YOKO KAMIKAWA OFFICIAL WEB SITE

かみかわ陽子

論文・対談・投稿・マスコミ

 

公文書管理で法制定へ

上川陽子担当相に聞く

記録を積み上げ 誇りある社会に

 

2008年3月25日付 日本経済新聞夕刊

年金記録などずさんな記録管理が問題となる中で、公文書管理・保存に向けた法制定、体制整備が動きだした。新設の公文書管理担当相を兼務した上川陽子少子化担当相に語ってもらう。

― 公文書管理に熱い思いがあると聞いた。

   私自身のこれまでの体験に基づいている。大学時代は安保条約改定のプロセスを研究し、様々な記録資料に接した。米国留学時代に上院議員のオフィスで銀行法にかかわる調査研究をし、公文書がいかにオリジナルの資料として重要かよく分かった。帰国して研究機関に勤め、米国のデータベースに依存する日本の現状をテーマにした。

 人間が生み出してきたものを情報として表現、収集し、(資源として現在や将来に)生かすことがいかに大事かという思いだ。

― 諸外国に比べて日本はいまだに意識が低いのか。

  米国はあらゆる営みをすべて記録に残すことに対してきわめて貪欲だ。それほど長い歴史がないからなのだろう。留学先のボストンは、英国の植民地時代からのものが街全体に積み重なっていた。大学も歴史そのもので、明治時代の外交官、小村寿太郎が座ったイスがそのまま置かれていたりする。過去がすべてアイデンティティーの源になっている。

  そうした情報の蓄積の上で政治も動いている。銀行資本に関連する法律を例にとれば、それが恐慌時代に生まれ、どのような経緯をたどって今に至っているかを一次資料に基づいて分析したリポートがきちんと作られている。様々な記録がいろんな角度から集められ、どのように意思決定されたかが一目瞭然に分かる。カナダやフランスなども同様に、自分たちの営みの記録を積み上げた上に成り立っている。その営みの厚みがつまり、国力だ。

― 日本には公文書管理法さえない。ずさんな年金記録の問題は法制定の好機にも思えるが。

  確かにそうかもしれない。しかし、私は記録を残すことは誇りあることなのだという気持ちを行政の人たちにしっかり持ってもらい、公文書管理を適正にする活動に参加、協力してほしい。だから、オープンな場ではネガティブな発言をしないようにしている。記録を残すことはとても意味のあることだし、誇りを持てることなんだと思えるような法制度を目指したい。

   民間の記録を含めてすべてが「公」の財産。それを大切にしていく社会づくりともいえる。一人ひとりが責任をもって意思決定に参加し、結果を受け入れる民主主義のよりどころである。

↑ページのトップへ

←戻る