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かみかわ陽子

私の意見

第4回イラク問題に関する国会議員20

朝日新聞イラク問題アンケート回答
2003年4月15日時点

(1)イラク戦争が終結に向かっている戦況を踏まえ、米英支持を打ち出してきた今回の小泉首相のイラク戦争への対応を、改めてどう評価しますか。
(回答)理解する

(2)今後の日本外交は日米同盟、国連のどちらに軸足をおくべきだと思いますか。
(回答)両方とも

(3)復興支援にあたって自衛隊をイラクに派遣すべきだと思いますか。
(回答)下記(3)のとおり。

(1)小泉首相の評価について

国民の生命・財産を守るべき総理大臣が、日米安保条約を日本の安全保障の基軸に据え、同盟関係を重視するのは当然である。まして北朝鮮問題が身近な脅威となっていることを勘案すれば、米国とできるだけ共同歩調をとろうとする姿勢は理解できる。しかし仮に米国がイラク問題への対応に失敗し、国際社会で面目を失うことになれば、東アジア地域における米国の抑止力を著しく低下させたり、米国を孤立主義に陥れる惧れがないとは言えない。そうした事態は日本の安全保障にとって極めて深刻である。

ではイラク戦争において米国が「軍事的」勝利をほぼ手中にした現時点において以上のような懸念は解消したかといえば、決してそうではない。むしろこれまでの戦況推移やバクダッド陥落以降のイラク国内の情勢を見るかぎり、下記のとおり、これまで以上の困難を予感させる不安材料ばかりが目に付く。すなわち、米国が国連安保理の新決議採択という「正統性」を得ないまま単独で武力行使に踏み切った結果、戦争開始当初から「大義」の立証というツケを強いられてきたが、その立証に未だ成功していないばかりか、予期せぬかたちで泥沼に足を取られ、ジレンマに直面している米国の姿が見て取れる。軍事力の圧倒的な威力を見せつけながら、国際的な「威信」を失いつつあるか見えるのは、同盟国・日本にとっても誠に残念である。仮に米国がこれからも単独行動主義を突き進むとすれば、国際社会で面目を失う危険が増すだけに、日本としては米国を出来るだけ早く国際協調の場(国連)に連れ戻すため、最大限の外交努力を行うことが必要である。

  1. 米国が戦争目的として主張してきた大量破壊兵器・生物化学兵器の存在が立証できていないうえ、少なくとも一度も使用されなかったという事実。
    • 大量破壊兵器・生物化学兵器の有無を公正・中立の立場から証明するため、米国は直ちに国連査察委員会に査察活動を要請し、これに全面的に協力すべきである。
  2. イラク民衆による武装蜂起が発生しなかったばかりか、米国自身が星条旗の掲揚を禁止せざるを得なかったことから、米軍が「解放軍」としてイラク国民に歓迎されていないことは明らかであること。
    • バクダッド市内でメディアが集まるホテルを米軍が攻撃し、3人が死亡した事件については、いまだに米軍から明確な説明がなされていないが、そうした行動も「解放軍」になり得なかった米軍の焦りの現われと見て取れなくもない。
  3. 戦争には既に圧勝したはずの現時点において、ブッシュ大統領がなお戦争終結を宣言できないまま無政府状態が続いていること。このことはフセイン政権の崩壊がイコール米国の勝利を意味せず、さらにはこの戦争に勝者が存在しないことをも暗示している。 
    • ジュネーブ条約で占領軍に課せられた治安維持義務すら米国が履行できなければ、戦争目的の正統性に疑念を生じさせ、国際社会の見る眼が一段と厳しさを増すことになろう。
  4. 大多数のイラク国民から歓迎され、実現可能性も高い戦後復興の陣容・枠組みを米国が提示できていないこと。
    • 3、4に関しては、米国が前面に出て存在感を高めたり、米軍の駐留期間が長引くほど、イラク国民の反米感情を一層煽り、中東地域全体を不安定化させかねないというジレンマ。

(2)日米同盟か、国連か

上記(1)に記した理由により、日本の安全保障のためには、「国連重視か、日米関係重視か」の二者択一ではなく、「国連も、日米関係も」が引き続き外交の基本であるべきである。これらは「コインの裏表」であり、二者択一ではありえない。幸い、対米関係と国際協調(国連重視)の両立を目指す国として、英国も日本に近い立場にあると考えられるため、今後とも英国への働きかけを強め、協調して米国の説得に当たることが重要である。

(3)自衛隊のイラク派遣問題

これまでの自衛隊海外派遣の事例に照らせば、国連決議のない自衛隊のイラク派遣は考えにくい。しかし同時に、イラク問題に関しては、その特殊性・困難性に鑑み、国連決議がありさえすれば、その内容如何を問わず「何でもオーケー」というわけにも行かない。何よりもイラク国民の利益となるものでなければならず、またイラク国民に歓迎されるものでなくてはならない。さらにアラブ諸国を含む国際社会の理解が得られないのであれば、自衛隊の派遣に踏み切るべきではない。

なおイラクの復興支援に関する新たな国連決議について、フランス・ドイツも極めて慎重な姿勢を堅持していることは十分留意すべきである。そうした仏・独の姿勢は、先日の川口外務大臣訪欧において明らかになったが、その背景には、米国が表現の曖昧な国連決議をタテに、イラク戦争開戦時と同様、戦後復興に際しても単独行動に走ることへの強い警戒感があるためと思われる。また米国と欧州の「懸け橋」をめざす英国も、性急に国連決議をめざせば対立再燃に結びつく惧れもあるため、当面は国連決議の採択に慎重な姿勢で臨んでいる。日本としても、かたちだけの国連決議に漕ぎ着けさえすれば米欧の亀裂が修復できると安易に考えるべきではない。現状において新たな国連決議の採択は望み薄であり、国連決議を最低限の拠り所とする日本の自衛隊派遣は、そもそも検討のための前提条件すら欠く状況にある。

いずれにせよ、今回のイラク戦争の戦後処理については、今後、かなりの紆余曲折が予想され、解決への道筋が見えてくるまでには相当の時間を要するものと覚悟しておくべきである。大切なことは、目まぐるしい状況変化の中で大局的な流れを見誤ってはならないという点である。

仮に米国が単独でイラク復興を主導しようとする場合、克服しなければならない障害は、(1)米欧間の亀裂のみならず、(2)誇り高いイラク人の国民性に対する米国の理解不足、(3)根強いイラク国民の反米感情、(4)多民族・多宗教からなる一体性の希薄な暫定統治機構のゆくえ、(5)トルコ・イラン・シリア等周辺諸国の疑心暗鬼、(6)たな晒しになっているパレスチナ問題への取り組みなど、いずれも一朝一夕には解決しない難問ばかりである。こうした課題に直面して米国は今後、様々な難局に直面することになろうが、仮に現在の米国の行動に行き過ぎがあるとしても、時間の経過とともにいずれは米国社会が復元力を発揮し、冷静さを取り戻すことで、再び国際協調路線に復帰することとなろう。

日本としては長期的視点に立って、派手なパフォーマンスや軽挙妄動を慎み、当面は国連やその他国際機関、さらにはNGO活動への積極的支援を通じて、食料・医療等の人道支援・緊急支援活動に地道に取り組むとともに、米国を国際協調(国連)の場に連れ戻すための外交努力を根気強く続けることが求められる。

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