<2014年8月19日オンエア>
(上川)リスナーのみなさん、こんばんは。上川陽子です。
(鈴木)コピーライターの鈴木真弓です。どうぞよろしくお願いいたします。前回は4Kテレビのお話、神奈川県のロボット産業特区を視察されたお話でしたね。今日も私たちの暮らしを変える新しい技術を視察されたお話をうかがいましょう。
(上川)国会が終わった後、いろいろな現場に出たいと思いまして、7月14日、私が事務局長を務める「優れた医療機器を国民に迅速かつ安全に届けるための議員連盟」で、オリンパス(株)と、東京女子医科大学・早稲田大学共同大学院(TWIns)を訪問しました。デバイスラグといわれるように、日本では研究開発された医療機器が実用化されるまで、長い時間がかかります。この課題に向けて法律改正に取り組んでいる議連で、現場の実態をできるだけ多く視察しようと企画されたのが今回の視察です。オリンパス(株)では、消化器内視鏡をはじめとする最新の医療機器を、TWInsでは、冠動脈ステント耐久性評価試験法の開発等の取り組みを視察したんです。
(鈴木)オリンパスというと私たちもカメラでおなじみのメーカーですね。医療用カメラの分野でもトップクラスとか。
(上川)医療カメラの分野では8割近くのシェアを誇る企業ですね。世界で初めて、胃カメラを実用化したのがオリンパスです。1949年、「日本人に多い胃がんを何とか治したい」という東京大学附属病院・小石川分院外科の宇治達郎医師からの依頼で、オリンパスの技術陣が胃カメラの開発をスタートしました。胃の中を明るく照らす超小型電球、広い範囲を映し出す広角レンズ、フィルム巻き取り装置、体内に挿入する蛇管部分の素材選びなど、様々な要素技術の開発を重ね、1950年に試作機の開発に成功しました。その後も、医師との二人三脚で機器の改良は急ピッチで進み、消化器疾患の診断術も飛躍的に発達したようです。
(鈴木)最初からドクターとのパートナーシップがしっかり確立されていたんですね。
(上川)議連の中にもオリンパスと技術開発に携わり、今は国会議員になったという先生がいらっしゃいます。技術開発には法律的なハードルが高いということで議員になられたのです。
(鈴木)実際にどんな施設を見学されたんですか?
(上川)手術のシミュレーションが体験できるコーナーがあり、私も実際に、内視鏡手術でやるようにカメラを見ながら針と糸で縫ってみたんです。これが想像以上に難しいんですね。手先の細かや手術や最新機器に慣れていただくための研修もオリンパスで担当されているようでした。ドクターを育てなければ機器も導入してもらえませんし、ドクターの技を機器に移転させていく、ということも重要です。
奥行きが見える、立体的に患部が見えるような3D技術も進んでいます。放送用の4Kや8Kの技術の応用も期待されます。色が極めてクリアですし、解像度がはるかに高く、高度な治療が期待できると思います。非常に重要な分野であると実感しました。
(鈴木)テレビの4K技術のお話でも、陽子さん、高い解像度の技術が医療に応用されることに期待されておられましたね。
(上川)ハイビジョン技術が内視鏡観察に導入されて以来、飛躍的に鮮明な画像が得られるようになりましたが、最近では、従来の光では観察しにくかった小さな病変をより観察しやすくするため、「光デジタルによる画像強調」を用いた観察技術の開発に取り組んでいるそうです。カメラだけでなく情報処理のできる付随機器も不可欠で、手術室には完全にICTが組み込まれています。すべてがトータルに整っていなければひとつの治療は完遂できません。現場のドクターも非常に意欲的で頑張っておられるようです。
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(鈴木)後半は東京女子医科大と早稲田大学の共同大学院TWINSについてうかがいましょう。これは、2つの大学院が合併したということですか?
