かみかわ陽子のラジオシェイク第21回オンエア〜女性のワークライフバランス

 更新が遅くなりましたが、8月7日(火)18時30分からFM−Hiでオンエアの内容です。

 

 

 

 

 

オープニング/高田梨加 陽子さん、こんばんは。


 

 


 

(上川)こんばんは。上川陽子です。


 

 


 

(高田)陽子さん、昨年の東日本大震災で被災した福島県いわき市の道の駅よつくら港、今週末の8月11日に復活リニューアルオープンするそうですね。


 

 


 

(上川)そうなんです。昨年の3・11から数えて1年6カ月。本当に待ちに待った嬉しいお知らせです。


 

 


 

(高田)このラジオシェイクでも、陽子さんがいわき市の被災地を訪れたことや、よつくら港のみなさんとの交流について再三ふれてまいりました。感慨ひとしおじゃないですか?


 

 


 

(上川)1年4か月経ってもがれき処理が立ちはだかって、なかなか復興が進まない現状を、佐藤さんたちNPOよつくらの仲間たちが、「福島の復興のシンボルに」と再建を決断し、ねばり強く活動を続けてきました。その必死な姿をずっと見続けてきましたので、当日は静岡からなんとしても参加応援に馳せ参じたいと思います。


 

 


 

(高田)前回の放送で、安倍川花火大会が市民の力で59回も続いていると知りました。民設民営の道の駅よつくら港の復活も、市民の草の根の力というものを感じます。


 

 


 

(上川)まさに、そこに暮らす一人ひとりの思いを束ねた、草の根の、自立の力です。それが、社会を動かす本物のチカラなんだということを、いつの間にか日本人は忘れてしまっていたのではないか。彼らの姿は、忘れてしまっていた草の根の市民のチカラの、まさに日本の底力を気づかせてもらったのです。


 

 


 

(高田)本当にそう思います。さあ、ではここからは聞き手のコピーライター鈴木真弓さんにバトンタッチいたします。


 

 


 

 


 

 


 

          ♪


 

           


 

(上川)改めまして、リスナーのみなさん、こんばんは。上川陽子です。


 

 


 

(鈴木)コピーライターの鈴木真弓です。どうぞよろしくお願いいたします。


 

 


 

(上川)連日ロンドン・オリンピックで盛り上がっていますね。世界で活躍する日本人パワーには本当に勇気づけられます。今日は、身近な足元の、地域の底力、といったテーマでお話しようと思います。


 

 


 

(鈴木)ちょうど消費税増税問題が取りざたされている今、うかがいたいなあと思っていたテーマがあるんです。私が少し関わりのある福祉NPOでは、子育てしながら働く女性や、高齢者や障害者を介護する家族の支援をしているのですが、静岡市はどうも福祉サービスが遅れている、という声を聞きます。行政や医療機関が対応してくれず、自分たちNPOのところへ駆け込み寺のように助けを求めてくる人が増える一方だと。静岡って暮らしやすくていい町だと思っていたので、ちょっとショックでした。


 

 


 

(上川)実は、私も東京で子育てしながら働いてきました。長女が中学2年生、次女が3歳の時、静岡に戻って活動を始めたんです。静岡は、老後暮らしたい町として全国的にも高い評価がされていますよね。その理由としては、気候が温暖で自然に恵まれ、食も豊か、歴史も豊かなんてことがありますが、しかし、子育てという視点でみると、鈴木さんが疑問に思われているとおり、子育てサービスがワンサイクル遅れているなと感じました。


 

 


 

(鈴木)東京の方がやっぱり進んでいたんですね。


 

 


 

(上川)当時私は、東京の小金井市に住んでいましたが、小金井市では、30年前から、ご自宅で赤ちゃんのお世話をしてくださる保育ママの制度があって、私も随分お世話になりました。実家の母親に見てもらうようなおつきあいで、子育てのちょっとした悩み相談なんかもしてくれました。


しかし、当時静岡ではありませんでした。保育ママの制度は、静岡でやっと最近始まったばかりです。家庭的保育の制度は、国でも予算を拡充しましたので、保育園に入れない子どもたちを地域で支える制度として、静岡でももっともっと普及してもよいと思います。


 

 


 

(鈴木)静岡は転勤族が多いですね。転勤してきて、いざ静岡で子育てをしようとすると、それまで都会であたりまえであったようなサービスがない。そんな現実のギャップを感じて、それではと立ち上がって行動する傾向があるようですね。


 

 


 

(上川)静岡の人は、おっとりしているので、そういう外のパワーに押されている感じがします。PTA活動なんかも、リーダーとなった親が転勤してしまって元に戻ってしまったなんて声も当時からありました。最近は時代が変わっていますので、そんなことはないと思いますが。子育て世代が、自分たちのためにから始まって活動をはじめ、その後OBとなって次の子育て世代を応援する、そんなNPO活動が活発です。 


