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かみかわ陽子

活動報告国会活動

 

全国犯罪被害者支援フォーラム

サポート拡充訴え--周囲の言動で2次被害

2007年10月1日付 静岡新聞

犯罪被害者への支援のあり方について意見を交わす「全国犯罪被害者支援フォーラム」(主催:全国被害者支援ネットワーク)が30日、東京都内で開かれた。パネルディスカッションで、被害者や支援団体の担当者らが、周囲の理解不足による二次被害の実態を報告。地域でのサポート体制の拡充を訴えた。

上川陽子少子化・男女共同参画担当相も講演し、刑事裁判への被害者参加制度が来年秋にも始まるのに合わせ、被害者への公的弁護制度の実現を目指すとした。 フォーラムのテーマは「(犯罪被害者等)基本計画をどのように実現するか」。被害者や自治体、警察の関係者ら約430人が出席した。

パネルディスカッションで、娘を交際相手に殺害された宮城県の関本圭子さんは「民事訴訟判決後、知人から『賠償金が出るからいいとしないと』と言われ、言葉が出なかった。被害者の立場を知ってほしい」と強調。夫を強盗に殺害された沖縄県の川満由美さんも「被害者は事件の日から時間が止まったまま。周囲と温度差がある」とし、マスコミによる二次被害の問題も指摘した。

被害者支援都民センターの阿久津照美相談員は、「『頑張って』の言葉すら被害者を傷つける。支援策は拡充されたが、周囲からの二次被害は変わらない」と説明。福祉や医療、警察の関係者らと連携した地域での取り組みの重要性を強調した。

精神科医の飛鳥井望医師は講演で、事件から十年後に精神的な疾患が出てくるケースもあるとして、長期的な支援の必要性を指摘した。

 

 

(講演全文)

「犯罪被害者支援の法制化に向けて」

--全国犯罪被害者支援フォーラム2007--

                内閣府特命担当大臣・衆議院議員 上 川 陽 子

1.はじめに

衆議院議員の上川陽子でございます。このたびの組閣において、内閣府特命担当大臣を拝命いたしました。本日は、発言の機会をいただき、感謝申し上げる次第でございます。

 本日のフォーラムの主催者でありますNPO法人「全国被害者支援ネットワーク」におかれましては、平素より犯罪被害者支援の第一線において、全国の関係団体のまとめ役として、また関係機関や政府との橋渡しを行う中核として、大変なご苦労をされておられることは、私もよく存じ上げておりまして、関係者の皆様のご努力とご熱意に対し、改めて深く敬意を表したいと存じます。

 ご案内のとおり、去る6月20日、先の通常国会において、「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(これからは、略して「犯罪被害者刑訴法」と申し上げます。)が可決成立いたしました。

 これは、60年余の歴史を有する刑事訴訟法を改正して、被害者参加制度が設けられ、被害者の方々が、法廷(バー)の中に入る権利を認められたというものでありますが、これまでの犯罪被害者支援の歴史の中で、まさに画期的な出来事であると考えております。

そして、今日、犯罪被害者等基本計画の「重点課題に係る具体的施策」の中のいくつかの課題を検討するために、犯罪被害者等施策推進会議の下部機関として内閣府に設置されました3つの検討会において、最終取りまとめ案がほぼ出揃い、今後、専門委員等会議及び犯罪被害者等施策推進会議における検討を経て、本年12月を目途に、最終決定される運びとなっています。3つの検討会というのは「経済的支援に関する検討会」、「支援のための連携に関する検討会」、「民間団体への援助に関する検討会」でございます。

 このように、犯罪被害者支援の取り組みが、大きな大きな一歩を踏み出したこの時期に、皆様方にこうして親しくお話をさせていただく機会を与えていただきましたことをとても光栄に存じております。

 短期間でここまで進むことができたのは、犯罪の被害に遭われた方々が勇気をもって声をあげてくださったからであり、また、本日お集まりの多くの犯罪被害者やご遺族の皆様方、さらに、支援に携わってこられた方々等のご努力の賜物であることはいうまでもないところでございます。

