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かみかわ陽子

論文・対談・投稿・マスコミ

(財)市川房枝記念会発行「月刊女性展望」 2006 年 4 月 10 日 号

座談会:五党女性国会議員が語る女性の政治参画

出席者 ( 敬称略、発言順 ): 

自民党  上川 陽子

公明党  松 あきら

民主党  小宮山 洋子

共産党  石井 郁子

社民党  辻元 清美

 

以下、上川の発言部分のみ。

 

―― 今年 4 月は女性が参政権を行使して 60 周年になりますが、昨年 9 月の衆議院総選挙で女性は 43 人が当選し、 60 年前の 39 人を初めて上回る人数が当選しました。その後の繰り上げ当選で現在 44 人が衆議院に議席をもち、一方参議院は 34 人、それぞれ 9.2 %、 14.0 %を占めていますが、列国議会同盟の調査や GEM (ジェンダー・エンパワメント指数)でも日本は先進国の中で非常に低いという実態です。まずこの状況をどうご覧になるか、そこから話をお始めください。

上川 ) 60 年前、戦後初の総選挙で女性が 39 人当選したのは、選挙制度が連記制だったことが大きいと思いますが、その後低迷状態が続いてきた中で、今回節目の選挙で 43 人当選したのは大変うれしい躍進でした。特にこれまで女性議員が少なかった自民党は 9 人から 26 人へと大幅に増え、その背景には実は私自身は反対をしている制度であるクオータ制的な動きがあったことを認めざるをえません。つまり党が比例代表のリストの上位に女性をおいたことで、その部分の追い風があったのではないかと思っています。韓国で最初にクオータ制導入をめぐる議論があった時に私も少しかかわったのですが、この制度を取り入れてから韓国では女性議員が飛躍的に増えており、やはり選挙制度と女性議員の進出には密接な関係があると感じています。

 

ただ、小選挙区は女性が候補者になって当選するというのはなかなか難しいことなので、小選挙区比例代表制になって初めての今回の大躍進が今後も続くかどうかという意味では、当選した女性議員たちのこれからの実績が大きな試金石となるのではないでしょうか。

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―― 上川さんはクオータ制には反対だとおっしゃいましたね。

上川 )ええ、そういう制度を法制化することについてはためらいがあります。しかし冒頭でも言ったように、政党のひとつの政策として女性の声を大事にしていくためにこれは継続してもらいたいですね。

 

私は昨年一年、党女性局長として全国組織を回り、多くの女性党員の声を聞く機会がありました。女性党員の中には自分たちは選挙の応援団体という意識が非常に強い一方、選挙のためだけの存在ではないことを認めて欲しいというような声もあり、これはすごくいい兆候だと思います。そうした声を形にしていくには、選挙ではなく政策を勉強していきながら自分の生活実感と重ね合わせていく。その中からさらに新しい声が出てくるというような政策対話を女性の皆さんにお願いし、共通のテーマである少子化の問題を取り上げることになりました。既に党には女性の政策審議委員の制度があったので、各都道府県から委員の皆さんに一人ずつ出ていただき、その方たちを中心に組織活動と政策活動という二つの柱を関連づけながら一年間活動を進めました。その結果、女性党員の中から予算の陳情とか税制改正などの要望が出始めています。そうした運動を通じて各級選挙の候補者が発掘され、一緒に育ちながら何が課題になっているかを皆で共有し、一人一人の努力で議席を得るのではなく、組織全体でお互いに支えあいながら応援していかないと長続きしないでしょう。私が女性局長を退いた後もそうした女性党員による政策対話路線は継承されています。

 

先ほどの NPO 活動ですが、女性がトップを務める NPO は福祉や子育てなどに偏り、安全保障や平和などは男性がトップですね。そういう意味では、女性たちが活動してきた中から押し出されてトップに出ていくと同時に、今まで男性が中心になっていた分野にも進出していく必要があります。男女共同参画といっても、対決的に女性のパワーをぶつけるのではなく、自然に女性の活動が広がっていけば、次の段階に進めるという気がします。

 

以前、列国議会同盟の女性会議の副議長として、ジェンダー・パートナーシップのプロジェクトに参加した時、世界各国の女性議員たちとそれぞれが国会で担当している委員会の話になったことがあります。当時私は財務・金融と総務、法務の委員会だったので、そう言うと、意外だったのか、どよめきの声が上がりました。もちろん安全保障やエネルギーなどを担当する方もありましたが、世界的にみても、女性はやはり子どもと教育と福祉が多いようです。そういうことを含めて、いろんな分野に女性が進出していくことで、女性が活躍していることが自然に社会で認められることにつながるのではないでしょうか。

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―― 女性議員への期待が高まる中で、皆さんはどのような議員活動に取り組んでおられるのでしょうか。成果も交えてお話ください。

上川 )私自身はあまり女性であることを意識してこなかったので、女性議員だからどうだということも含めて考えたことはありませんでした。しかし実際に衆議院議員に立候補を決意して地域を回るようになって初めて、女性が地域で頑張っていて、その支えがあって今の社会が成り立っているということを実感しました。皆さんは私が農業議員だとは思われないかもしれませんが、実は私は JA (農協)全国女性組織協議会のメンバーで、実際に治山治水や食育の運動を 12 年間、地域で仲間とともに進めてきました。テーマは「 21 世紀は生命の時代」。生命の基本は心と体と健康。それを一番支えるのは食と農です。その活動の中で自分の中の母性や女性であることを目覚めさせてもらったような気がします。ですから、政治家は有権者に対して高みからものを言うのではなく、先ほども言いましたが、相互に育ち合い、共鳴しあってはじめていい社会ができると思います。

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―― 最後に一言ずつ、若い世代への期待をお聞かせください。

上川 )司馬遼太郎さんは、「 21 世紀に生きる君たちへ」と題したメッセージの中で、自己を確立し互いに助け合って生きていくように、との励ましの言葉を寄せています。ますます地球が小さくなる中で、若い世代にはこの言葉を大切にし、日本の未来を切り拓いていただきたいと思います。

( 2006 ・ 3 ・ 14  於参議院議員会館)

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