<2016年8月2日オンエア>
(上川)リスナーの皆さま、こんばんは。上川陽子です。
(鈴木)コピーライターの鈴木真弓です。どうぞよろしくお願いいたします。8月に入りました。いよいよオリンピックも始まりますね。
(上川)夏のオリンピックは本当に盛り上がりますね。今年はリオ。事前にいろいろと問題はありましたが、勝ち負けにこだわらず一人一人のパフォーマンスを応援するさわやかな大会で会ってほしいと思います。
(鈴木)さてリオと言えばカーニバルで有名です。古今東西、お祭りというのは地域を盛り上げ、活性化する起爆剤のようなものですね。
(上川)お祭りに1年かけるとか町ぐるみで、というパワーは万国共通ですね。回を重ねるごとに祭り自体が成長するというのか、伝統+新しい要素を取り入れ、変容する面白さがあると思います。
(鈴木)人が集まれば新しい要素がどんどん加わるものですよね。わが静岡でも陽子さんが大好きな夏祭りや盆踊り大会が目白押しです。
(上川)夏祭りをきっかけに地域の皆さん同士が準備や練習を通して顔を合わせ、地域のパワーを結集させていく。お祭りに参加させていただく醍醐味がそこにあります。
大きなお祭りで言えば今週末の5日から7日は清水みなと祭り。今年でなんと69回目を迎えるそうです。延べ2万人の市民の方々が熱く舞う「港かっぽれ総おどり」や、色とりどりの浴衣が美しい「清水ゆかた踊り地踊衆」、清水港での自衛隊装備品展示など、様々な催し物が盛りだくさんです。最終日には、60分間に1万発の花火が息つく間もないほど続く「海上花火大会」が行われます。
(鈴木)清水港は巨大客船で海外観光客を誘致するため、拡張整備を進めるそうですね。海外のお客様に喜んでもらえるようなお祭りやイベントもどんどん企画してほしいと思います。
(上川)新しいものを作るというよりも、日頃のお祭りが海外の皆さんから見ても魅力的なんですね。今までやってきたお祭りに出来るだけ触れていただく、そんな仕掛けがほしいと思います。8月12日から14日までは恒例の静岡夏まつり夜店市。今回で54回を数える歴史あるイベントになりました。
(鈴木)夜店市って54年も続いているんですか!私と同い年ですね(笑)。
(上川)そうですか(笑)。今年も静岡中央商店街全域で超特価のワゴンセールやオープンカフェ、なつかしい金魚すくいなどお楽しみ盛りだくさんのようですよ。
(鈴木)陽子さんはなかなかお忙しくて参加できないのでは?
(上川)いやいや毎回参加してしっかりお買い物もしますよ。
(鈴木)そうなんですか!夏のお祭りは本当にこまめに参加されますよね。
(上川)私には「踊り」という特技があります。盆踊り大会の参加者の皆さんは毎年、新しい踊りを1年間練習して当日を迎えるんですが、その輪に入って一周すればだいたいすぐに踊れちゃいます。
(鈴木)おっ、それはすごい!