 皆様方のこれまでの犯罪被害者支援の取り組みに、改めて敬意と謝意を表したいと存じます。

 私は、平成16年12月に、議員立法で「犯罪被害者等基本法」を作り上げた当初から、犯罪被害者の問題に関わらせていただきました。先ほどご紹介をいただきましたが、自由民主党の『犯罪被害者保護・救済特別委員会』の事務局長を仰せつかり、また、司法制度調査会基本法制小委員会の『「犯罪被害者等基本計画」の着実な推進を図るプロジェクトチーム』の座長を務めさせていただきました。

 このようにして、自由民主党において、節目節目でこの問題に関わって参りました。今回の犯罪被害者刑訴法についても、当初から関係の皆様からヒアリングを実施させていただくなどして、早期の制度実現に力を注いで参りました。

 そして、今回の法案を審議する衆議院法務委員会の理事として、政府案に対する質問に立ち、与党による修正案の提出者として答弁に立ち、さらには、附帯決議の提出者となるなど、法案審理に深く関わらせていただきました。これも、犯罪被害者問題に長く関わってきたことの「ご縁」と申しますか、何か運命的なものを感じております。

 

2.犯罪被害者支援と私

 ここで、私の犯罪被害者問題に関する思いの一端を、申し上げたいと思います。

 改めていうまでもないことでございますが、犯罪被害に遭われた方やそのご家族の悲痛な叫び、嘆き、悲しみ、無念な思いは、どんな時代であっても深く、強いものがございます。そして残念なことに、我が国ではこの問題が長い間、正面から取り上げられずに、犯罪被害者の「泣き寝入り」「犯罪被害者の二重・三重の被害」という事態が常態化していました。

 この点については、交通死亡事故の刑事裁判で被告人に実刑判決を言い渡した裁判官が「被害者の命の重みは、駅前で配られるポケットティッシュのように軽い。命の尊さに法が無慈悲であってはならない。」と、現行制度の限界を法廷で述べたという報道に、端的に表れています。

 これまで刑事裁判は専ら裁判官そして検察官、弁護人、被告人により進められており、被害者はいわば証拠品として扱われているにすぎませんでした。被害者やそのご遺族の皆様は最も切実な利害関係を有する事件の当事者であるにもかかわらず、刑事裁判において、疑問に思ったことを被告人に直接問いただすこともできない、名誉を傷つけられても抗弁することもできない、法廷に着席することもできない、ひたすら傍聴席でみずからが被害に遭った事件の裁判の推移や結果をじっと黙って耐えて見守ることしかできませんでした。

 真実を知りたい、被害者やそのご遺族の方々の声は悲痛であります。真実を知ることによって、初めて被害から立ち直るきっかけをつかむことができます。しかし、その願いがかなわず、刑事手続の中で被害者の皆様は新たな二次被害を受けて苦しんでこられました。被害者の皆様の中には、真実を知るためにわざわざ民事裁判を起こす方もいらっしゃいました。

 私も一連の司法制度改革の中で、保岡元法務大臣や塩崎前官房長官などの諸先輩の先生方とともに、日本の新しい司法のグランドデザインを描いていく中で、この犯罪被害者の問題に初めて出会い、この現状に深い衝撃と自分の不勉強さを思い知るとともに、国として、政治として、被害者やご遺族の方々への支援を充実させなければならない、という強い気持ちに駆り立てられたのが私の取り組みの原点でございます。

 最近読ませていただいたジュリストの犯罪被害者特集号における座談会において、「全国犯罪被害者の会(あすの会)」の高橋正人先生がお触れになっていましたが、平成16年2月、私はあすの会の事務所にお招きいただき、あまりにも悲惨な被害者の皆様の実情をお聞きし、口もきけなくなる程のショックを受けました。このときの経験が、今日に至るまで、私を突き動かす原動力となっています。

