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かみかわ陽子

私の意見

 

日本人よ、眦を決して働こう

情熱だより2003年1月号巻頭

東アジアの物流革命

東アジアで物流の大革命が始まっている。
その中心は、このところ発展の著しい中国・上海。昨年夏、はじめて訪中した時にこのことを痛感したが、東アジアにおける物流変化の可能性について私がはじめて意識したのは今から7年前、1995年の阪神大震災の時だった。当時、震災の影響から、神戸の船荷が近隣の東アジア新興国に奪われることを懸念する声が聞かれたのを覚えている。

アジアで最も優れた港湾設備と高い貨物処理能力を有する国際貿易港は、長年、神戸・横浜と決まっていた。しかし港湾使用料や人件費の高さが嫌気され、労働条件の制約等から24時間処理体制を組めない非効率性は、当時から日本の港湾に共通する弱点とされていた。その結果、震災を契機に神戸港の船荷が他に奪われる惧れがあったのだ。当時のライバルは香港、そして新たな東アジアの拠点港(ハブ機能)の座を国を挙げて虎視耽々と狙っていた韓国のプサンだった。

予想を上回る中国の発展

それから7年後の今日、東アジアにおける物の流れは予想をはるかに上回るスピードで大きく塗り替えられ、ハブ港の座をめぐる争奪戦に上海が勝利しようとしている。この間、香港はといえば、中国本国の発展の勢いに呑み込まれるかたちで早くも衰退が始まっている。中国による香港併合からわずか3年しか経っていない。そして神戸・横浜に代表される日本の港湾は、上海を中継地として細く枝別れする世界のローカル港の一つになり下がろうとしている。

無論、物流を決定づけるのは、基本的に物を作り出す力(生産力)である。最近の報道によれば、日本への最大の輸出国はアメリカから中国に移ったとのことである。その中には、ひところ農薬問題で話題になった中国産の生野菜なども含まれているはずだ。生産力の点でも、日本はすでに工業製品から生鮮食料品まで、東アジアにおける主導権を失いつつあるのではないか。

眠り続ける日本人

こうした世界の潮流にもかかわらず、日本人は眠り続けている。
たしかに周囲の国に比べ、日本人の人件費は高すぎるのだろう。日本人が働かなくなり、働きたいと思ってもそのための条件が十分整備されていないのだろう。フリーターという名の大量の若年失業が、知らず知らずのうちに繁栄の基礎を虫食んでいるにちがいない。そして企業家精神を引き出す規制緩和が日本経済生き残りの唯一の道であるにもかかわらず、構造改革特区構想すら中央省庁の抵抗で頓挫し、小泉総理の構造改革路線もひところの勢いを失いつつあるかに見える。

改革への決意を新たにすべき時機

しかしいまこそ、改革の原点に立ち返って改革への決意を新たにすべき時機ではないか。内向きに閉じこもろうとするのではなく、新たな開国への意志を明確にすべき時機ではないか。私は、日本人全体が気合いを合わせ、プライドをかけ、眦(まなじり)を決して、再び働き始める時代を迎えていると思う。

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