策についても理解と協力を真剣に求めてきたでしょうか。さらにそれ以前に、政治は国民の信頼を得るべく十分に努めてきたと言えるでしょうか。
●次に、目を「世界の中の日本」の現状に転じてみます。私自身、この一年、日本の外務大臣として、外交に専心してきましたが、この間、私が強く感じたのは、日本に対し海外から寄せられる厚い尊敬と信頼です。これらは日本が戦後約80年、一貫して平和外交に徹し、経済援助や人道支援、気候変動対策への支援など地道な努力を積み上げた成果です。日本への期待は、分断と対立を深める国際社会の中で、ますます強まっています。しかし残念なことに、こうした期待は経済力の衰えにより中国に上書きされ、日本の存在感が徐々に後退しつつある現状です。日本はこれからも国際社会からの期待に応え、引き続き存在感を維持していけるでしょうか。
●外務大臣として海外出張した折、一般には「内向き」といわれる日本の若者たちが、アジアやアフリカで実にイキイキと活動している姿に数多く接する機会がありました。彼らは、「いずれは日本に戻る」という感覚より、「世界の舞台でずっと活動し続けたい」との思いを強く持っているようです。こうした海外で活躍する日本人にとっても「魅力ある日本」であるためには、新しい発想による国づくりが必要ではないでしょうか。そうした国づくりこそ、政治が本来果たすべき役割ではないかと強く思いました。
●言うまでもなく、外交と内政は表裏一体の関係にあります。内政に対する自信と実績に裏打ちされてこそ、外交力もその真価を発揮することができるのです。私は、政治への信頼を回復すること、多様性と包摂性を大切にし、誰ひとり取り残さない「魅力ある日本」を次の世代につなぐことに、これからの政治家としての全精力を注いで行きたいと考えています。
●このたびの自民党総裁選は、国民の皆さんと日本の将来について語り合う絶好のチャンスです。私は、『ありのままに真実を語る、対話型民主主義』を旗印に掲げ、これから目標へ向かって果敢に挑戦する覚悟です。