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かみかわ陽子

陽子日誌

 

対談:上川陽子x澤木久雄(SBS放送)

『日本の、静岡の、上川陽子の存在感を示す時。』

 

5年前の初当選以来、衆議院議員として永田町と静岡市を走り回る。若手政策通として自民党から厚い信頼を勝ち獲り、数多くの重要法案の成立に尽力する上川陽子。今年は自民党女性局長として結党 50周年記念事業の準備にも余念がない。そんな上川陽子が、国政活動と政治信条について、静岡屈指の時事通でもあるSBS静岡放送の澤木久雄氏と本音で語り合った。

 

若手政策通として存在感を示す

(澤木) 衆議院議員として2期目を迎え、自民党の若手政策通として連日飛び回っておられるそうですね。ちなみに国会会期中というのはどんなスケジュールで動くのですか?

(上川) だいたい静岡発6時22分の新幹線に飛び乗り、自民党の各部会を朝8時から掛け持ちで回ります。火曜と金曜は夕方6時ぐらいまでびっちり衆議院の委員会です。所属する厚生労働委員会では、食育基本法など重要法案の取りまとめに尽力しました。民主党の反対で苦労しましたけど…。 (苦笑)。

 夜もいろいろな会合に出席します。先日はGIF構想(グローバル・インフラストラクチャー・ファンド)といって、軍事以外の平和目的(インフラ整備など)に使うファンドを、東ヒマラヤ地域の水資源開発に投入しようと、駐日インド大使、ネパールの専門家、マサチューセッツ工科大教授ら 15名でセッションしました。

(澤木) 次から次へと違う会合に出席するわけでしょう。肉体的にも精神的にも相当タフじゃなければやっていけないような気がします。いつもどうやって頭の整理をしているのですか?

(上川) とにかくその場でガーッと集中します。そしてすぐに忘れる(笑)。その連続です。私自身、三菱総研時代から「情報収集し政策立案する」というキャリアを積んできました。それが今の上川陽子の強みであり、ウリでもあります。おかげさまで政策づくりの機会を数多くいただき、大いにやりがいを感じています。

政令指定都市・静岡に望むこと。提案したいこと。

(澤木) 政策づくりのプロの目から、政令指定都市となった地元静岡市をどう見ていますか?

(上川) 今、静岡市のみならず全国のあらゆる地方都市で大変革が起きています。これまでの仕組みを壊して新しいものをつくるという大きなうねりです。そのことを自覚しているのといないのでは、大変な差があります。 これからは、中央が地方へ「あれをやれ、これをやれ」と指示をする時代ではなく、地域がやりたいことを国政がバックアップする時代です。都市づくりでも農業政策でも、地方が主張することが、そのまま実現できるのです。こういう障害があるから改正してくれ、こういう新しい制度もつくってくれ、と提案できる。自らの構想力・デザイン力が重要になります。静岡市にはそうした力を十分発揮し、全国自治体のリーダーとなるよう期待しています。

(澤木) ところで静岡市といえば旧清水市との境にあたる東静岡から有度山にかけての地域が注目されていますが、上川さんご自身はどのようなビジョンをお持ちですか?

(上川) この一帯には静岡大学、静岡県立大学、英和学院大学、常葉大学、東海大学と、高等教育機関が5つも集積しています。こんな地域は日本でも珍しいんですよ。私が留学したハーバード大学では、近くにマサチューセッツ工科大学、タフツ大学フレッチャースクール、ボストン大学といった名門校があって、互いに単位交換もでき、トータルとして地域拠点の強みを発揮していました。東静岡地区も地区全体を地域拠点としてアピールすれば、ボストン一帯や西海岸といった海外の地域拠点とグローバルな交流ができるのではないでしょうか。

 日本平は富士山の景勝地として海外の人へも自信を持ってプレゼンテーションできる地区です。この地でサテライト型の大学プログラムを構築し、アジアから知のリーダーを集め、サミットを開催したいですね。アジアサミットでも太平洋サミットでも、どんな名称でもいい。知の集積地だからこそ、大胆にやってみたいと思います。

(澤木) 静岡県立大学にはアジアの研究者や留学生が大勢います。彼らに母国との橋渡しをしてもらえば、シンポジウムや対話集会ぐらいならすぐにできそうですね。

(上川) 政治のネットではなく学術分野のネットワークを、この地から創りたい。澤木さんのようなメディアの方の力も頼りになります。ぜひやりませんか?

