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かみかわ陽子

 

(社)静岡県林業会議所発行「 Forestry and Forestry 」  2006年2月15日号掲載

都市と農山漁村の共生

二つの学校(ダブル・スクール)構想の提案

衆議院議員 かみかわ 陽子

少子高齢化が進み、日本の社会経済構造は大きく変革を迫られている。私の地元・旧静岡市の中山間地でも、これまでの道路やトンネルの要望に加え、過疎化に伴う小学校の複式学級化や閉校への不安を PTA や地域の長老から聞くことが多くなった。実情は都市部の小学校でも同様である。 74 歳以上を対象とした地域の敬老会では、お年寄りに小学生が送る手紙の数は 1 人1通では足りず、2通以上書く子が増えている。地域の少子高齢化を痛感する機会でもある。

地域がコミュニティ生活圏としてまとまりの持てる最小限の要素が、私は三つあると思う。小学校があること、病院があること、そして商店街があること。このどれか一つが欠けても地域社会にとっては大きな打撃であり、とくに中山間地域では小学校の存在が最後の砦になっている。中山間地域の過疎化は、森林を育て、山を守る人々がいなくなることを意味する。飲み水を保全し水害を防止する力が弱くなり、都市生活者にとっても大きなトラブルを引き起こすことにつながる。都市部と中山間地域は運命共同体であることを忘れてはならない。

静岡市は昨年4月、政令市になった。最近発表された新市全体の人口はかろうじて70万人を保ったが、一昨年生まれた赤ちゃんの数は約6千人と人口の1%を切っている。旧静岡市の小中学校は現在86校を数えるが、このうちの小学校はこれから5年間に統廃合がかなり進むとみられている。統廃合をせずに、これからの時代にふさわしい学校教育を実現する道は無いものか。とくに中山間地域の過疎化をかろうじて食い止めている最後の砦をなくさない方法を何とか工夫できないものか。

そこで私の提案である。子どもたちの健全な育ちにとって、自然とのふれあい体験は欠かせない。自然とのふれあい体験を取り入れる学校も増えている。私はそれをさらに進め、社会科、国語、理科や体育など義務教育のカリキュラムの中に、しっかりと自然体験活動を組み入れ、中山間地域を野外教室として明確に位置づける。もっと具体的に言えば、子どもたちは中山間地域にある A 学校(ファーストスクール)と都市部にある B 学校(セカンドスクール)の二つの学校(ダブルスクール)に就学する。そうすれば1人の子どもが、環境のまったく異なる二つの学校に通い、都市部と山間地域の二つの体験から、生きる力や生命の大切さを深く学ぶことができる。運動会や文化祭などの行事も、それぞれの学校で同じプログラムにそって準備し、当日はどちらかの学校に集まって共同開催する。そうすれば子どもたちは、都市と農山漁村の二つのふるさとを持つ子どもとして成長していくことができようし、親や地域の人たちにとっても、 A と B の地域が交流する機会が多くなる。

南アルプスの南麓の山あいから太平洋に臨む平野までを擁する静岡市ならではの特色を生かし、ぜひダブルスクール構想を実現したいものだ。

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