本日の閣議では、法務省の案件としまして、平成26年版犯罪白書に係る報告をさせていただきました。
本年の犯罪白書は、最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を統計資料に基づいて概観するとともに、再犯防止対策の充実を図るという観点から、「窃盗事犯者と再犯」と題して特集を組んでおります。
最近の犯罪情勢を見ますと、刑法犯の認知件数は11年連続で減少しており、平成25年は32年ぶりに200万件を下回ったところですが、検挙人員に占めます再犯者の割合は上昇し続けているということで、平成25年は46.7パーセントに達しました。
特集におきましては、統計資料のほか、窃盗により有罪判決が確定した者を対象とした特別調査の結果に基づきまして、窃盗事犯者の実態、処遇の実情、再犯の状況等を分析し、窃盗事犯者による再犯を防止するための対策について検討いたしました。
近時の犯罪情勢や犯罪者処遇の実情等について、理解を深める資料として広く国民の皆様に本白書を利用していただけることを期待しているところでございます。
本日から、商業登記規則の改正案につきましてパブリックコメントを開始いたしますので、その内容につきまして2点御報告いたします。
1点目でありますが、現在、商業登記簿の役員欄には、役員の戸籍名のみが記録されることとなっております。そのため、旧姓を使用して社会活動をされている方が会社の役員に就任した場合、実際に使用している氏名では役員の登記ができず、社会活動上の不便が生じているという声がございます。そこで、戸籍名に加えて婚姻前の旧姓も記録することを可能とする改正を行うことといたしました。
この改正は、旧姓使用についての社会的不便を是正するものでございまして、法務省の施策として行うものでございますが、安倍政権が目指す女性が活躍しやすい社会づくりを進めるという方針に沿うものと考えております。
2点目でありますが、現在の商業登記の取扱いにおきましては、取締役等の役員の就任の登記をする場面で、本人確認資料の提出を求めておらず、また、代表取締役の辞任の登記をする場面で、その辞任届に実印の押印を求めておりません。こうした現状の登記申請手続を悪用して、役員について真実と異なる登記をした事例がしばしば生じているとの御指摘を受けまして、登記申請時の提出書類等を見直し、本人確認資料の提出や辞任届に実印の押印等を求める改正を行うこととしました。この改正が実施されることにより、商業登記の真実性の向上を図ることができるものと考えておりまして、本日から、この改正案につきましてのパブリックコメントを開始いたします。
<平成26年版犯罪白書に関する質疑について>
【記者】
本日、犯罪白書を報告されたということですが、大臣の冒頭の発言にもありましたけれども、再犯者率が高まっているというようないろいろな課題もあるかと思います。今後の法務省としての対策と、この犯罪白書全体に対しての受け止めについて、改めてお伺いできればと思います。
【大臣】
御指摘の点でございますけれども、刑法犯の認知件数が11年連続して減少し、平成25年につきましては32年ぶりに200万件を下回りました。一方で、再犯者率につきましては、平成9年から一貫して上昇し続けておりまして、平成25年は46.7パーセントということでございます。また、「窃盗事犯者と再犯」という特集も組みまして、様々な切り口から再犯状況等の調査もしたところでございます。
こうした犯罪情勢の中で、再犯防止を最重要課題というふうに位置付けているところでございまして、これまでも、またこれからも刑務所出所者等の効果的な再犯防止対策ということについては着実に実施してまいりたいと思っているところでございます。
今回、特集を組みました窃盗事犯者の特性、あるいはその問題点がこの分析によりまして明らかにされたところでございます。生活困窮に陥っている者、そして社会的にも孤立している者、あるいは心身に問題を抱えている者、若年者、女子についてはとりわけ高齢化が非常に進んでいるというような形で類型化をいたしまして、それぞれの課題に対して着目をして、そして類型ごとの対策、そうした者の処遇ということについて、大変重要ではないかということを考えているところでございます。
したがいまして、例えば生活困窮に陥っている者については、出所後の就労確保に向けた支援等が大変重要であり、社会的に孤立している者に対しましては、地域社会で受け入れる体制についての構築ということが大変重要であるというふうに考えているところです。また、女子の高齢者に対しましては、その抱えている問題あるいは背景ということを分析しましたところ、家庭内のトラブルなどが背景にあるということでございまして、そういう意味で、家族間を調整するサポート体制の構築等が大変重要であると考えられるところでございます。
法務省といたしまして、今回明らかになりました課題等を踏まえまして、関係省庁や、あるいは地域の中で御活躍いただいている保護司の皆さん、さらには就職についての御協力をいただいている協力雇用主等の民間の皆さんとも連携をいたしまして、こうした再犯防止のための対策を今後とも推進してまいりたいと考えております。
<法案審議に関する質疑について>
【記者】
衆院の解散と法案の関連でお伺いします。今日の参院本会議で、いわゆるテロ資金提供処罰法の改正案に関しては可決、成立する見通しですが、来週の半ば頃に解散があった場合、その他の法案に関しては成立が難しくなってくると思われます。その点について、どういうふうにお考えになっていらっしゃるかということと、特に裁判官と検察官の報酬等に関する法案に関しては、公務員の一般職に関する改正給与法に関しては、こちらは既に成立しているということがあるので、もし成立しなかった場合に少し差が出てきてしまう状況になると思うのですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
【大臣】
今回の臨時国会、残された期間が短い中で、法案の審議につきましては、議会に附して、全力で取り組んでいきたいということでお願いをしてきたところでございます。私も途中で就任をさせていただいたところでありまして、今抱えている法案につきましては、衆参の議員の皆様方に御理解をいただきながら丁寧に進めていきたいと思って取り組んでまいりましたので、全ての法案が、予定されたとおりこの臨時国会の中で成立することができるように、最後のぎりぎりまで全力で取り組んでいきたいと思っております。
本日、参議院でテロ関係の法案が審議に附されるということで、ここで可決をしていただきたいと思うところでありますし、また、先ほど御指摘いただきました裁判官と検察官の報酬・俸給等に関する法案につきましても、これも一般の国家公務員の給与と並んで推進をしていくべきことであると思っておりますので、御理解をしっかりといただきながら、これにつきましても通していくべく努力を重ねていきたいと思っております。
先ほど、解散ということに触れられましたけれども、解散はひとえに内閣総理大臣の専権事項ということでございまして、政治というのは、いつどのようなことが起こるか分からないという状況ではございますが、どんな状況になったとしても法務関係の法律につきましては、ぎりぎりまでしっかりと、そして臨時国会の中で仕上げていくという当初の方針を全うできるように努力したいと思っております。