地域社会にかけがえのないNPOを「骨太」にする

(澤木) 今、地域を支える力としてNPOが注目されています。

(上川) そのとおり、NPOは今や社会的役割を担う重要な存在です。海外の紛争地域で活動するジャパン・プラットホームのような団体が注目され、NPOやNGOでなければできない役割があるということも広く認知されました。しかし日本では官と民、公と私の中間に位置するいわば「セミパブリック」という考えが昔から弱かった。これからは市民―NPO―行政のトライアングルを強化しなければ地域社会は機能しないといってもいいでしょう。私たちもNPOを骨太にするために毎年のように法改正をし、税制優遇や新たな認証制度を設け、社会的信用力の向上をバックアップしています。

(澤木) 県内のNPO団体を取材すると、理念だけで必死に頑張っていて、実際の運営は厳しいというところが多いようです。彼らの活動を支え、促進する方法はないんでしょうか?

(上川) NPOのような組織は、立ち上げ世代は頑張るものの、後継者をうまく育てないと途中で息切れしてしまいます。志や理念はもちろん大切ですが、組織を維持するためには経営力を付けなくては。これをサポートしようと、企業や団体で長年キャリアを積んでリタイアしたシニア世代が動き出しています。

 NPOの仕事は行政の下請けになっているという声も聞きますが、たとえば民間企業の中にはNPOの活動を支援するファンドを出しているところもあり、NPO本来の力が発揮できるよう仕事をサポートしています。これらをうまく活用してほしいですね。

(澤木) NPOを行政の下請けと思って使ってはいけませんからね。あくまでも三角形を支えあう対等なパートナーです。

(上川) 実際、NPOが提案した都市と農山漁村の対流を促進するしくみに、行政の予算がつけられたケースもあります。都会の子どもたちが2〜3泊でも田舎暮らしを体験すると、見違えたように元気になって帰ってきます。政府の「ヴィジット・キャンペーン」はそこからヒントを得て生まれたんですよ。

 NPOの強みは、コーディネート機能です。行政の区割りを超えて交流したり異なる立場同士を結びつけることを行政は不得意です。これらができる企画提案型の人材を、行政も広く求めています。

「地域のどんな小さな声でも、注文取りにうかがいます」

(澤木) 静岡市民のみなさんに、何を訴えたいですか?

(上川) どんな小さなことでも、あきらめないで声にして出して欲しい。小さな声の集積が政策につながるからです。だからこそ私自身、自分からみなさんのもとへ出向いて“注文取り”をし、政策の芽を発掘しているのです。たとえば昨年の水害では被災地域の皆さんから「救急車のように、緊急時に呼べる救急ポンプ車があるといい」といわれました。調べてみると救急ポンプ車は一県に1台ぐらいしかない。さっそく緊急災害対策に盛り込むことにしました。こういう対策がバックにあれば、地域のみなさんも安心できるし、イザというときにバケツリレーでも何でもして自分たちでできることは自分たちでやろうと思えるようになる。それが地域の力につながるんだと思います。

(澤木) 地域で、自分たちの要望がかなったという例があれば、政治の果たす役割を実感できるでしょう。

(上川)そのためにも、まず私のほうから注文取りをしなければ。たくさん聞かせてくれればくれるほど力になります。こうしたことは官僚にはできないことでしょう?

自民党女性局長の苦労とやりがい

(澤木) ところで自民党では女性局長という要職にも就いておられます。ご苦労のほどはいかがですか?

(上川) 全国に党の女性組織があり、地域あるいは選出議員のカラーというものもあります。中央で何かやろうといっても時間がかかりますね。私のような若輩が「局長です」と言って挨拶しても、「何者?」という顔をされます。最初はとにかく耳をダンボにして聞き役に徹し、徐々に「話のできるヤツだ」と思ってもらえるようになりました。

 今年は自民党結党 50周年記念です。女性局では記念事業として少子化対策を打ち出し、結婚・出産・子育てをテーマにしたアンケート調査を全国で7,711人に実施しました。周囲からは本当にそんなに集まったの?とビックリされましたよ。女性局主催の懇談会を開いたときは、森山真弓さんや山東昭子さんのような先輩がたも顔を出され、出席議員が20人を超えました。みなさん、お忙しいですから、出られる会も優先順位をつけます。誰かが「上川が自民党本部に立てこもって孤軍奮闘しているらしい」と言ってくれたようです。周囲に認めてもらうには、とにかく自分が率先して動かなければダメだと実感しました。

(澤木) その少子化アンケートではどのような意見が集まったのですか?

