9月4日(火)18時30分からオンエアの内容を紹介します。
オープニング/高田梨加 陽子さん、こんばんは。
(上川)こんばんは。上川陽子です。
(高田)9月に入りましたが、まだまだ暑い日が続きます。
(上川)そうですねえ。以前、二十四節気のお話をしましたが、今週末の9月8日は二十四節気の「白露」。暦の上では、秋が深まり、露が落ちる量も増えてくる、という季節なんです。
ちなみに9月9日は「重陽(ちょうよう)」といって菊の節句の日なんだそうです。1月7日が七草の日、3月3日が桃の節句、5月5日が端午の節句、7月7日が七夕、9月9日が菊の節句、ということで、5つの節句があるんです。節日には七草、よもぎ、ちまき、笹もち、というように節句にちなんだ食べ物をいただく風習が残っていますね。
(高田)では9月9日は菊にちなんだものをいただけばいいんですね(笑)。食べ物を想像すると一足先に秋の気分が味わえるかもしれません。ではここからは聞き手のコピーライター鈴木真弓さんにバトンタッチいたします。
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(上川)改めまして、リスナーのみなさん、こんばんは。上川陽子です。
(鈴木)コピーライターの鈴木真弓です。どうぞよろしくお願いいたします。
(上川)9月1日は防災の日でした。何か訓練に参加しましたか?
(鈴木)いえ、自分が具体的に何かした、というわけではありませんが、県の災害対策については毎年取材をしています。陽子さんは県の総合防災訓練にも何度か参加されていますよね。
(上川)ええ、2000年6月25日に初当選し、国会議員になって初めて県の総合防災訓練に参加したのが、ちょうど湖西市での訓練でした。県や会場となった湖西市が主導して行う訓練で、国会議員はいわば来賓扱い、特にミッションを与えられてもおらず、「自分の身は自分で守ってください」とだけ言われ、拍子抜けしたことを、今でもよく覚えています(苦笑)。
(鈴木)9月1日に行う防災訓練というのは、国が行う総合防災訓練と、県が行うものと、分かれているんですよね?
(上川)ええ、国の「防災の日総合防災訓練」とは、首相をはじめ全閣僚が参加して緊急対策本部を立ち上げて、首都機能の中枢を守る訓練を行う、というのが第一のミッションです。第二に、全国の自治体が行う訓練と連携し、国から調査団を派遣する訓練なども行います。今年は横浜市と連携訓練を行いました。
(鈴木)静岡市民としては、東海地震の危険性が叫ばれて以来、防災訓練というのが年中行事のように刷り込まれていった気がします。マンネリ化が続いた感もありましたが、昨年の3・11をきっかけに再び訓練の重要性がクローズアップされました。
(上川)国の総合防災訓練でも、政府現地対策本部訓練として、東海地震を想定して行われる静岡県総合防災訓練と連携し、緊急災害現地対策本部の設置や運営訓練、実動省庁等による実動訓練なども行っていますね。
(鈴木)陽子さんは閣僚時代に、国の緊急対策本部設置訓練にも参加されたと思うんですが、どんな雰囲気でしたか?
