<2014年8月5日オンエア>
(上川)リスナーのみなさん、こんばんは。上川陽子です。
(鈴木)コピーライターの鈴木真弓です。どうぞよろしくお願いいたします。サッカーのワールドカップブラジル大会が終わりましたね。決勝戦のドイツ×アルゼンチン戦は日本時間で朝4時からという時間にもかかわらず、NHKのテレビ中継は27%近い視聴率だったそうです。お忙しい陽子さんはご覧になれなかったでしょうね?
(上川)ぐっすり眠っておりました(苦笑)。朝、娘が見ていたらしく、結果は教えてもらいました。その後ニュースで繰り返し観ましたが、大変白熱した試合だったようですね。
(鈴木)いい試合でした。決勝点が入ったときのドイツのメルケル首相のパフォーマンスがすごかったです(笑)。それにしてもワールドカップというのは各国の国家元首が熱中し、治安を左右するほど国民が熱狂するすごいイベントだと改めて実感しました。大画面のパブリックビューイングもすっかり定着しましたね。
(上川)私も総務副大臣になって観る視点がずいぶん変わりました。大画面の中継といえば、今回のワールドカップ中継でも4Kの技術がかなり活かされました。2016年の本放送開始に向け、現在のフルハイビジョンの4倍の解像度を誇る高画質を少しで多くの方に実感していただけるよう、各地で試験放送を実施しています。
(鈴木)ワールドカップのようなビッグコンテンツがあると、4Kの威力も周知しやすいですね。
(上川)全国各地で試験放送を展開中で、先月から静岡県内各地でも4Kの試験放送が始まったんですよ。静岡市内では7月11日から13日まででしたが、7月18日からは沼津と藤枝のメディアプラザで半年間、午後1時から7時まで、誰でもご覧になれます。私は7月11日に静岡駅前の葵タワー1階で開かれたオープニングレセプションに参加し、試験放送のテープカットをさせていただきました。
(鈴木)葵タワーというのはTOKAIが入居しているビルで、今回の試験放送もTOKAIケーブルネットワークが実施したようですね。4K、そしてさらに8Kと高画質の技術は日本の得意分野だと思いますが、これからはその技術をいかにサービス提供していくか、ですね。
(上川)もともとデジタル化の進展の上に乗った技術です。アナログからデジタルまでの移行だけでも多くの皆さんのご協力があったおかげですね。テレビ、放送にとどまらず、デジタルシネマやデジタルサイネージ(電子看板)等への広がりも期待できる上、関連機器やコンテンツ制作等のノウハウの輸出にも繋がる可能性を秘めている成長分野です。日本の場合、そういうノウハウを輸出していこうということはあまり考えていなかったのですが、当然、世界との競争も激しく、韓国や欧米諸外国の事業者においても積極的な取組が進んでいます。技術力のある日本が具体的なサービスをできるだけ早期に実用化し普及させることにより、放送関連産業の技術力、国際競争力の確保を図り、技術や製品、ひいては日本文化等の輸出につなげていかなければなりません。
(鈴木)5月下旬に総務省で「ICT成長戦略会議 放送サービスの高度化に関する検討会」の報告書がまとまりましたよね。
(上川)ええ。ICTは新しい技術ですが、国内外と同時的に活かしていこうということで、国際競争力の確保という意味でも期待されています。5月の連休にエクアドルに海外出張し、日本の地デジの技術が採用されたことはお話しましたが、今後、製品やコンテンツを含め、日本を理解していただく材料が出来たと思っています。
(鈴木)4Kテレビはまだ家電量販店はこれからという段階ですが、以前の地デジ移行時のことを考えると、今に店頭に4Kテレビがズラッと並ぶのかなと期待します。
(上川)現在、4Kは2016年のリオデジャネイロ・オリンピック時に本放送を、8Kについても試験放送を、というロードマップが示されました。これに付随して4Kテレビ、8Kテレビの商品化が進み、量産になれば価格も下がっていくと思います。
(鈴木)2020年の東京オリンピックパラリンピックの時代には、テレビを取り巻く環境もガラッと変わるでしょうね。
(上川)4Kはすでに映画やゲームの一部コンテンツで実現し、業務用映像機器の対応も進んでいます。民生用についてはNPD Display Searchという調査会社が予測数値を出していて、2013年の4Kテレビの世界の売上高は約17億ドル程度ですが、2016年には約88億ドルまで成長し、年平均成長率74%の急速な拡大が期待されるようです。台数ベースでも2013年の50万台から2016年の725万台まで年平均成長率143%と、急速な拡大が見込まれています。市場が拡大するということはメーカーの競争も活発になるわけです。
(鈴木)早く我々庶民が入手しやすい価格帯になるよう量産化を進めてほしいですね。
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(鈴木)ところで先月、またまた、大変ユニークな企業を視察されたそうですね。
