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かみかわ陽子

活動報告国会活動

[国会報告] 小泉総理に生保利率引下げ問題で緊急質問 

2003年6月10日

小泉総理に生保利率引下げ問題で緊急質問財務金融委員会では6月10日、生命保険の「予定利率引下げ」をめぐる審議がヤマ場を迎え、小泉総理に出席を求めました。私はただ一人与党を代表し、総理に緊急質問を行いました。

生命保険会社は今、運用利回りと契約者に約束した予定利率の逆転現象、いわゆる逆ザヤに経営を脅かされています。そうした状況の下、政府は保険会社の破綻を防止するため、契約者に約束した予定利率を引下げることを認める保険業法の改正を提案しました。こうした契約条件の変更を国が認めることは、契約社会の基本原則を揺るがすばかりでなく、生命保険という国民の生活設計そのものを危うくするものであり、本来あってはならないことです。このため当委員会では、これまで政府の方針に対し、与野党を問わず厳しい批判や反対意見が寄せられました。そうした緊迫した状況の中で今回、小泉首相自身が当委員会に出席し、直接理解を求めることになりました。

私は与党議員でありながら、国民の気持ちを代弁し、総理の国民に対する率直な発言をできるだけ引き出すため、以下のような野党議員とも見まがうばかりの厳しい質問をぶつけました。

質問1:はたして総理は国民の理解が得られるとお考えか。

(上川)日本では世帯あたりの生命保険加入率が9割を超え、国民の金融資産のうち約4分の1が生命保険です。仮に今回の法律改正が実現すれば、保険金が大幅に削減される事態も予想され、国民の多くが不利益を蒙ることになります。こうしたことから、生保の予定利率に対する国民の関心は強く、よほどのことがない限り、その引き下げについて理解を得ることは困難です。

現に平成13年にこの問題が金融審議会で取り上げられ、国民からのパブリックコメントを集約した結果、圧倒的多数の反対で法制化を断念した経緯があります。当時、金融審議会第二部会長であった福井現日銀総裁は、パブリックコメントの結果を踏まえ、「生保各社のディスクロージャー(経営内容の開示)とガバナンス(経営規律)が不足しているため、これらの点について契約者、国民の理解が必要」だと総括し、生命保険会社の透明性ならびに経営規律の向上を強く求めました。
 さて、今回の法案提出に際しては、前回のようなパブリックコメントを求めないだけでなく、金融審議会での議論も十分尽くされてはいないようです。総理は今回の法改正による生保の予定利率引下げについて、国民の理解を得ることが出来るとお考えでしょうか。また、生命保険会社が経営努力の結果、すでにそうした要件を満たしているとお考えでしょうか。

(小泉)上川議員の本日の質問、国民の理解が得られるかどうかということだが、今回、私は生保、あるいは契約者に対して、選択肢を広げたということであり、これに対し国民の理解が得られるよう今後も努力していきたい。

現在の世の中、予期せぬ出来事が非常に多い。超低金利、物価の下落、大蔵委員会で苦労していた頃を思うと、まさか物価が下がる時期が来るとは思ってもみなかった。予期せぬ事態が起こった時の準備が必要だ。予定していた利率でうまくいかない時には、契約者を保護する観点からも、必要な選択肢をつくる。「予期し得ない変動が起こった時にどう対応するか」という法案である。ご理解頂き、今後も努力したい。

質問2:敢えて引き下げを認める総理の覚悟を問う。

(上川)総理はこれまで「民間に出来ることは民間に」の姿勢を基本に、民間の主体性を尊重しつつ、規制緩和を経済発展の起爆剤として活用する手法を取って来られました。そうした総理が、生保の予定利率については業界保護に腐心しておられる様にも見え、多少の違和感を感じないわけではありません。「民」対「民」の、契約に基づく正当な経済行為に対し、その一方の肩を持つような形で国が事後的に介入することについては国民の理解を得ることは難しいようにも思います。ましてそれを政府の責任が曖昧な「私的自治」によって処理しようという仕組みは、先進国のどこにも見当たらないとの厳しい指摘もあります。

一方、多くの国民にとっては、「国にだまされた」との印象を与えることになるかもしれません。かつて「戦時国債」が紙くずと化したことへの恨みが、敗戦後、国民感情の中で長く尾を引いたように、一旦、国が国民に対して約束したことを破れば、再び信頼を回復するまでに相当の時間と努力を要します。私は、国民に対する国の約束というものはそれほど重いものだと考えています。

そうした極めて異例であり、また国民の信頼を失う恐れもある今回の法律改正を敢えて通そうとされているのですから、総理としてもよほどの覚悟なり、お考えがあってのことと存じます。国民としてはそうした総理の覚悟を、ご自身の言葉でぜひ聞いておきたいと考えるでしょう。この場で総理の真情をお聞かせいただければと思います。

(小泉)生保会社を保護するというよりも、契約者を保護するのが主眼である。金融機関の保護も、結局預金者を保護しているのだ。破綻を予防するためにはどういう選択肢があるのか。破綻した方がよいのか、それとも破綻を防止するために予定利率を下げた方がよいのか。これらについては契約者と保険会社との話し合いも、理解を得る努力も必要だ。現にいくつかの生保会社が破綻している。各生保会社の努力も当然必要。この法案は、いわば「破綻を防止し、保険契約者を保護する」法案である。

質問3:真正面からのデフレ対策が必要ではないか。

(上川)最後に、今回、こうした異例の法改正に踏み切らざるを得なくなった背景である、現下のデフレ問題についてお伺いします。国民にこれだけの負担を求める以上、国民の理解が得られるようなデフレ対策を打ち出し、真正面からこれに取り組む必要があろうかと存じますが、総理のお考えをお尋ねします。

(小泉)デフレ克服のために政府が色々手を尽くさなければならないことは、言うまでもない。財政政策、金融政策、日銀と協力しながら現下のデフレ状況を克服するために、今後も努力を続けたい。非常に厳しい状況が続いているが、打開するためにも構造改革が必要だ。そんな中で限られた選択肢ではあるが、狭い道ではあるが、小泉内閣発足時の主張をいかに実現するか、一歩一歩努力をしていきたい。打開したあとには、民間主導の持続的な経済成長が達成できるよう、デフレ克服が実現するよう、さらに努力をしていきたい。

(上川)有難うございました。

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