 残念ながら犯罪は依然として後を絶ちません。社会には、犯罪によりご家族を亡くされたり、犯罪の被害に遭われて苦しんでおられる方々が沢山いらっしゃいます。そのような方々の悲痛な叫びや無念な思いに対して、私たちは社会全体で誠実に応えていかなければなりません。犯罪被害者問題は他人事ではありません。いつでも誰でも、思いがけず犯罪の被害に遭うかもしれません。この問題は社会全体で考えるべき問題なのです。被害者に対する支援は、国や地方自治体と民間とが一緒に協力しあって行われなければなりません。それと同時に、その支援は社会全体による温かみのあるものとしなければならないと思っております。

  犯罪被害者支援は、平成16年の犯罪被害者等基本法の成立、一昨年の犯罪被害者等基本計画の策定と、一歩一歩着実に進展してきました。具体的な支援活動についても、「全国犯罪被害者の会(あすの会)」を始め、全国被害者支援ネットワークの皆様、民間支援団体の方々のご努力により、被害者のニーズに応えた厚みのあるものになってきたと思います。また、基本法が制定され、基本計画に具体的な施策が盛り込まれたことから、国や地方自治体も被害者支援に積極的に取り組み始めました。

  そして、今回の犯罪被害者刑訴法の制定、内閣府の3つの検討会における経済的支援等についての取りまとめなど、多くの実を結んでおります。

 しかしながら、国の取り組みはまだまだ十分なものとは思えません。民間支援団体の活動も、財政面の問題などもあって残念ながら限界があります。民間支援団体に対する国の後押しも十分ではありませんので、私ども自由民主党としては、これまで犯罪被害者の皆様や被害者支援団体に対する総合的な支援のあり方を議論し検討して参りました。政府においても、自由民主党においても、様々と知恵を出し合って、どのような制度が望ましいのかを検討して参りましたし、これからもそのような努力を続けて参りたいと考えております。

 私どもは、被害者の方々の目線に立った、温かみのある、継続的な支援が可能になるような制度、体制を作りたいと考えています。そして何よりも被害者の皆様方からの生の声を十分にお聴きして、それを生かした制度にすることが大事であると思っています。これまでの成果に満足することなく、さらに皆様方からのご意見を頂戴しながら、充実した施策が実施できるよう取り組んで参りたいと考えております。

 

3.犯罪被害者刑訴法の成立について

@ 法案の意義と立案経過

 今回の犯罪被害者刑訴法については、その内容について、賛否も含め関係者の方々の間でも、様々なご意見がありました。

 犯罪被害者問題に関わってきた立場上、私も今回の立法においても様々な機会に多くの皆様からご意見を頂戴いたしました。自由民主党においても、「司法制度調査会」と「犯罪被害者保護・救済特別委員会」の合同会議を継続的に開催し、政府の検討状況をフォローしながら、被害者や支援団体の方々にもご参加いただき、オープンな場所で意見を頂戴し、そして交換をして参りました。またこれ以外の機会にも、犯罪被害者やそのご遺族または犯罪被害者の支援を行う皆様からはできるだけ直接お話を伺うようにして参りました。

  しかし、犯罪被害者対策は、これまでも常にそうであったように、まず「最初の一歩」を踏み出す、しかも「できるだけ早く」踏み出すことが大事だと思い、自分なりに全力でこの法律の早期成立に努力して参りました。

 改めて今回の犯罪被害者刑訴法の中身を見ますと、その根底にある問題意識は皆様に共通のものと思います。すなわち、犯罪被害者やその遺族の方々は事件の最大の利害関係人でありながら、これまでの法律では刑事裁判手続から排除され、損害賠償請求訴訟を提起するには多大の費用、労力、時間を要してきたという重大な制度上の欠陥です。

 この問題は平成16年12月に議員立法で犯罪被害者等基本法を作ったときから指摘されており、基本法では犯罪被害者等の刑事手続への関与の拡充 (18条)及び損害賠償請求と刑事手続との有機的関連(12条)を図って犯罪被害者等の権利の保護を図ることを求めています。これを受けて策定されたのが、被害者参加制度と損害賠償命令制度等を含む今回の犯罪被害者刑訴法になるわけです。

