第32回「国会に復帰して」

 

かみかわ陽子 ラジオシェイク 第32回 「国会に復帰して」


 

           


 

(上川)リスナーのみなさん、こんばんは。上川陽子です。


 

(鈴木)コピーライターの鈴木真弓です。よろしくお願いいたします。さあ、陽子さん、3年4ヶ月ぶりに衆議院議員に返り咲き、ひと月ちょっと経ち、国会もいよいよ始まりました。この1ヶ月間、あわただしかったんじゃありませんか?


 

(上川)あっという間の1ヶ月でした。1月28日から通常国会が始まりました。通常国会は、150日の会期と決まっていますので、6月6日までとなります。今年は、7月に参議院選挙が控えているので延長はできません。限られた日程で、まずは、大型の補正予算と来年度予算の審議から始まりました。安倍内閣の最重要課題である景気・雇用対策をはじめ、内外に難問山積ですから、しっかり結果を出そうと、緊張感をもって臨む毎日です。


 

(鈴木)今はどんな役職に着かれているんですか?


 

(上川)自民党の国会対策委員会の副委員長を拝命し、国会期間中は毎日詰めています。一年生議員は全員が国会対策委員となり、国会の動きをまず知ることから活動が始まるんですが、私自身一期生のとき、国対委員の修羅場をくぐり、その後もっぱら「政策」畑で活動してきました。今回、3年4か月振りの復帰です。新たな一歩として、国会対策の世界に挑戦することから始めることにしました。


 

鈴木)よくメディアで「国対」と略される組織ですね。委員長は元環境大臣の鴨下一郎さんとうかがいました。


 

(上川)鴨下先生とは、長いお付き合いなんです。私が2000年の初当選をしたとき、静岡の安倍藁科の素晴らしい清流のことを思い、「おいしい水議員連盟」を立ち上げたのですが、その時、水問題の世界的大家でもある橋本龍太郎先生に会長を、そして鴨下一郎先生に幹事長をお願いしたんです。鴨下先生はお医者さんですので、その後、厚生労働関係では、ご一緒に仕事をしてきました。そして、第一次安倍内閣のとき、ご一緒に初入閣しました。


 

(鈴木)私も、「おいしい水推進議員連盟」主催の視察があったとき、江戸川の浄水場など、一緒に視察し、報告をまとめさせていただきました。私にとっても、懐かしい方です。ところで、「国対」の仕事ってなんですか。


 

(上川)国対と聴くと「国民体育大会」だと思われる方も多いんですが(苦笑)、国会対策委員会とは、国会審議を進めていくために必要な、政府、連立与党、野党との調整役です。どの法律が重要で、優先的に通さなければならないか、限られた日程の中では重要な調整ですね。今回自民党は115名の議員が初当選組です。ちなみに野党に転落した前回のときはわずか4名でした。まあ、今回は大変な大所帯となりました。一年生議員にとっては国会運営のイロハを学べる絶好の機会でもあります。私は20名の幹部のうちの上から6番目のポジション。厚生労働セクションを担当することになりました。


 

(鈴木)大所帯の委員会で、しかも野党との調整の仕事って大変そうですね。


 

(上川)私にとってもチャレンジングな仕事なんですよ。これまでは個々の政策、たとえばこのラジオシェイクでも再三触れた犯罪被害者、大臣として取り組んだ少子化対策、男女共同参画、海洋大陸棚問題といった各分野の政策にどっぷりつかって、政策づくりに専念する、いわばスペシャリスト的な仕事が多かったのですが、国会対策委員会というのは国会を円滑に運営させるための最大の根回し部隊といいますか、各政策について与野党のぶつかり合いを調整するゼネラリストであり、真の裏方役です。政策のスペシャリストは民間の学者や経営者でも務まるかもしれませんが、国会自体を動かすという仕事は、国会議員自らが果たさなければならない重要な仕事です。


 

(鈴木)そういう仕事をこなしてこその議員ですよね。陽子さんのキャリアにとっても、必要不可欠な登竜門かもしれません。


 

(上川)国対の仕事は毎週月曜日から金曜日まで毎日ビッシリ詰まっていまして、息つく暇もありませんが、ここにいると、与野党の動きが本当によく分かるんですよ。時間は拘束されっぱなしで大変しんどいんですが、非常に重要な場に身を置かせてもらっています。今は、昔のように与野党ガチンコ勝負、という時代ではありません。多くの少数野党が乱立していて、必ずしも一枚岩ではないでしょう。各党との調整もそれだけ手間がかかるのですが、本来、2012年末までに決まっているはずだった補正予算や13年度予算案が決着していませんので、スピーディーに国会を通さなければなりません。