(上川)最近で言えば、ちびまる子ちゃんのまるちゃん音頭ですね。子どもたちの後ろを見ながら一緒に踊っちゃったりします。今年は長田地域がご当地ソングを作って「用宗音頭」「長田音頭」「広野音頭」とさまざまに踊りが付けたんです。
(鈴木)すごいマニアックなご当地音頭ですね。
(上川)かつて私も足久保音頭というのを振り付け、地域の皆さんに踊っていただいたことがありますよ。地域といっても本当に小規模のコミュニティですね。この結束力はすごいですよ。
(鈴木)お隣の地区でやっているなら、わが地区も負けちゃいられないって競争心理が働くんでしょうか。
(上川)まさにその通りです。歌詞に地域名が入ったり踊りで地域らしさを表現することで、自分たちの地域の心を一つにできるんですね。愛着を持った町おこしになります。
(鈴木)だんだん行政区域が広域になる一方、その反動でしょうか、地域ごとのミニマムな絆を大切にしようという動きもあるんですね。
(上川)もともと日本は隣近所の地域コミュニティが助け合って来た社会でしたが、だんだんそれが薄れてきて、隣に誰が住んでいるのかわからない状況で事件が起きたり、知らない人から声を掛けられても返事をするな、なんて教育がされる時代になっています。そういう中でコミュニティの中で一つの家族のような気持ちを持って安心安全に暮らせるようにしていくには、行政がいくら安心安全を唱えても限界があるんですね。
何も監視するということではなく、お互いが自然に関心を寄せ合っていくという地域を取り戻していってほしいのです。グローバルな時代、どこでいつテロが起きるとも限らない社会において、国も自治体も治安を守るために努力はしますが、一番の土台は「自分たちの地域は自分たちで守る」という意識付けです。
(鈴木)地域ごとにご当地音頭が生まれるなどお祭りがさかんになって住民同士が顔を合わせる機会も増えれば、地域を守る心が自然に醸成されていく・・・そんなかたちが望ましいのでしょう。
(上川)そうですね。国では現在、地域包括ケアシステムといって医療・介護・福祉の分野を地域単位で担うしくみを推進しています。自治体の単位ではなく小学校区・中学校区の単位です。実際私たちもその単位の中で暮らしているわけですから、各単位に合わせたしくみを考えることが大事ですね。
(鈴木)夏祭りが地域を考えるきっかけの一つになるといいですね。
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(鈴木)さて、静岡市内で注目される地域というと、陽子さんのお膝元でもある七間町。静岡市の上下水道局庁舎が完成し、町の様子がガラッと変わりました。住民の立場としてはいかがですか?
(上川)七間町は私の事務所がお世話になっているところで、この数年間で劇的な変貌を遂げています。七間町という町名は駿府96ケ町にも出てくる伝統ある町名で、昔から「若竹座」があったりして人が集まる場所でした。若竹座はその後映画館になり、その映画館が移転してしまった後、町をどうしていくべきか住民の皆さんは真摯に議論を重ねてきました。
平成24年ぐらいから地元町内会や商店街や市民団体の皆さんと一緒に「七ぶらエリアまちづくり協議会」を立ち上げて、公共施設にまちのにぎわい創出機能をどう取り入れるか議論を重ねて、市の水道局庁舎誘致にこぎつけました。私も住民の一員として会議に参加し、応援できることが応援していこうと活動してまいりました。
昨年庁舎が完成し、今年はテナントとして鈴木学園中央調理製菓専門学校と静岡市クリエーター支援センターがオープンしまして、若者人口がグッと増えました。まだ町全体が変化を遂げている最中で、町の顔として馴染むところまでは至っていませんが、町の変化を見守ってきた身としては、本当にようやくここまで来た、これからも頑張ってもらいたいとしみじみ思います。
(鈴木)町の賑わいを取り戻そうというところに水道局というお堅い公共施設がボーンと建ってしまって、最初はどうなってしまうのか心配でしたが、専門学校やクリエーター拠点を誘致したという点に町の皆さんの方向性が投影されているのかな、と思いました。
(上川)庁舎そのものが多目的な施設としての顔を持っています。鈴木学園からは調理師の卵、クリエーター支援センターからは若いデザイナーやプランナーが育っていく。町そのものにそういう仕掛けがあることで、周囲に変化をもたらすのです。変化による刺激や変貌を町づくりの要素として支援していく。ハードな施設を作ったらそれを拠点にエリアをつなぎ、新しい力をマッチングさせるソフト事業の仕掛け人たちが、面白がっていろいろなことに挑戦していくことが大事なんですね。