(上川)3・11の前でしたからね、首都直下型地震を想定した訓練といっても、あくまでも机上の話で、どうもリアル感というか切迫感に欠けていた、というのが正直な印象です。結局、官邸の中では何もできないんですよね。
(鈴木)3・11原発事故直後に官邸を飛びだして現場に押し掛けて迷惑をかけた首相もいましたが(苦笑)。
(上川)災害現場というのは想定やマニュアル通りにはならないものです。想定やマニュアルに縛られ、判断を誤ることがあってはいけませんし、かといって想定マニュアルをおろそかにはできません。しっかり頭に入れておきつつ、現場はつねに変化するということを肝に銘じ、柔軟に行動判断することが大切ですね。
(鈴木)3・11以降、県の総合防災訓練にも自衛隊やアメリカ軍が積極参加するようになりましたね。とくにトモダチ作戦で現場での強さを発揮したアメリカ軍は、さすが、世界の紛争地域や実際の戦場で活動し、場数を踏んでいるだけのことはある・・・と思いました。
(上川) 米国の場合は、自然災害のみならず、実際の戦争の現場での活動という側面がありますので、原発事故対応についても、すでにスリーマイル島の原発事故の教訓も徹底的に分析し、それを活かして軍事訓練を重ねているわけです。その意味では、福島原発での一連の取り組みにおいても、すばやい協力の申し出があったといわれています。そうした知見をもっと共有化していたら、被害はこれほどまでに大きくはならなかったでしょう。とくに、米軍のもつ、例えば放射性物質の拡散データなど、自分たちのメンツに拘ることなく活用すべきであったと思います。
(鈴木)正確な情報を必要なときにきちんと共有するしくみが必要でしたね。
(上川)行動の基本は、適格な情報を得ること、それを共有すること、そして適切な判断のもとで行動できることです。今回の教訓は、政府、国会、民間、東電とそれぞれの事故調が発表していますが、これに加えてアメリカのレポートも合わせて、比較検証することが大事です。そこから、日本の取り組みの欠陥も見えてくると思います。
(鈴木)3・11では、同じ東北沿岸地域でも、多くの人命を失った地域と、犠牲者が出なかった地域があり、犠牲者の出なかった地域は日頃から本当にまめに避難訓練をしていたようですね。そういう実例を聞くと、訓練がいかに大事か痛感します。
(上川)避難の方法もさることながら、長期にわたる避難生活をどのようにやりくりするか、これも日頃から真剣に考えておかねばなりません。東北の被災地で心に残ったのは、避難所となった学校の児童生徒たちが、率先して避難住民のケアをしていた、ということでした。学校側にそのような想定マニュアルがあったのか、それとも生徒たちが自主的に行動したのかわかりませんが、自分たちの母校である学び舎に、着の身着のまま逃れてきた地域の人々を献身的に支えた子どもたちの姿には、本当に心揺さぶられる思いがしました。
静岡県は防災対策先進県といわれていますが、行政の対策に寄りかかるだけではなく、住民自身で「自分たちの身は自分たちで守る」という意識付けをもっと深めていかねば、と、被災地の子どもたちに教えられた気がします。
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(鈴木)避難所となった学校のお話がありましたが、陽子さんは7月に開かれた静岡市立城内中学校の避難所体験講座というのに参加されたそうですね。
(上川)ええ。城内中学では地域防災活動に貢献できる中学生を育てようと、生徒とPTAと地域住民が一緒に、防災について考え、行動するワークショップを開いているんですね。今年で7回目です。
(鈴木)どんな内容ですか?
(上川)城内中学は平成18年から「城中地震プロジェクト」という防災教育を行っているんですね。内容は、阪神淡路大震災を経験した中学校の校長先生に「人々を救ったのは人の心」というテーマで、また病院関係者からはトリアージの基礎知識について、市の防災担当者や消防署員からは「地域の危険個所探し」といったテーマで。実務担当者から直接具体的な話が聴けるので、生徒たちも真剣に耳を傾けているそうです。平成18年11月には、「城中地震フォーラム2006」という公開セミナーを開いて、生徒たちが防災授業で学んだ研究成果を地域住民に発表しています。
(鈴木)それは有意義ですね。城内中学は静岡の街のど真ん中にある学校ですから、都市型災害を考える上でも大きな意味があるんじゃないですか。
(上川)そうなんです。城内中学のある青葉地区は官公庁やオフィスビルが、昔ながらの商店街や住宅地と隣接している地域ですから、あらゆる状況を想定しなければなりません。授業や講座を聞いて終わる防災教育ではなく、避難所生活の実態や高齢者をどう守るかなど、リアルさを強調しながら道徳の授業と関連づけて授業を展開しているんですね。学年ごと学習推進計画を作成して、体験や実践を盛り込んで各グループが研究テーマを設定して取り組んでいるようです。今年の避難所体験講座もその一環で続いているものです。
(鈴木)実際、参加されてみてどうでしたか?
