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かみかわ陽子

論文・対談・投稿・マスコミ

<宏池会 ― -- 政治家30人の提言2003年6月>

 

国民が利用しやすい司法制度の確立を

衆議院議員 上 川  陽 子

わが国はこれまで政治行政改革、地方分権推進、規制改革等に取り組んできた。これら改革の根底に流れているのは、「お上」の統治の下での客体意識から脱却し、社会的責任を負った統治主体として自ら社会の構築に参画することにより、この国に豊かな創造性とエネルギーを取り戻そうとする国民の意志である。現在検討が進められている司法制度改革においては、政府による事前規制の廃止・緩和等に伴って相対的に弱い立場の人が不利益を蒙らないよう、平等に司法サービスを享受できる仕組みを整備しなければならない。その際、日本人の多くがアメリカ型の訴訟社会を望んでいないことを勘案すれば、裁判以外の多様な紛争解決手段を国民に提供することで、トータルの紛争解決機能向上をめざすことが大切である。

現状、個人間の紛争解決に関与する主体には次のようなものがある。

•  裁判官・弁護士・検事で構成される裁判システム

•  隣接法律職種(司法書士、弁理士、税理士)

•  ADR(裁判外紛争解決手段)・・・地方自治体、消費生活センター、労政事務所、交通事故紛争処理センター、国税不服審判所、特許庁、公害等調査委員会等。

•  当事者間の自主的話し合い(生の紛争状態)による解決・・・町の顔役や暴力団による不明朗な示談を含む。

 

日本で特徴的なのは、@〜BとCの間の断絶が大きく、専門知識を有する中立的第三者への相談持込みに敷居が高いことである。こうした現状を踏まえ、国民が利用しやすい司法制度の確立をめざすには以下の点が重要である。

1.司法サービスへのアクセス・ポイント拡充

 

司法ニーズへの受け皿拡充のため、すでに法曹人口の増員が図られているが、さらに裁判所による調停、和解、仲裁サービスの質的・量的向上や、簡裁事件に関する訴訟代理制度の拡充など隣接専門職種の活用も不可欠である。しかし法曹人口が増加しても、国民がどこへ相談すればよいか分からなければ、司法サービスの利便性は向上しない。このためサービスを必要とする国民に対し、総合的な情報提供を行うアクセス・ポイントの充実が必要である。

2.ADR(裁判外紛争解決手段)の強化

 

すでにさまざまなADR組織が中立的立場からトラブルの解決に当たっているが、現状、裁判システムとは必ずしも有機的に繋がっておらず、国民が合理的に解決手段を選択できるシステムになっていない。このため統一ルールの下で紛争解決手段相互の関係を分かりやすいものにすることが必要である。

3.コスト負担の適正化

司法による紛争処理に高額を要することも、司法サービス利用に二の足を踏ませる一因である。このため弁護士費用の透明化・合理化はもとより、利用者のコスト負担軽減のため、簡裁事件に関する訴訟代理制度や裁判費用負担力のない国民に対する法律扶助制度、ADR機能等の強化を図るほか、弁護士費用の敗訴者負担原則の再検討が求められる。さらに司法サービス充実に伴う社会的コストをすべて国が負担するのではなく、受益者負担の観点から経済界等に負担を求めることも検討に値しよう。

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