 

(鈴木)でもそれだけにやりがいがありそうですね。


 

(上川)根回しという言葉ですが、ネガティブに聞こえますけど、大きな木を別のところに移殖することを想像してください。木の根っこの部分だけでなく、その周辺も大きく掘り起こして、移植をしますよね。それと同じように、本当に表舞台の国会を真に動かすためには、我々の根回しの力にかかっていると実感しています。国会議員にとって、今、一番やりがいがある仕事じゃないかと思っています。


 

(鈴木)いやあ、国会議員に復帰され、すぐに、そういう重責を担う立場で活躍されるとは、陽子さんを送り出した静岡一区の有権者としてはホッとしますね。党のお仕事ではどんなことをされているんですか?


 

(上川)ご存知の通り、今回、自民党では総務会長に野田聖子さん、政調会長に高市早苗さんという女性議員が就任して話題になりましたね。それぞれの会長のもとには何人かの有力議員が副会長としてサポートに入ります。私は安倍首相から直々に指名をいただき、野田聖子さんをお支えする総務会副会長を務めることになりました。ここでも表に出る会長の仕事を円滑に進めるための裏方として、汗を流しています。


 

(鈴木)裏方というのは、本当に実力のある政治家でなければ務まらないと思います。その意味でも、陽子さんが、いかに党執行部から信頼されているかがうかがえますね。ところで初歩的な質問で申し訳ありません。党の屋台骨といわれる党三役は、総裁のもとで、幹事長、総務会長、政調会長ですよね。


 

(上川)自民党の総裁は今、安倍総理です。内閣総理大臣ですから、自民党は実質、幹事長である石破さんがお務めです。そして、自民党としての組織運営は総務委員会すなわち総務会が担い、政策に関しては政務調査会、略して政調が担う体制になっています。また、この番組でも逐次報告をしていきますね。


 

(鈴木)そういう重要な組織のトップに女性が就任し、陽子さんも汗を流しているって、なんだか嬉しいですね。参議院選挙向けのパフォーマンスだ、なんて揶揄するマスコミもあるようですが、女には、与えられたチャンスをしっかりモノにするしたたかさがいると思います。


 

(上川)今回の人事でも女性登用がマスコミで注目されました。女性を組織の顔に置くということは、一面、お飾り扱いだ、と言われることもあります。女性政治家が活動する場は、少子化対策や男女共同参画といった女性にかかわる政策が優先されるムキもあるでしょう。組織の世界はそういった保守的な部分が、まだまだあります。


 

今回、国政に復帰した身としては、女性であっても男性であっても、力があってやる気のある人間はどんなポジションでも務まる、ということを国政の場で証明したいという思いがあります。その意味で、国会対策委員会や党の役員会のサブポジションというのは、願ってもないチャンスです。大臣や会長・委員長の先生方に比べたら、マスコミに直接登場する機会は少ないと思いますが、裏側で上川ががんばっている、と想像していただければありがたいな、と思います。


 

 


 

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(鈴木)さて、昨年暮れの選挙前、新しい党の中には政治塾を作って政治家志望の人を集め、教育し、国会に送り出すという動きが注目されました。実は自民党の中にも政治塾があるとうかがいましたが・・・。


 

(上川)そうなんです。自民党には中央政治大学院という政治塾があります。歴史は古くて、昭和30年11月の自由民主党立党時に「党員の資質向上」「人材の発掘、育成」を目的に設置が構想され、2年弱の準備期間を経て同32年7月に開校されたんですよ。開校以来、党本部をはじめ全国各地で講演会を開催するなどの教育・研修活動を行い、各地域を担う多くの人材を輩出しました。


 

(鈴木)知りませんでした。あまりマスコミにも取り上げられませんよね。


 

(上川)平成5年には、党機構の改編に伴って、いったん他の党機関と統合され、研修活動を続けてきましたが、党員教育の一層の充実を求める声が高まり、平成13年、あらためて中央政治大学院が設置されたのです。有馬朗人参議院議員(元東大総長)が学院長に就任され、以後、歴代の学院長の教育方針に基づき、各種セミナー、講座、シンポジウム等を開催しているんです。


 

(鈴木)考えてみれば、国会議員の中には大学の学長や教授レベルの学識経験者や、企業のトップ、団体組織の運営経験者など豊富な人材がいるわけです。みなさんのキャリアを活かさない手はありませんよね。


