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かみかわ陽子

論文・対談・投稿・マスコミ

 

自民党女性局立党 50 年プロジェクト 
少子化政策「子どものための提言」

 「子ども HAPPY プロジェクト」  

国民参加の少子化対策が始動

自由民主党月刊誌「りぶる」 2005 年 8 月号インタビュー

 

止まらぬ少子化、深まる社会不安―― - 喫緊の課題である少子化対策に結びつく具体的な政策提言をしようと、女性局では「 21 世紀に生まれる子どもたち」をテーマとした政策対話を 1 年間かけて行っています。

その第1弾として実施されたのが「結婚・出産・子育てに関するアンケート」。今年3月から4月にかけて、全国10代から30代を中心に男女771 1 人から回答が寄せられました。この調査結果を踏まえ、党としてはどのような少子化政策を立案しようとしているのか、女性局長の上川陽子衆議院議員にお話を伺いました。

 

   なぜ若い人たちは結婚しないのか?

―― - 少子化の要因として、未婚化、晩婚化が大きな理由に挙げられています。

(上川)アンケートでも未婚の理由として「ひとりでも、生活に不便を感じない」という意見や「仕事や趣味を大事にする人が増えているから」「結婚すると自由がなくなるから」という意見が多かったですね。

―― - いまの人たちは、結婚しなくても特に困らずに生きていけますしね。女性も経済力があるし、男性もコンビニに行けば食べるものが簡単に手に入るから。

(上川)でもね、どの人も「子どもを持つ」ことに関しては肯定的なんですよ。「子どもがいた方が人生豊かになるよね」という前向きな気持ちがある。

―― - それはほっとしますね。でも結婚のあり方自体も変わってきたのでは?昔は親に言われた相手と結婚し、子どもを持つのが当然だったかもしれませんが、近頃は結婚=子どもを持つこと、とはとらえられていないんじゃないでしょうか。恋愛して好きな人と一緒にいたいから結婚し、子どもも夫婦でどうするか決める。結婚が経済を支え合う形から、純粋に愛を育む形に変化してきている。だから好きな人が見つからなければ、結婚しない。

(上川)相手が現れるのを待っているんですよね。受身になっている。昔のように「もう年ごろなんだから結婚しなさいよ」という人が少なくなったこともあるでしょう。いまは子どもが少ないから、親が一人の子どもにより愛情を注ぎ、親も子どもに頼るようになったのでは?

―― - 上の世代が「結婚はいいものだ」という肯定的なメッセージを下の世代に送ってこなかったということでしょうか。

(上川)それもありますね。母親の世代は子育てして、嫁務めもして、介護もしてきた。自分の一生を家族のために捧げてきたんですね。娘には、そんな苦労をしてほしくないという気持ちがあるのでは?だから親は特に女の子に対して「大丈夫よ、いまは女も自立できるんだから、そんなに結婚に焦らなくてもいいんじゃない」「離婚したければ、いつでも帰っていらっしゃい」というようなメッセージを送る。

―― - 結婚や子育てはたいへんなもの、というメッセージがありますよね。

(上川)そうですね。結婚して家族を持つことへのいいイメージがあれば、若い人たちがもっと結婚する気になるかもしれませんね。テレビなどにも、若い人たちが憧れるようなカップルや家族像がどんどん登場してくれるといいんですけれど。

 

親は子どもをおんぶしながら働き、生活している

―― - いまは女性も仕事をし経済的に自立できるようになった。だからこそ、仕事と結婚、子育て、介護を両立していけるしっかりとした支援が求められていると思うのですが。海外諸国の例を見ても、女性が働き続けられる国の出生率は高くなっています。また働くにしても、男性並みに長時間働くのではなく、バランスのよい働き方を求めている人たちも多いのではないでしょうか。