 この法律が施行されますと、被害者が法廷の中で検察官と密接なコミュニケーションをとりつつ、被告人に対する質問、情状証人の供述の証明力を争うための尋問、事実又は法律の適用についての意見陳述(論告・求刑)などの権限が認められることになります。これは「刑事司法は犯罪被害者等のためにもある」とする犯罪被害者等基本計画の精神にも合致し、犯罪被害者等の尊厳を尊重するものです。

 被害者参加は被害者の負担増大を招くというご意見もありましたが、参加は強制ではありませんし、弁護士さんの助けを受けることなどによって克服できると考えております。

 この法律の中には、刑訴法316条の35の「被害者参加人が、検察官の権限行使に関して意見を述べることができ、検察官が必要に応じて、権限の行使、不行使について説明しなければならない。」旨の規定が置かれております。これは、専門家の方々も指摘されているとおり、検察官と被害者が密接なコミュニケーションを図る必要性にかんがみ、検察官によるしっかりした説明を義務付けているという意味でとても重要な意義があると考えております。

 これによって被害者の意見を手続の中に取り入れていくことが法的に担保されているわけであり、被害者はもはや黙って見守るだけの証拠品の如き存在ではないことが明らかにされているのです。

 またこの法律の損害賠償命令制度は、一定の故意犯について刑事判決を言い渡した裁判官が既に取り調べた立証事実を利用して短期間の審理で損害の賠償を命ずる制度で、被害者の負担は大幅に改善される点で犯罪被害者の方々の長年の念願であったものが実現すると思っております。

 皆様ご承知のとおり、今回の犯罪被害者刑訴法の原案を審議した法務省の法制審議会「刑事法(犯罪被害者関係)部会」には、岡村先生をはじめ、犯罪被害者を守るためにこれまで現場で汗を流してこられた皆様が委員として審議に直接加わり、その意見が直接反映されて参りました。もちろん部会として意見を取りまとめるために一部修正を余儀なくされた部分もございましたが、これまで伝統的に学者や省庁の専門家のみで議論が進められがちだった法制審議会において、このように現場で携わってきた方々の貴重な意見が反映されたことは、議論の透明性の確保という点からも大変重要であったと思います。

 言うまでもありませんが、これまでの被害者支援の取り組みは被害者の皆様の生の声、そしてその熱意が実を結んだものでありまして、基本法の制定や基本計画の策定はいずれも被害者の皆様のご努力の賜物にほかなりません。ですから、何よりも皆様の声を聞きながら議論をすることが重要だと考えられて、今回の法案もそういった被害者の声を基にして十分議論が積み上げられ策定されたものであることが重く受け止められました。

A 国会における審議経過等

 犯罪被害者刑訴法は、衆議院法務委員会において4日間にわたる質疑と1日の参考人質疑、参議院法務委員会において3日間にわたる質疑と1日の参考人質疑という慎重審議を経て成立に至りました。様々な論点についての議論がありました。たとえば

○被害者参加制度の対象犯罪が限定されている理由

○被害者参加人に期待される役割

○被害者参加制度の導入が刑事訴訟の基本構造に及ぼす影響

○被害者参加制度が裁判員制度に及ぼす影響

○被害者参加人に対する公的弁護制度を導入する必要性

などに質問が集中しました。

 既に申し上げたとおり、私は衆議院法務委員会の理事としてかかわらせていただきながら、自由民主党を代表して政府案に対して質問するだけでなく、審議の経過、とりわけ被害者参加制度が裁判員制度とほぼ同時期に施行されることに示された様々な懸念や被害者参加人の公的弁護制度を求める声などを踏まえ、自民・公明両党による修正案を立案して衆議院法務委員会に提出し、公明党の大口善徳先生とともにその答弁にも立ちました。

 修正案の内容は、法律案の附則に@「政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」旨の規定(附則9条)、A「政府は、被害者参加人の委託を受けた弁護士の役割の重要性にかんがみ、資力の乏しい被害者参加人も弁護士の法的援助を受けられるようにするため、必要な施策を講ずるよう努めるものとする」旨の規定(附則10条)を加えるものでした。