 

(上川)そうですね、有馬先生ともお話したことがありまして、東大総長としてのお顔と、国会議員としてのお顔を比べると、なかなか味わい深いものがありましたね。自民党には全国に多くの下部組織があります。全国の党員向けにも学びの機会を充実させようと、平成22年1月からは、都道府県連が独自に主宰する政経塾、リーダー育成塾等を「地方政治学校」として党則に位置付け、中央政治大学院と各地方政治学校間との連携をはかり、その支援を強化することになりました。ここから、統一地方選挙はじめ各地方選挙に立候補し、当選を果たした首長や議員もいます。静岡県自民党支部連合会にも静岡青年政治塾という組織が動いています。


 

(鈴木)参加できるのは自民党員だけですか?


 

(上川)党員対象以外にも、平成22年11月から、異業種勉強会・大学ゼミを対象に開催する「まなびとプロジェクト」、翌23年6月には登録会員・完全予約制の勉強会「まなびとスコラ」がスタートし、これまで自民党に縁のなかった所謂「無党派層」の方を主な対象に、その参加者と勉強会を共同企画し、継続的に運営、開催しています。「まなびと」に参加されるほとんどの方は、東京の党本部を訪れるのも、自民党の国会議員と身近に接し、語り合うのも初めての方です。ですから社会で活躍されている方、若い学生の方との交流は、「まなびと」に参加する国会議員にとっても大きな刺激となっていますね。毎年のセミナーはとても評判がいいんですよ。


 

(鈴木)陽子さんは、その中央政治大学校の副学長に就任されたそうですね!


 

 (上川) そうなんです。総長は安倍総裁、総長の指名で学長は河野太郎さんになり、学長の指名で副学長は衆議院議員から9名、参議院議員から8名が選ばれました。私はその中の一人です。


 

(鈴木)若い党員、党員以外の方、それぞれどんなことを伝えていきたいですか?


 

(上川)私も就任したばかりなので、これまでの活動をよく理解しながら努力していきたいと思いますが、やはり、民主主義国家の基本は議会です。国会も地方議会も、選挙で選ばれた議員が代表して政治を行います。その一番の基本のところで政治がうまく回るためには、選ぶ側が選挙のときだけでなく、日常的に関心をもち、監視をし、批判をすることが当たり前なんだ、という風土をつくらなければ、よい政治は実現しません。その意味で、政治塾はとても大事な組織です。多くの方が、関心をもって参加していただけるよう、段階に応じて、政党や議会に触れたり、体験したりする仕組みと事業に力を入れたいと思います。


 

          


 

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(鈴木)さて3年4ヶ月ぶりの永田町生活はどんな感じですか?


 

 


 

(上川)いや、正直、浦島太郎の気分・・・といいますか、議員会館が新しくなったでしょう。事務所が広くなってビックリしました。昔の事務所は書類や資料で足の踏み場もなかったんですが、新しくなった議員会館の事務所は2・5倍も広くなって、応接スペースもゆったりとれて、みなさんを気持ちよくお迎えすることができます。ぜひ遊びにいらしてください。


 

 


 

(鈴木)顔馴染みの議員や官僚の皆さんたちは、陽子さんの復帰を喜んでくださったでしょう。


 

 


 

(上川)そのとおり!と自分で言っちゃいけないですね(笑)。とにかく永田町や霞ヶ関の雰囲気は3年4ヶ月前とはガラリと変わっていました。自民党の議員も霞ヶ関の官僚も、民主党政権下では思う存分働けなかったという思いがあったようです。とくに官僚の皆さんは萎縮してしまっていたようなんですね。政権が変わって今は生き生きとしています。委員会へ出席すると、議員も官僚も目の色が違うんです。厚生労働委員会に行きますと、年金や医療、まったなしの問題が山積していますので、議員も官僚もものすごく必死です。3年4ヶ月以前の自民党政権時とも違っていましたね。


 

 


 

(鈴木)野党を経験したことが発奮材料になったんでしょうか。


 

 


 

(上川)そうだと思います。国民の皆さんもそうだと思いますが、一人ひとりの意識が大事なんですね。どうかこれからの国会の動き、政治の動きを注目していただきたいですね。政治塾のような機会も、ぜひ有効に活かしていきたいと思っています。


 

 


 

さあそろそろお時間になりました。最後までおつきあいくださったリスナーのみなさま、本当にありがとうございました。それでは、次回までごきげんよう。


 

 


 

 
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