(上川)ワーク・ライフ・バランス運動はとても重要だと考えています。ワークとライフ、つまり働くことと生活とがバランスするわけですが、ここにライフステージとして子どもも含まれている。子どもをおぶったり、抱っこした状態でワークしたりしているわけですよ。そのイメージをみんなに持ってもらいたい。でも、親子を分離して考えがちなんですよ。

―― - 企業内保育所もなかなか増えていかないのが悩みですが。

(上川)子どもがいる、子どもをおぶったこれからの人たちを企業が採用すると考えれば、保育園も子どもと触れあいやすい企業内に設置するのがいちばんですよね。父親も母親も子どもを背負いながら働いている。その人の価値や魅力を企業はきちんと評価すべきです。

―― - 保育園のような子どものケアの充実も大切ですが、一方で親たちが長時間労働のため、なかなか子どもと接する時間を持てないという現実があります。労働時間の短縮やフレキシブルな勤務形態、あるいは休暇を取りやすくするなど労働条件の整備が、子どもの健やかな育ちに結びついていくのではないでしょうか。

(上川)おっしゃるとおりで、例えば育児休業制度も制度があるにもかかわらず、なかなか取れない状況では仕方がない。使えるようにさまざまな環境を整え、若い世代を応援していきたいと思います。アンケートでも「子どもと一緒にいる時間を十分とりたい」という意見が強く出ていました。今後イギリスなど取り組みの優れた国を視察して、政策を考えていきたいと思っています。

 

孤独な子育てに悩む専業主婦

―― - かたや、孤独な子育てに悩む若い母親たちの姿があります。

(上川)そうですね。私はいま食育で、幼稚園の子どもたちを持つ親たちと接する機会があるんですが、「子どもが幼稚園に行っている時間が、唯一自由になる時間だ」と話すんです。その時間にコンピュータや英会話を習ったりしている。子育てだけでは満足できないものがあるんじゃないでしょうか。

―― - 子育て中、家庭に閉じ込められて悩む母親も少なくありません。そのイライラが子どもに向かってしまうこともあります。

(上川)やはり母親たちが孤立しないような対策、しかも彼女たちが充実感を持てる機会を増やしていく必要がありますね。「自分の時間を持ちたい」と答えた人が確かに多いんです。母親たちが満たされれば、子どもたちにもプラスに働く。母親が育児責任を背負いすぎないように、家庭内に閉じこもらずに、外で交流を持ってもらわないと、親も子も健全に育たない。

―― - 一方で、母子の孤独な子育ての背景には、地域の子育て力の低下が原因との見方もありますが。

(上川)「地域の子育て力」というと、何かを意識してつくりことになる。公園をつくるとか、場をつくるとか。でも本当はそういうものじゃないと思うんですよ。

―― - 昔、近所のおじさんが「だめだよ、そんなことをしちゃー」と注意してくれたような。

(上川)そうそう、それなの。大人たちに「あなたたち外へ出て遊びなさい」と言われ、ぞろぞろ道路に出れば、そこで自然に遊びができていた。でもその道路はいまは車の道だから遊べないし、「家の中にいなさい」と言わざるを得ない状況がある。

―― - いまは治安の問題もありますし。

(上川)ええ、昔だったら暗くなると、「暗くなったから帰りなさい」と近所のおばさんやおじさんが声をかけてくれた。そういう何気ない触れ合いが地域社会だと思うんですが、それがなくなっている。だからそれを意識的につくらなくちゃいけない。でも、本当につくらなくちゃいけないのか?