(上川)東京女子医科大と早稲田大学による医工融合研究教育拠点として、2008年4月にオープンしたものです。東京女子医大のT、早稲田のW、そしてInstitutionを組み合わせて、通称「TWIns(ツインズ)」と命名したそうです。
早稲田大学側は、TWIns内に早稲田大学先端生命医科学センターとして生命科学系の研究室を集結させました。東京女子医大側は、これまで場所が分散していた先端生命医科学研究所をTWIns内に集結すると共に、企業や研究機関との共同研究を推進するために3Fエリアに企業などに研究室・実験室としてご利用いただくメディカルイノベーションラボラトリー(MIL)を設置しました。先端生命医科学研究所とメディカルイノベーションラボラトリーからなる東京女子医科大学先端生命医科学センターをTWIns内に開設しました。非常に明確なコンセプトを持って研究者、実験実用関係者と早い段階で連携が進んでいるようです。
(鈴木)もともと2つの大学は連携が深かったんでしょうか。
(上川)私もよく知らなかったのですが、東京女子医科大学と早稲田大学は、1965年以来人工心臓の研究開発をはじめとする人工臓器、バイオマテリアル、医用工学などの学際的領域における共同研究を深めてきたんだそうです。2000年には正式に学術交流協定を締結、2001年以降は東京女子医科大学大学院先端生命医科学系専攻と早稲田大学大学院理工学研究科生命理工学専攻との大学間協定に基づく「連携大学院」が誕生し、医学と理工学の共同による先端研究の推進、大学院生の共同研究指導や交流が本格化しています。
こうした実績を基盤として、両大学では、将来のバイオ医学関連、生命医療系分野における更なる可能性に向けて、2008年には同じキャンパス敷地内に大学院を乗り入れ、先端医療領域で新産業創出と新しい学問領域の確立を目的とする大学院新カリキュラムを始動させたというわけです。
(鈴木)それだけ長いつながりがあっての連携なんですね。
(上川)今、連携と融合という2つの言葉を使い分けたのですが、連携から融合へと一歩進んだわけです。連携のレベルで停まっているのではなく、ひとつの新たな領域で博士が生まれるということ。医師でありながら工学博士、というように、いくつも博士号を持つ人材を輩出しています。
(鈴木)もともとこの2校の出身者が多いのですか?
(上川)そうですね。それぞれの大学の基礎から応用までのさまざまな研究が、他の分野の研究と出会い、さらに発展していくという施設で、世界でも珍しく、留学生も多いようです。世界の名だたる医療機器の開発メーカーの社長さんも来られています。経営者自らのこのような行動力がイノベーションを動かしているのだなと実感しました。日本の企業でも、トップが現場を見て感じることが非常に大事だと思いました。
(鈴木)現場のドクターからもいろいろな要望があったでしょう?
(上川)議連では現在、政策的な提言メニューを考えており、8月末には大事な概算要求の時期ですので、できるだけ具体的な要望をいただくようにしています。とにかく一つの研究に多額の費用がかかりますし、一刻も早く治療を望む患者さんに予算が足りないから出来ないとは、なかなかいえません。その意味でも、必要な予算を付けていくということを政治の仕事としてしっかり取り組んでいかねば、と決意を新たにしました。
(鈴木)今月は2回にわたって暮らしを変える最先端技術のお話をうかがいました。ここで地元静岡での活動についてもふれておきたいのですが。
(上川)実は私、駿河本山お茶壺道中の実行委員会の長に就任したのです。大変歴史のあるイベントですので、中長期計画を踏まえ、しっかりとした提言をしていきたいと思います。久能山東照宮での口切の儀にはぜひ各国の大使をお招きしたいなと考えているんですよ。
(鈴木)さすが陽子さん、仕掛けることがグローバルですね。
(上川)誰かが企画したことに参加するだけじゃ面白くないでしょう?多くの市民の皆さんが参加し、いろいろなアイディアを寄せて頂きたいと思っています。
さあ、そろそろお時間となりました。最後までおつきあいくださったリスナーのみなさま、ありがとうございました。それでは次回まで、ごきげんよう。