 法務委員会における採決に当たっては、衆参いずれにおいても附帯決議がなされ、制度の十分な周知、被告人の権利が保障される公正な運用、犯罪被害者等の経済的支援及び被害回復のための施策の充実等が政府及び最高裁判所に対し求められました。

 前の通常国会では法務委員会における与野党の対立色が極めて濃く、少年法改正案など野党欠席のまま与党のみで採決に至るケースがありましたが、犯罪被害者刑訴法案については、与野党ともに強行採決を避け、円満かつ慎重に審議すべきという認識で一致しておりましたので、中身の濃い議論が行われたことが印象的でした。

 単に法案を通し成立させるだけでなく、国会審議を通じて犯罪被害者に対する支援に関する問題点について議論を深め、今後の支援や制度のあり方に関する方向性を具体的に明確にすることに役立ったのではないかと自負しております。

 これも皆様方が国会における議論を熱心に見守ってくださったことの賜物と感謝いたしております。

 

4.残された課題について

@ 検討会の取りまとめについて

 被害者支援の問題は損害賠償命令や訴訟への参加など刑事司法制度に関する問題にとどまりません。被害者やご遺族への補償の拡充や支援団体への援助などの経済的支援に関する問題、支援団体相互のネットワークや国・地方自治体の体制整備など支援体制に関する問題などのほか、マスコミによる過剰取材や警察の匿名・実名発表に関する問題など、実に様々な課題がございます。また、犯罪被害者支援に関する問題の難しさは、被害の内容がお一人お一人で異なり、支援のあり方も各被害者の実情により異なるという点にあります。必要となる支援も、経済的な支援、精神的なケア、情報提供、二次被害の防止、再被害に対する不安など多様です。しかも、同じ被害者であっても被害直後の支援と一定の時間が経った後の支援では異なります。

 そのため、このような被害者の視点を踏まえたそれぞれのニーズにあったきめ細かい対応が求められるのであり、これに的確に対応できる人的物的な体制・制度が必要になります。また、ご家族を亡くされたり、被害に苦しんだ方々にとっては支援がこれで十分ということはあり得ないと思いますが、私たちはそのことを十分理解し、温かみのある、途切れのない支援を続けることが必要だと思います。そのようなことを肝に銘じてしっかり検討をしていきたいと思います。

 そのような観点から、犯罪被害者等に対する経済的支援、支援のための連携、民間団体への援助といった犯罪被害者等基本計画の中の残された課題については、政府において昨年4月から犯罪被害者等施策推進会議の下に設置した3つの検討会で検討が進められてきました。

 その内容について簡単に申し上げますと、経済的支援に関する検討会では

○犯罪被害者給付金の最高額を自賠責並みの金額に近づけ、最低額も引き上げるなど、犯罪被害者等に対する給付の抜本的な拡充

○公的給付から漏れるものの、何らの支援もせず放置すれば、基本法の趣旨を全うできない犯罪被害者等に対する民間浄財の基金による支援

○深刻な精神的被害を受けた犯罪被害者等に対するカウンセリングについての配慮等

○被害者参加制度に伴う公費による弁護士選任に向けての検討

などが取り上げられています。

 支援のための連携に関する検討会では

○被害者支援ハンドブックの作成・備付、犯罪被害申告票の作成など関係機関・団体の連携ネットワークの充実・強化

○全国被害者支援ネットワークによる研修カリキュラムの作成・認定制度の実施、国による研修カリキュラムモデル案の作成、支援全体をマネージメントするコーディネーターの研修・育成など、民間の団体で支援活動を行う者の養成・研修

などが取り上げられています。

 民間団体への援助に関する検討会では

○援助対象となる事務の範囲について、事業費(特に犯罪被害者等に直接支援サービスを提供する活動)の援助等、事業を適切に推進できるような援助について検討することが適当であること