(上川) どの世代も少子化社会への危機感がありました。出産や子育てを経験している女性は「子どもを持ってよかった」という前向きの意見がほとんどで、日本はまだまだ健全な社会なんだなとホッとしました。

非婚対策として「結婚した年は無税に」を提案したんです。

(澤木) 子育ての価値は確認できても、なぜ少子化に歯止めがかからないのでしょうか?

(上川) 少子化といっても既婚者だけを見れば子どもの数は多いのです。仕事と両立している女性も「子どもと過ごす時間を大切にしたい」という声は圧倒的です。勤め先には育児休業を取りやすくしてほしい、安心して復職できるようにしてほしい。幼稚園や保育園へは、子どもが急に病気になったときなどの緊急のサービスを充実させてほしいという要望が多く寄せられました。また育児の相談相手は友だちか育児雑誌という答えが多いのにも驚きました。情報誌に頼る傾向は強く、育児のマニュアル化が進んでいると痛感しましたね。

昔は、頼れる身内が側にいなくても隣近所の大人たちが相談に乗ってあげたものです。私自身、アメリカに留学していたとき、ホストファミリーの温かさにずいぶん助けられました。地域の大人と子育てママをマッチングさせるしくみを考えるべきだと思います。子どもだけではなく、高齢者の介護ともつながる問題です。困ったときは地域のみんなで助け合う…それが理想です。

(澤木)それがそのまま地域のコミュニティ形成になるわけですね。ところで私の周りにも結婚しない若者が多いのですが、非婚・晩婚も少子化の一因でしょう。この流れをどう見ていますか?

(上川) 若い人は、結婚像というものを頭の中で考えすぎているんじゃないでしょうか。人を好きになって一緒に暮らしたいと思う気持ちって、もっと本能的なことでしょう? マスコミもドラマを作りすぎているような気がします。

(澤木) 私の周りの未婚女性を見ていると、結婚しなくてもそこそこ仕事があり、趣味も持っていて毎日楽しく暮らしている。結婚して夫に振り回されるより、ずっと楽だと思っているんじゃないでしょうか。男のほうは、そこそこ結婚願望はあるようですが、女性に相手にされないみたいで…(苦笑)。もちろん、結婚しない理由は多様化していますが。

(上川) 実は非婚対策として、結婚したらその年の所得税と住民税はタダにしようという案を党にしたんですよ。若い議員はかなり乗り気だったんですが…。

女性の年金問題に取り組みたい。

(澤木) 少子化は年金問題ともからんできます。年金問題は郵政以上に大変じゃないかと思うんですが、上川さんはどういうスタンスですか?

(上川) 根本的な問題を避けて考える人が多いですね。つまり、年金というのは自助と共助がミックスして成り立つものなのに、自助をさておき、国に一方的に面倒を見てもらおう(公助)と考える人が増えている。みなさんのお子さんの給料に依存しているということを自覚されていないのです。今の厚生年金は高度成長期、良い人材を確保し定年までしばりつけるため、老後は年金生活できるということをウリにしてきました。しかし働き方が多様化すれば当然変わらざるをえません。今はちょうど変革の節目です。

(澤木) 共済年金との一元化の問題はいかがですか?

(上川) 地方共済の中でも“持参金”の多いところは、当然、不満を持っています。私学共済のように若い世代がうまく運用しているところなどがその例です。一方、厚生年金、とくに赤字の会社を合併して抱え込んだところなどは本当に大変でしょう。一元化の話を持ち出すだけでも反対する人がいるので、「ちょっと頭の体操をするつもりで…」と低姿勢で切り出したりします(苦笑)。政治のほうから投げかけるにしても、内部で議論している複雑な事情を表に出すときには相当のテクニックが必要になります。

 私自身は、専業主婦やパートタイマーの年金問題など、女性と年金の問題に積極的に取組んでいきたいと思っています。

科学技術立国の強みを生かし、アジアのセンターを目指せ

(澤木) 少し広い視野のお話をうかがいましょう。政治家上川陽子として、これからの日本は過去をどう清算し、どう進むべきとお考えですか?

