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上川陽子 法務大臣 退任を目前にした記者会見での発言から

上川陽子 法務大臣 退任を目前にした記者会見での発言から

●望ましいリーダー像について(9月17日、自民党総裁選との関連で)

【記者】
 本日告示の自民党総裁選についてお伺いします。新型コロナウイルス,不安定な国際情勢への対応など課題も多い中で,望ましい次期リーダー像についてのお考えを聞かせてください。

【上川大臣】
 この1年間,新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい,1日たりとも対策を緩めることのできない緊張した中,また,我が国を取り巻く国際情勢が様々に変化する中,一つずつ着実に施策を実施していくという菅政権の大きな方針の下,様々な課題に取り組んでまいりました。
 私自身は,法務大臣として,法秩序の維持,国民の権利擁護などの法務行政を預かる立場であり,コロナ禍にあって,その職責を果たすため,覚悟をもって全力を尽くしてまいりました。
 こうした時代に,リーダーとして何をすべきか,望まれるリーダー像とは何かということを,自らに問いながら,最初に法務大臣に就任した6年前から今日まで,仕事をしてきたところです。
 日本には,古来「不易流行」という言葉があります。
 国民の不安感が高まり,変化の激しい国難とも言うべき状況の中で,私自身も,常にリーダーとして意識すべき心構えとして,肝に銘じてきた言葉です。
 その心はと問われれば,アメリカの哲学者ラインホールド・ニーバーの有名な「ニーバーの祈り」にある「変えるべきものを変える勇気を,変えることのできないものを受け入れる冷静さを,そして,変えるべきことと変えられないことを見極める知恵を」ということです。
 これを「不易流行」という言葉に重ね,変えることができないもの「不易」と,時代の変化に対応して変えるべきもの「流行」とを見極める知恵が問われていると,自らを戒めながら取り組んできたところです。
 変化の激しい国難ともいえる時代において,正に「不易流行」を見極め,果敢に変化にチャレンジするリーダーが求められているのではないかと考えています。

●「法の支配」と「誰一人取り残さない」社会の実現について(10月1日)

【記者】
 本日、任期内最後の記者会見ということで、大変お疲れ様でございました。これまでの総括について2点お尋ねいたします。
 まず1点目ですが、上川大臣は三度の法務大臣在任期間を通じて、大きなテーマとして、「法の支配」と「誰一人取り残さない」社会の実現を掲げて取り組まれてきました。これまでを振り返られて、その意義と成果についてお聞かせください。

【上川大臣】
 私は、昨年9月16日に三度目の法務大臣職を拝命し、この1年間を、最初に法務大臣職を拝命した7年前からの法務行政への関わりの集大成とするという覚悟を持って、全力で職務に取り組んできました。
 私は、過去二度の法務大臣在任時から、一貫して、「法の支配」が貫徹された社会の実現と、SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられた「誰一人取り残さない」社会の実現を大きな目標として掲げてきました。
 法務省の仕事は、国民一人一人が、生涯、生き生きと活躍する基盤として、安全・安心な社会を「法の支配」を貫徹することによって実現していくという重要な役割を担っており、私は、法務行政における個々の課題への対応についても、「法の支配」と「誰一人取り残さない」社会の実現という揺るぎない目標を常に念頭に置いてきました。
 このような考えの下、様々な困難を抱える方々が勇気を持って発した声を受け止め、寄り添い、一つずつ迅速に答えを出すことを、私の大きな方針としてきました。
 政治家としてのライフワークとしても取り組んできた犯罪被害者の問題に関しては、喫緊の課題である性犯罪に係る刑事法の在り方や、近時問題となっているインターネット上の誹謗中傷の問題について、着実に検討を進め、先月、法制審議会に諮問をするに至りました。
 児童虐待・いじめ等の問題については、法務省の人権擁護機関等における取組を、なお一層、注意深く推進するとともに、特に、関係機関等と連携したセーフティネットの構築にも取り組んできました。
 父母の離婚を経験した子どもたちを巡る養育費の不払いや面会交流等の問題は、子どもの利益を守る、「チルドレン・ファースト」の観点から極めて重要な課題であり、今年2月の法制審議会への諮問と並行して、養育費の取決めを促進する広報活動の推進等、可能なものから直ちに取組を開始しました。
 無戸籍・無国籍問題は、その方のアイデンティティに関わる重要な問題であり、速やかな実態把握と原因分析を徹底して行い、解消に向けた取組を始動させました。
 罪を犯した者の立ち直り支援、再犯防止の分野では、今年8月、民間のノウハウ・資金を活用した「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)による非行少年への学習支援事業」という極めて先駆的な取組を開始したところです。
 法務行政には多くの課題があり、今申し上げた取組はその一部に過ぎませんが、私としては、少しずつではあったとしても、着実に前進させることができたのではないかと考えています。
 様々な困難を抱える方々の「声なき声」をしっかりと汲み上げ、様々なステークホルダーと連携して寄り添っていく、そのためには、「法の支配」と「誰一人取り残さない」社会の実現という揺るぎない目標・信念を、法務行政の根幹として、しっかりと持ち続けていくことが不可欠です。
 法務省の職員には、私がこれまで掲げてきたこのメッセージをしっかりと受け止めてもらい、これからも、オール法務省で、取組を更に進めてもらいたいと考えています。