○援助の対象となる団体の範囲について、被援助事業を適切かつ確実に実施するために必要な一定の体制がとられている団体とすること

などの基本的考え方の下に、地方公共団体の取り組みの促進や民間資金の活用などの援助拡充策が提言されています。

 中間取りまとめの段階では事業費についてしか援助しないかのような表現になっていましたが、全国被害者支援ネットワークを始めとする関係民間団体においては、一般管理費の部分における負担も大きく、これを特定の事業に結びつく部分とそうでない部分に分けることが相当に難しいという事情を抱えておられることなどを考慮させていただき、私からも意見を申し上げ、「事業を適切に推進できるような援助」という含みを残した表現にしていただきました。

それぞれの検討会においては、中間取りまとめがパブリックコメントに付され、その結果を踏まえて最終取りまとめを行っているものであり、私ども自由民主党は関係者からのヒアリング結果等を踏まえ、本6月の中間取りまとめの段階において、政務調査会、司法制度調査会、犯罪被害者保護・救済特別委員会の連名による申入れを政府に対し行いました。それは各検討会の最終取りまとめ案に反映されています。

 各検討会における最終取りまとめ案はほぼ出揃っており、今後、専門委員等会議及び犯罪被害者等施策推進会議における検討を経て、本年12月を目途に最終決定される運びとなっています。私どもが提出した「申入れ」の内容は次の6点です。

1.犯罪被害者に対する経済的支援を大幅に強化し、特に直接支給される給付金の水準を抜本的に見直して十二分に手厚いものとすること

2.犯罪被害者への切れ目のない支援には被害者支援団体が重要な役割を果たすことから、被害者支援団体が安定的に運営・活動できるよう財政面での必要かつ安定的な支援を確保すること

3.精神的被害に対するきめ細やかな精神ケアを充実させるなど、犯罪被害特有かつ多様な支援ニーズに対応した施策に十分に取り組むこと

4.司法手続において、適切・迅速に権利を実現し、求められる役割を十全に果たせるよう、被害者に対する公的弁護制度を早急に導入し、そのための体制整備を直ちに進めるなど、十分な環境を整えること

5.犯罪被害者支援に対する地方自治体の積極的な取り組みを促すこと

6.犯罪被害者に対する総合支援の司令塔となる内閣府においては、残された諸課題への取り組みに十分なリーダーシップを発揮し、自民党と十分に連携を図りつつ、更なる支援の充実に十分な役割を果たすこと

A 被害者参加人のための公費による弁護士の選任について

これは検討会の取りまとめの中で、私が最も注目しているものでございます。犯罪被害者刑訴法の附則において「政府は、被害者参加人の委託を受けた弁護士の役割の重要性にかんがみ、資力の乏しい被害者参加人も弁護士の法的援助を受けられるようにするため、必要な施策を講ずるよう努めるものとする」とされたことから、経済的支援に関する検討会の最終取りまとめ案において、「犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度」に伴う公費による弁護士選任について、できるだけ早期の制度導入に向けた検討を行うべきである、となっています。

 なお、上記制度の運用の際、民事法律扶助ないし犯罪被害者等法律援助事業との適切な連携が図られるよう配意すべきであります。また「損害賠償に関し刑事手続の成果を利用する制度」に伴う公費による弁護士選任は、基本的に民事に係る問題であり、法律扶助の枠組みの中で対応すべきとされています。

 一般に、法的知識のない被害者参加人にとって、裁判の状況を正しく理解し、検察官とコミュニケーションを図りつつ適切に刑事裁判に参加していくことは容易なことではありません。ですから、犯罪被害者の方々が法的な知識を有する弁護士の援助を十分に受けられるようにすることがとても大切であり、貧困により弁護士を頼めないために裁判に参加できないということになれば、折角の被害者参加制度が絵に描いた餅になってしまいます。そのために被害者刑訴法案の与党修正が行われ、附則10条が加えられました。

 私は来年秋にも予想される被害者参加制度の施行に合わせて、同時に公費による弁護士選任を開始することを目指すべきであると考えています。これから法務省による法制化に向けた作業が行われると思いますし、参加制度の施行に間に合わせるように、私ども自由民主党としてもしっかりと見守っていきたいと思います。そして、制度設計についても重大な関心を払っていかなければならないと考えています。

 