(上川) これまで日本のアジア外交は、打つべき終止符をきちんと打たないまま次に進もうとしてきました。過去の問題を踏みしめ踏みしめ、きちんと清算すべきだったのに、手ぬるくやるから泥沼にはまる。未来へ前進するにはしっかり踏みしめるべきです。とはいえ、悠長なことを言ってはいられません。国連常任理事国入りの問題を例にとると、中国ばかりでなく、これまで日本が多額のODAで経済支援をしてきたにもかかわらず不支持を表明したインドネシアのような国も現れました。政府にしてみれば援助した国はよもや反対しないだろうと甘く見ていたわけです。これも過去をきちんと踏みしめてこなかったからです。

 自分が議員になってからのこの5年間、日本は外交面で力が落ちたなあと実感します。海外との政治的・人間的チャンネルが細くなったような気がするのです。

(澤木) 上川陽子ならば、どうしますか?

(上川) まず、アジアのセンター機能を日本に持ってきたい。テーマは、日本の知恵や力がなければ進まない先端科学技術―とくに先端医療技術や環境対策です。先日も重粒子線をガン細胞にピンポイントで照射し、他の細胞を痛めずに治療する最先端技術を視察しました。この技術は世界でも日本とフランスの2ヵ国にしかないそうです。科学やナノテクノロジーは、日本がリーダーシップを十分発揮できる分野です。これら分野のアジアにおける中心拠点を国内にたくさん設けることで、外交的にも優位にたつことができます。

 もうひとつは東アジア共同体の形成。今はASEANに主軸が置かれていますが、日本にはまだまだ可能性があります。ASEAN諸国と手をつないで中国を囲むようにしなければ、中国と対等に渡り合うのは難しい。その意味でも韓国とのパートナーシップが重要で、日本―韓国―アメリカの連携をもっと強固にすべきです。

(澤木)アジアにおける日本の存在感が低下しているといわれますが、復元は可能でしょうか?

(上川) 十分可能です。ASEANの中にはタイのように日本との連携に積極的な国もあります。日本が甘いのは、ODAに頼りすぎたからです。お金よりも大切な、人との交流にもっと外交努力を尽くすべきでした。

もっと顔の見える政治家上川陽子へ!

(澤木) 国内についてうかがいます。日本の社会も“勝ち組・負け組”といった分け方をされるようになりましたが、これでいいのでしょうか?

(上川) 資本の論理のもとで、勝ち組・負け組に分けられるのはある意味、機会の平等であり、またグローバル・スタンダードなのかもしれません。しかし地域社会はプロ野球のように、巨人軍だけが独り勝ちという構造では成り立ちません。オール・ジャパンのメジャープレーヤーとローカルプレーヤー地域の中でそれぞれの役割を果たし、互いに支えあって成り立つ、そんな経済社会の仕組みを再構築すべきだと思っています。そこでキーワードになるのが「地産地消」というわけです。

 地域の中で一体感を持ちながら人が活動するには、 70万人という人口は少し多すぎる。20〜30万人の区単位ぐらいが適正かと思います。

(澤木) この前、読んだ本に「ファストフード化する日本」という一節がありました。今、地方都市はどこも駅前がさびれ、郊外に大型店ができるというように、みな同じ顔になっています。悪い意味で均一化が進んでいるように思えますが…。

(上川) 地域性を取り戻すためには、まず農地の宅地並課税や中心市街地活性化法、大店法といった法律を見直す必要があるでしょう。それ以前に、地方都市にビジョンが足りない。市街地はハレの場として賑わいを取り戻したい、周辺郊外は緑豊かな良質の居住空間として整備したいというように都市のデザインを再構築すべきです。

(澤木) 実際には夢物語ではないかと悲観的になってしまうんですが…。

(上川) 青森県のある都市では、都市計画を見直し、インナーとアウターのデザインを再構築し、中心地に思いきって住宅地を整備しようとしています。こうした新しい試みが全国各地で始まっているんですよ。

(澤木) 景観を含め、本当の意味で暮らしやすいまちづくりが実現できたら素晴らしいし、静岡市はモデルになり得る要素を持っていると思います。

 最後になりますが、私個人としては上川陽子にもっと顔の見える政治家になってほしいと思っています。これだけの政策能力を持ち、主婦業と育児経験を持つ女性議員は多くありません。メディアに出るばかりが能ではないと思いますが、有権者の目に多く触れる努力も必要でしょう。

(上川) 政治活動を始め、10年で何か一つやり遂げねばと思ってきました。気がついてみるともう5年が経っています。ここでひとつ存在感をしっかりと示す時期に来ているなと自覚しています。

(澤木) その気概を持ち続けてください。期待しています。

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