 

 今回、消費税の対象である社会保障のなかに、年金や医療・介護といった社会保障制度とならんで、「少子化と子育て支援」の予算が入ったことは、画期的なことなんです。高齢者や障害者とならんで、未来への投資として、将来世代への応援を広く社会全体で支えていかなければなりません。その時、行政ではなく、むしろ市民パワーがそうした制度を活用して、頑張っていただきたいのです。


 

 


 

(鈴木)少し気になったのは、私が関わっているそのNPOでは、緊急サポートネットワークといって、子どもが急に熱を出したり具合が悪くなったお宅へ、ちゃんと訓練を受けたベビーシッターを派遣する病児保育事業を市から委託されてやっているのですが、小児科の先生でこの事業を理解してくれる人が少ないと嘆いていました。ひょっとしたら、その根底には、病気になった子どもを他人に預けてまで働きに行くことはないだろう、という認識がまだまだ強いのかなあと。


 

 


 

(上川)血のつながった家族がケアするのが理想だと思いますが、血縁だけではなく、地縁、地域のご近所さん同士で困ったことがあればお互い様、というつながりが大切になってきますよね。昔はご近所さんづきあいが当たり前で、それこそ共働きやご商売をされているお宅なんかは、両親ともに忙しくて子どもは放ったらかし、でも近所のおじちゃんおばちゃんが何くれとなく面倒みていた、なんて光景もあったでしょう。


 

 


 

(鈴木)そうそう、私は昭和40年代に小学生でしたが、両親共働きで、ご近所の家に平気で上がり込んでおやつをもらっていた記憶があります。


 

 


 

(上川)静岡は、核家族化やシングル化が進んで隣近所に誰が住んでいるのかわからない、なんて大都会とは違い、まだまだ地域コミュニティが機能していると思います。そのことをプラスにとらえ、保守的な考えの人が、ほんの少し、目線を広げて、家が大事、家族が大事なら、隣近所も大事にしよう、自分の地域をよくしようと、考えを切り替えてくれるといいですね。


 

 


 

           ♪ 


 

           


 

(上川)私は男女共同参画、少子化対策担当大臣を務めていたとき、仕事を持つ女性が、家庭やプライベートとうまく両立させる、ワークライフバランス、というものを推進しようと努めてきましたので、今日のお話は身につまされる思いがしますね。自分自身のワークライフバランスについても考えさせられます。


 

 


 

(鈴木)どんなだったんですか。


 

(上川)自分のワークライフバランスを振返ると、やはりバリバリキャリアって感じだったんです。でも、さっきご紹介した、保育ママの制度があって、当時も、斉藤ママが、子どもを3歳まで、病気の時も心配しないでといって預かってくれました。移るような場合は、実家の母が上京して面倒をみてくれました。まさに総力戦ですよね。


 

(鈴木)そうだったんですか。やはり当事者の視点で取り組んでおられたんですね。その後、女性のワークライフバランス、少しは前進したんでしょうか?


 

(上川)最近ちょっとうれしいことがありました。実は大臣時代、お茶の水女子大学で“日本の女性科学者からノーベル賞受賞者を輩出しよう!”と呼びかけたことがあったんです。研究者の世界も政治に負けず劣らず保守的ですからね、


 

(鈴木)確かに。女性の宇宙飛行士はいますが、女性のノーベル賞受賞者はまだいませんね。


 

(上川)保守的と言われる世界で成果を出せば、多くの女性プロフェショナルたちにとって大きな励みになると思ったのです。そのお茶の水女子大の講演会を聴講していた小杉尚子さんという方がいましてね、現在、NTTコミュニケーション科学基礎研究所のドクターなんですが、彼女が在宅でも出来る認知症患者への遠隔音楽療法システムという画期的な開発に取り組んでいるのです。


 

(鈴木)どんな研究ですか?


 

(上川)音楽療法とは、ご存じのように、音楽の持つ、生理的、心理的、社会的働きを、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上に向けて、意図的、計画的に活用して行われる治療技法です。病院や介護施設などで、歌唱や合奏などを組み合わせて週に1回、約1時間の音楽療法セッションが行われているケースが多く見られますね。あの100歳のドクター日野原重明先生も取り入れておられます。


 

 


 

(鈴木)認知症にも効果があるんですね?