(鈴木)鈴木学園中央調理製菓専門学校静岡校で、生徒さんたちが運営するレストランもオープンしたそうですね。
(上川)5月10日にオープンしたレストラン「リリウム」。これが大評判でしてね。メニュー企画から調理、接客サービスを学生が担い、実践を学んでいます。学校生によるレストラン実習は、文部科学省が認定した同校の「職業実践専門課程」の一環で、各地でさかんに実践されているようです。調理技術のみならず食文化そのものを支えていただく人材教育なんですね。
(鈴木)調理の世界では厨房の中に入ったきりだと、お客様の顔が見えず、自己判断だけで動いてしまうものですが、学生のうちから接客経験を積んでおけば必ず役に立つでしょう。
(上川)そうですね。今、職業体験というのが文科省の中でも大事な政策課題になっています。大学に行くだけがすべてではなく、小さなうちからお父さんの職場を観に行くとか、いろいろな形で子どもたちに、自分たちが社会へ巣立った時のイメージ、職業を選ぶときのイメージを育んでもらい、「ああいう大人になりたい」という目的意識を持って勉強に臨む・・・そんなプロセスを成長に応じて体験してもらう職業体験学習が、一つの大きなテーマになっているんですね。
実は、私の中学高校の後輩4人が、職業体験学習の一環で、このFM-Hiに来られたんです。そのときのインタビューをご紹介しましょう。
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(上川)こんにちは。みなさんは雙葉中学の3年生ですね。皆さんはどうしてFM-Hiに来られたんですか?
(生徒A)私はラジオの作り方に興味があり、話すことが得意ではないのでそれを克服しようと思って来ました。
(生徒B)私は小学校の頃、2年間放送委員をやりました。放送することの楽しさを思い出し、ここに来させてもらいました。
(生徒C)私は今、部活で放送部に所属していて、今回、「原稿読み体験」等が出来ると聞いて自分の放送技術を磨くために来ました。
(生徒D)私は将来の夢がアナウンサーです。その夢のはじめの一歩となるよう、選ばせていただきました。
(上川)皆さん大変しっかりとした目的意識を持って参加しているんですね。ラジオ局という職場に最初はどんなイメージを持っていて、実際に来てみてどう感じましたか?
―アナウンサーの方に、人に良く伝わる話し方を教えていただいて、少しでも日常に役に立てばと思いました。
(上川)丁寧に教えてくれましたか?
―はい。
(上川)何か発見はありましたか?
―私は4日間、お昼の番組に生出演させていただいたんですが、ポンポン言葉が出てくるパーソナリティさんがすごいなと思いました。いろいろなところに視野を広げる大切さも学びました。
(上川)4日間でそういう気付きが出来たのは素晴らしいですね。
―私も4日間いろいろな番組に出させていただきましたが、話を振られてもすぐに返せませんでした。自分の頭の中にたくさんの引き出しをもつことが大事だなと思いました。
―アナウンサーやパーソナリティの方は原稿を読む人、というイメージでしたが、実際はゲストの方のお話に相づちを打ったりするのがとてもお上手で、私は人の話にうまく反応できなかったので、そういう点を磨いていきたいと思いました。
(上川)それぞれ多くの気付きがあったということですね。体験学習っていいですね。これから学校に戻った時、4日間の体験が皆さんが将来仕事を選ぶときや、他者と接するとき、自分の思いを伝える時、大きな役に立つと思います。ありがとうございました。
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(鈴木)感性がみずみずしい10代のときにこういう体験をするということが、どんなに大きな力になるか、皆さん方の声を聴いてワクワクしてきましたね。
(上川)やはりチャレンジをする気持ちがいろいろなものを切り拓く力になります。職場は社会の大きな舞台ですから、その舞台に自分が立つ、この体験が重要ですね。小学生がお父さんの職場を観に行くだけでもいいんです。ぜひお父さんお母さん、ご自分の職場をお子さんを見せてあげてくださいね。
さあ、そろそろお時間となりました。最後までおつきあいくださったリスナーのみなさま、本当にありがとうございました。それでは次回まで、ごきげんよう。