5.終わりに

 最後になりましたが、近時の犯罪被害者支援をめぐる全体の状況を見渡してみますと、私は、これまで犯罪被害者の方々がしっかりと声を上げ続けていただいたことがようやく効を奏してきた、犯罪被害者の皆様が果たしてきた役割を社会全体が正当に認知し、社会の側が大きく変わり始めたように感じます。

 最近の新聞報道(9月20日付け日経新聞夕刊)で目にしたことですが、いじめや外部の侵入者による事件など学校で起きる有事への対応に当たる専門家チーム作りを文部科学省が後押しするということで、警察官のOBが小中学校において犯罪や犯罪被害者のことを教えたりするようになるのだそうです。これはすごいことだと思います。これまで、このような犯罪被害者に関係する教育は、せいぜい刑務所の中で、犯罪者の更生に必要な限度で行われるにすぎなかったように思います。それが小中学校等における教育の現場で、単発の取り組みではなく恒常的なものとして行われるということは、犯罪被害者という存在が、内にこもるのではなく堂々と社会に出て行き、必要な発信をしっかりとしていただき、これを社会が受け止めて変わっていくという新しい時代の到来を告げるものであると思われます。

都道府県や市町村など地方公共団体における被害者支援の取り組みも、これまでの警察を中心とする個別の支援か、総合的な情報提供や被害者支援に関与する人達の養成や研修の面など、必要な関係機関・団体を網羅した総合的な支援ネットワークによる支援へとステージが変わってきており、より積極的な広がりが見られるようになったと思っております。

現在、様々な関係団体において、全国のそれぞれの地域の中で創意工夫の下に充実した研修が行われ、優秀な被害者支援相談員が多数輩出されています。

 本年12月ころからは、更生保護の分野でも被害者支援の取り組みが開始され、全国の保護観察所において、保護司の中から加害者の処遇に関与せず、被害者支援のみに関与する「犯罪被害者担当保護司」を指名し、加害者の状況を被害者に伝達したり、被害者の思いを聴取して加害者に伝えるなどの取り組みを行うことになるそうです。つい最近、東京と大阪の2か所で全国の犯罪被害者担当保護司候補者の方々の研修が行われ、スキルを身につけた保護司の方々が地元に戻って行かれたと聞いています。

これまでも、保護司の方々が関係団体における研修を受け、被害者支援相談員としてのスキルを身に付けて、保護司の仕事に活かしておられるケースがあったと聞いています。さらに被害者支援の様々な取り組みが、広がりと奥行きを見せており、これまで関係者の皆様が撒いてこられた被害者支援の種が、ようやく全国の地域地域で芽吹き始めているように思われます。

私はこのような状況についてとても力強く感じておりますし、社会の各分野における、様々な人々による様々な被害者支援の取り組みが相乗効果により全体に一層拍車がかかることを期待しています。

 しかし、犯罪被害者対策はいまだ発展途上であり、本当に成果を実感できるまでは、総合的な支援が十分に実現されたとはいえない状況にありますし、地域によってもその芽には違いがあります。ぜひともこれまでのように皆さんのお力をお借りし、これまで以上に色々な課題について力を合わせて取り組んでいくことを、この場でお誓い申し上げたいと思います。

 国民お一人お一人に犯罪被害者の支援の意義や重要性を理解していただき、一層のご協力をいただきたいと思いますし、被害者の方々を始め関係者の皆様には、現状に満足することなくこれまで以上にしっかりとした声をあげていただかなければいけないと思っております。

 私も、政治主導でしっかりと議論を進めていくこの姿勢はこれまで以上にしっかりともっていきたいと思います。今後とも、皆様のお力をお借りしながら、被害者の方々の悩みやお気持ちを十分理解し、その要望を真摯に受け止め、「温かみのある社会」を目指し、被害者支援のために精一杯取り組んで参りたいと思っております。

 犯罪被害者刑訴法の成立など、被害者支援のための大きな一歩を踏み出すことができましたことを、またこれから 3つの検討会で12月に向けての施策がこれから様々な地域で花開くことを目標にしながら、今後とも皆様とともに力を合わせてがんばって参りたいと存じます。 ご清聴いただき、ありがとうございました。

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