(上川)今年は、7回目。「避難所体験」のワークショップでした。東海地方で、3.11東日本大震災級の地震が発災し、青葉の中心商店街の建物は壊れ、住民も命懸けで避難地である城内中学校の校庭に逃げてきた。その中で、住宅が全壊し、戻る家のない人達が体育館で避難所生活を送るという想定です。体育館の収容人数は、約250人。年齢も、性別も、家族構成も違う人々が、初めて寝食を共にするわけです。
(鈴木)かなり大掛かりな訓練ですね。
(上川)参加中学生は、1年生から3年生まで約80人、PTAや私のような地域住民も加わって、まずグループに分かれて、何をどうすればいいか、意見を出し合います。リーダーは中学3年生、話し合いの内容を模造紙にまとめる作業が始まりました。
まず、自己紹介から始まり、ライフラインである水や食料の確保、けが人の応急処置、簡易トイレの設置、生活を共にするためのルールづくり、情報収集と交換のための情報版の設置やラジオの利用など、・・・始めは口の重かった生徒たちでしたが、発言する段になると、きちっと自分の意見を言えてびっくりしました。
最後に、グループ毎に話し合った内容について、中三の生徒が発表し、それを先生が白板に書きながら、全体総括となりました。後半は、運動場での実体験。簡易トイレの設置など、日頃の防災訓練で取り組む内容を、グループごとに力を合わせて実践活動をしました。
(鈴木)子どもたちが、自分たちの役割や責任を自覚し、行動していく変化の過程が目に見えるようですね。
(上川)本当にそうです。中学生といえども、避難所では動ける人、できる人が役割を担い共同生活を送るわけです。家庭では、保護される子どもたちですが、避難所では、お年寄りやけがをした人たちの、お世話もできるりっぱな存在であること、改めて子どもたちの力を感じました。
(鈴木)青葉地区に限らず、市内のさまざまな地域でその地域の特徴に合わせた防災教育や防災訓練が行われていると思います。ご近所づきあいが希薄になったといわれる時代ですが、こういう機会を有効に活用したいですね。
(上川)静岡市内各地域では、毎年防災訓練が行われています。町内会あるいは町内の班単位でも、決して訓練は形骸化することなく、取り組んでいたところは、いざという時役だったという奇跡的な話も聞いています。静岡の取り組みも、3.11以降テーマを絞った、具体的な取り組みが積極的になっています。大事なことです。
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(鈴木)さて今月、一般社団法人静岡倶楽部が創立100周年を迎えるそうです。静岡倶楽部って静岡のそうそうたる名士の方々の集まりで、陽子さんも会員だそうですね。
(上川)静岡倶楽部というのは明治時代、製茶の貿易市場が横浜から静岡に移ったとき、お茶の貿易ビジネスの接待の場として造られたクラブです。今の中町ビルの場所に、白亜の洋館が建設され、大正元年1912年に創立記念総会が開かれました。以来、お茶業界に限らず、静岡のさまざまな分野の名士たちが集う社交の場として発展してきました。今は新中町ビルの中に事務所があります。
(鈴木)陽子さんが入会されたいきさつというのは?
(上川)静岡倶楽部は平成2年から静岡市内の小中学生育成事業として「科学研究奨励賞」という表彰制度を行っているんですね。ちょうど私が静岡へ戻って来た頃でした。地域の経済人が地域の子どもたちの研究努力や創造性を延ばそうという姿勢に感銘しまして、ちょっとお高い会費なんですが(苦笑)、子どもたちの未来に投資するという思いで参加させてもらいました。
実際、国会議員なってから、子どもたちの理科離れを食い止める政策作りに大いに参考にさせていただき、男女共同参画担当大臣になったとき、前回お話したような女性研究者を育てるプログラムにもつなげることができたんですね。とても価値ある事業だと実感しています。
(鈴木)どんな研究が表彰されているんですか?
(上川)それが、嬉しいことに、平成2年第1回の理事長賞というのが、大河内中学校の「聖一国師と大河内の茶」という研究論文だったんです。静岡倶楽部の設立が製茶貿易と関係していた、ということもあったと思いますが、科学の研究論文に地元のお茶と歴史を取り上げた生徒たちの目の付けどころも嬉しかったですね。今年で23回目になりますが、これまで、静岡の自然、農業、環境、エネルギー資源など時代に適ったテーマが多く、本当に頼もしく思います。今年も期待しています。
(鈴木)中学校と聞くと、いじめ問題がニュースでさかんに取り上げられましたが、こういう話題もどんどん伝えてほしいですね。
(上川)静岡倶楽部の科学研究奨励賞設立趣意書に、「21世紀に生きる日本人にとって、もっとも求められる資質は創造性である。この創造性は、ただ知識を積み上げていくだけでは形成されない。積極的に事物・現象に働きかけ、研究し、小さな発見と努力の連続の中で少しずつ芽生えていくものである」とあります。友だちとの関係も同じですね。どんなことにも創造と発見の目を注いでほしいと切に願います。
さあ、そろそろお時間になりました。最後までおつきあいくださったリスナーのみなさま、本当にありがとうございました。それでは、次回までごきげんよう。
*次回は9月18日の放送予定です。