(上川)7月2日に神奈川県のさがみロボット産業特区、TOTO ユニバーサルデザイン研究所、湘南ロボケアセンターを訪問しました。さがみロボット産業特区では、総務省の競争的資金である戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)における、”KINECT”を活用した介護支援システムの実証などを視察したんです。
(鈴木)聞きなれないキーワードですが。
(上川)戦略的情報通信研究開発推進事業。Strategic Information and Communications R&D Promotion Programの頭文字を取って、通称SCOPEといいます。横文字が多くてわかりにくいと思いますが、ICTの最先端の研究をしている施設、とご理解いただければと思います。ICTにおけるシーズの創出、研究者や研究機関における研究開発力の向上、世界をリードする知的財産の創出、国際標準を獲得することなどを目的として、新規性に富む課題の研究開発を委託する事業です。
(鈴木)ちょっと前にニュースで話題になっていた「異能の人向けプログラム」がそうですか。
(上川)“変な人プロジェクト”と言われているものですね(笑)。異能ベーションプログラムは総務省が今年度からSCOPEの中で新規に設けた特別枠です。情報通信審議会より「イノベーション創出実現に向けた情報通信技術政策の在り方」の最終答申を6月27日にいただき、ICT分野において破壊的な地球規模の価値創造を生み出すために、大いなる可能性がある奇想天外でアンビシャスなICT研究開発課題に挑戦する人を支援しようということになりました。現在、申請を受け付けているところです。
(鈴木)破壊的な地球規模の価値創造ってすごいフレーズですね!
(上川)まさに、今の社会の閉塞感を打破し、異色多様性を拓くことを目的としています。現在募集中ですので、どんなプログラムが採択されたか、いずれご報告したいと思っています。
(鈴木)先月視察されたロボット産業特区とはどんなところですか?
(上川)さがみロボット産業特区は今年、地域活性化総合特区に指定されました。さがみ縦貫道路沿線地域10市2町で、生活支援ロボットの実用化や普及を促進し、ロボットの実証環境の充実に向けて関連企業の集積を進めています。
(鈴木)もともとロボット産業がさかんなところなんですか?
(上川)相模原市周辺は全国でもトップレベルのロボット関連産業が集積しているんです。特区に指定されたことで、ロボットを開発する時のハードルとなる様々な法令の規制を緩和され、介護・医療ロボット、高齢者等への生活支援ロボット、災害対応ロボットなどの実証実験がスムーズに行なえるようになります。
(鈴木)それは注目ですね。ロボットと聞くと産業用のメカメカしいロボットをイメージしますが、人の暮らしの安心安全を支える身近なパートナーとしてのロボットなんですね。
(上川)黒岩知事のお話ですと、鉄腕アトムがロボット特区のイメージキャラクターになっているのです。未来の一部分を垣間見るようで大変面白かったです。
(鈴木)TOTOユニバーサルデザイン研究所ではどんな視察をされたんですか?
(上川)介護用ロボットの開発ですね。排泄介助における支援を目的にしています。トイレでは人間にとって重要な生理的現象がキャッチできます。たとえばおならの成分を分析することによって病気の有無を発見する、そんな測定機器のついたシステムを実証実験中です。
(鈴木)湘南ロボケアセンターはいかがでしたか?
(上川)実際に体に装着することによって、身体機能を改善・拡張・補助することができるロボットです。もともとは筑波大学で研究されていた世界初のサイボーグ型ロボットロボットスーツHAL®(Hybrid Assistive Limb®)なんです。脳の研究と工学的な研究、電気通信メカニズム等が複合的に組み合わさった非常に面白い研究ですね。脳の指令を何らかの障害で身体がキャッチできない場合、そのつながりの部分をロボットがフォローする。ドイツでは実は治療用に使われ、保険適用も進んでいるようですが、日本ではまだ治験を集めている段階ですね。うまく治療用として活用できれば、病気や障害を持った方に大きな希望を与えられるのでは、と希望を持って帰ってまいりました。
(鈴木)今日はちょっと未来の暮らしについて、陽子さんが一足先にのぞいてこられたお話でした。なんだか景気がよくなりそうな気分です!
(上川)新しい研究にチャレンジしている専門家や自治体の力が結集した実例を見ることができて嬉しかったですね。我々は最終商品を見ることはあっても、プロセスを知る機会は多くありません。そこにいかに多くの智慧が投入されているかを知ることも重要だと思いました。さらにいえば、介護ロボットの場合、主役はあくまでも介護を受ける方ですから、その声をきちんと投影した研究であってほしい。その意味で特区というのは重要なステージではないかと思っています。
さあ、そろそろお時間となりました。最後までおつきあいくださったリスナーのみなさま、ありがとうございました。それでは次回まで、ごきげんよう。