 

 


 

(上川)認知症というのは、正常に発達した認知機能が、後天的な何らかの障害により、生理的老化の範囲を超えて広範かつ慢性的に低下した状態のことです。脳の器質障害からくる記憶障害、判断力低下などと、二次的に引き起こされる周辺症状がありますね。このうち、二次的な周辺症状は必ずしも引き起こされるものではなく、自分の体が思うように機能しない、失敗するかもしれない、自分はもう駄目だ・・・というように、人として自尊心を失ってしまう、その前に、上手にフォローすることで発症しない場合もあると言われています。音楽療法はこの周辺症状を軽減するのに適した手法の1つだと考えられているんですね。


 

 


 

(鈴木)なるほど。


 

 


 

(上川)小杉さんたち研究チームは、在宅で介護を受ける認知症高齢者宅と、音楽療法現場または音楽療法士宅をネットワークで結んで、音楽療法を提供するための基礎技術の研究を行い、遠隔音楽療法システムを開発しているのです。この事業は国の最先端・次世代開発支援プログラムから1億数千万円の予算が付きました。研究を始めて現在2年目ですが、今年の4月には改正介護保険法が施行され、在宅介護に向けた取り組みが加速していますので、大変注目をされているんですね。


 

 


 

(鈴木)音楽っていうのがいいですね。介護している家族も、心地良い音楽を聴いてリラックスできますし、介護のモチベーション維持にも役立つんじゃないでしょうか。


 


(上川)実際に、認知症で徘徊や暴言を吐く人が、音楽を聞くことで少しずつ軽減されたり、引きこもりがちな一人暮らしの高齢者が、「歌(合唱)の会なら」と出て来られるようになったという話もあります。音楽には人の心を癒し、地域と繋がるきっかけを作るなどの力があり、最近とくに関心が高まっていますが、残念ながら何にどの程度の効果があるのかは解明されていないようです。


 

 


 

(鈴木)その分野に女性科学者が取り組んでいるというわけですね?素晴らしい!


 

 


 

(上川)彼女が在籍するのはNTTですから、最新の情報通信・情報処理技術を用いて、過去に例のない極めて大量の音楽療法に関するデータを、効率的に収集・分析するのが彼女の研究の最大の特色です。これにより、客観性・信頼性の高い説得力のある研究成果が期待できるんですね。


 

効果的な音楽療法を安心して受けられるようになることで、高齢者の自立やQOL向上、ひいては介護負担(人・費用など)の大幅な軽減に繋がるかもしれません。小杉さんは「将来的には、あらゆる人にとって有効な“日本の音楽教育の望ましい在り方”の提案に繋げていきたい」と言っています。


 

 
 
鈴木)ああ、音楽教育にまで広げて考えておられるのが、女性らしいですねえ。


 

 

 

(上川)彼女の研究がノーベル賞に値するかどうかは別にして、社会のニーズに具体的に的確に応えていく、そんな分野で女性研究者の活躍の場がどんどん広がって行くような気がします。研究動機やモチベーションがハッキリしていますから、女性にとっては大変やりがいがありますし、目標が明確であれば、少々のことではくじけないのが女性です。とにかく小杉さんのような女性研究者をもっともっと育て、女性プロフェショナルのワークライフバランスが良好に保たれ、仕事に思う存分取り組める社会になれば、ノーベル賞受賞も夢ではない、と信じています。


 

 


 

            ♪


 

 


 

(鈴木)今日は福祉問題を通して地域について考えてみましたが、地域の力といえば、やっぱり福島県いわき市の道の駅よつくら港ですねえ。


 

 


 

(上川)本当によくぞ復活したと思います。私たちが訪れたのは震災後ひと月ちょっとでしたが、道の駅の建物自体は出来てまだ1年ちょっとの新品で、それが半分根こそぎ津波にやられてしまって、スタッフの皆さんの落胆ぶりはいかばかりだったかと思いやられました。


 

 


 

(鈴木)民設民営の道の駅でしたからねえ。それが復活するしない、というのは、いわき市の皆さんにとって、町が復興できるかできないかのシンボルみたいな存在で、とても大きかったのでは、と思います。


 

 


 

(上川)道の駅が、外からの観光客だけでなく地元の皆さんにとっていかに大切な場所になり得るのか、静岡でも新東名サービスエリアの活性化などに参考になると思いますよ。


 

 


 

(鈴木)リニューアルする道の駅よつくら港では、静岡の物産品も置いてもらえるそうですね。


 

 


 

(上川)そうなんです。我々のささやかな応援が地域同士の交流へと実を結び、ビジネス交流にまで発展しそうです。ぜひこのご縁を太く、長くしていきたいと思っています。


 

 


 

(鈴木)東北へ行かれる機会のある方は、ぜひいわき市四ッ倉の道の駅よつくら港にお立ちよりくださいね。静岡から来たと言えば、スタッフさんとお話が盛り上がると思います!


 

 


 

(上川)そろそろお時間になりました。最後までおつきあいくださったリスナーのみなさま、本当にありがとうございました。それでは、次回までごきげんよう。


 

 


 

           


 

 


 

 
カテゴリ内ページ移動 ( 56  件):     1 ..  13  14  15  16  17  18  19  .. 56    

Copyright (c) 2004 Yoko Kamikawa Office. ALL RIGHTS RESERVED.