―― - そんなことは、国が言うべきことではないですよね。

(上川)「子どもを産め」と国が言うものじゃないのと同じようにね。ですから、そのような地域社会が自然にできていくように、例えば都市の設計や、住宅街の公園のあり方、都市づくりを工夫することによって、地域社会が子ども中心の町づくりをしていくことはできると思うんです。

―― - 最近コモンスペースのある集合住宅とか、保育園と老人施設が一体化した施設がありますね。

(上川)いま特区でね、道路、公園などの公共施設や住宅街での犯罪防止の環境設計を行うとともに、バリアフリー化も充実させる事業をしています。厚生労働省的な子育て支援と同時に、これは国土交通省絡みのことだけれど、町全体を子育てしやすい環境にしていく必要がある。子どもたちが安心して遊べる場所をたくさん作るとか、さまざまな体験ができるプログラムを提供するなど、いろいろできると思うんです。

―― - 新しいコミュニティーをつくり出していくということですね。

(上川)そう、コミュニティー。

―― - 実際、小さな子どもを抱えて町へ出ると、不便なところがいっぱい目につきます。たとえば駅の階段をベビーカーを持ったまま上り下りしなければならなかったり、オムツを替えるトイレがなかったり。

(上川)でも以前と比べるとかなり増えましたよね。新幹線のトイレの中でも子どもが座れる椅子ができたりね。高齢者や障害者のバリアフリーに、子育て中の家族のことをプラスして考えれば、もっとすごいことができると思いますね。

 

子どもを中心とした「子育ち」応援策を

―― - そのほか、政策に盛り込まれる項目には、どのようなものがありますか。

(上川)子どもの妊娠、出産、乳幼児期のいろんな制度に厚みが出てくるように、祝福の意味もこめてベビーボーナス制度の創設を考えています。それから、就学前まで医療費無料化の枠を拡大する。さらに結婚奨励・子育て支援税制の創設。つまり、結婚や出産した年の所得税を非課税にする。

―― - すごいですね。再婚の場合はどうなんでしょう?

(上川)再婚だっていい(笑)。やっぱりね、教育費とか子育て費用のために、皆さん二子目、三子目を躊躇するんですよ。

―― - 確かに望んでいる子どもの数よりも、実際に持つ子どもの数が少ない傾向があり、またその大きな理由として経済的負担が挙げられています。子ども一人当たり大学までやるとしたら、1400万円から2000万円かかると言われていますから、三子いたら大変なことですよね。

(上川)多子家庭になればなるほど、子育て控除ができるようにシステムを変えていけないかと。税制を変えるのは非常に難しいんですが、やっぱり子育て家族を応援していかないといけない。

―― - 一方で、お金がすべてではない気もしますが。昔はみんな貧しかったけれど、結婚もしたし、子どもも産んだ。ベビーボーナスや優遇制度で、果たして結婚・出産する人が増えるでしょうか?

(上川)私もお金がすべてではないと思っています。しかし、予算をつけるということはとても大事だと考えています。いまもっとも大きな予算は社会保障費で、これは高齢者向けと言われている。高齢者には大きな予算がつくけれど、少子化・子育て対策にはつかないと、国はこの問題に重みを感じていないんじゃないか、と皆さん思うわけですよ。だから、国が少子化・子育てに大きな予算をつけようという意思を示すということは、一つのメッセージなんですね。

今回の政策提言で掲げた「子どもは社会の宝であり、幸せの象徴でもあるという意識を大切にする」という基本的な考え方も、決して戦時中のような意味で言っているわけではありません。子どもの幸せを追求し、子どもが育っていく様子を大人たちが目を細めて見守れるような社会を目指しているわけです。子どもがあくまでも主人公。だから親が働いていようといまいと、どんな家族であろうと、子どもが健やかに育っていけるような環境整備をするという発想です。それが私どもの考える子どもを主人公とした「子育ち政策」なんです。

―― - 提言はどのような形で政策化していくのでしょうか?

(上川)党の役員連絡会、政務調査会で報告し、予算化、法案化を目指していきます。党内では、そのほか少子化対策特別委員会などにも報告し、11月の立党大会に向けてさまざまなアクションプログラムを展開していく予定でいます。その間、さらなる対話やヒアリングや海外視察なども行い、「子ども HAPPY プロジェクト」として盛り上げていきたいと考えています。子どもが主人公になれる社会を目指し、大人の気持ち、意識を育てていきたいですね。

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