●適正な在留管理と多文化共生の実現について(10月1日)

【記者】
 2点目として、入管行政について伺います。大臣はかねて適正な在留管理と多文化共生の実現を掲げてこられましたが、その中で、今年3月には名古屋入管で収容中のスリランカ人女性の命が失われるという事案が発生しました。改めて所感をお聞かせください。

【上川大臣】
 社会経済の国際化、その進展は極めて著しいものがあります。専門的・技術的分野の外国人材の積極的な受入れを行うという政府方針の下、我が国に在留する外国人の方々の人数も大きく増加しています。
 私自身、若い頃、アメリカへの留学時のことでしたが、多民族国家における少数者の立場を実際に体験しており、かねてより、在留資格を有する全ての外国人の方々を、孤立させることなく、地域のコミュニティの一員として受け入れ、日本人と外国人が共に安全・安心に暮らしていける共生社会の実現は、極めて重要であると認識し、その実現に向けて力を注いできました。
 その実現を担う中核として、平成31年4月に、出入国在留管理庁を発足させ、従来から一歩進んだ政策官庁としての役割を明確にしました。
 令和2年7月には、「外国人在留支援センター」、通称「FRESC」を開所し、在留支援を行う様々な機関を一箇所に集約し、ワンストップでの支援を実現するなど、横のつながりを意識し、横串を通した施策をしっかりとお届けする様々な取組を進めてきました。
 具体的には、コロナ禍で帰国が困難な外国人等への雇用の支援や、言語の問題が非常に大きいことを踏まえた「やさしい日本語」による情報提供などを進めてきました。また、冒頭に私から発言したとおり、在留外国人を対象とした新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の支援などの新たな取組に向けた準備も進めているところです。
 また、適正な出入国管理を確保する上で喫緊の課題である送還忌避や入管収容施設における収容の長期化の問題についても検討を進めてきました。
 そうした中で、本年3月に、名古屋出入国在留管理局において収容中の女性が亡くなるという痛ましい事案が発生しました。
 この事案については、私自身、外部有識者の御意見・御指摘をしっかりと踏まえた客観的・公正な調査と原因の究明、更には改善策の検討を指示し、その結果、出入国在留管理庁において医療的対応のための体制整備や運用が十分でなかったこと、そして、職員の意識についても問題があったことなどについて、御指摘を承りました。
 こうした御指摘に対しては、改善につなげていくことが、何よりも大事であると率直に考えています。
 私は、出入国在留管理庁長官に対して、今回の事案を職員一人一人が自らの問題として捉え、日頃の行動の中で自分の行動を見直し、さらには、チームとして、それを束ねながら改革に向かって進め、その意識・風土をしっかりと根付かせるように指示しました。出入国在留管理庁では、「出入国在留管理庁改革推進プロジェクトチーム」を発足させ、改革に着手したところです。
 出入国在留管理行政を今日の行政手続としてあるべき姿に、そして内外から信頼されるものとするため、地方公共団体、UNHCR、医療機関等のマルチステークホルダーとしっかり連携しながら、今後、組織改革・意識改革が、速やかに、かつ、着実に進められるものと考えています。

●司法外交の成果について(10月1日)

【記者】
 先ほどから様々な成果を振り返っていただいておりますが、この1年間、「司法外交」の推進にもかなり力を入れてこられたと思います。自身も招致に関わられた京都コングレスの開催や、各国とのMOCの交換など様々ございましたが、「司法外交」の成果について、所感があればお願いします。

【上川大臣】
 私は、国際社会における法の支配などの普遍的な価値の確立を目指すいわゆる「司法外交」の積極的な推進に取り組んできました。
 これは、私自身、法務省に一度目に大臣として関わった中で、特に二つの大きな活動の推進を高く評価させていただき、その大事な基盤を更に発展させていくことが、これから先の国際社会の中で、日本の果たすべき役割ではないかという問題意識に基づくものです。
 一つ目の柱は、50年以上にわたり、国連アジア極東犯罪防止研究所(UNAFEI)において、世界中の開発途上国の刑事司法実務家を対象とする国際研修・セミナー等を実施しています。また、もう一つの柱として、これは20年以上にわたり、ASEAN地域を中心とした法制度整備支援をしてきたという大きな資産があります。これを強みとして生かしていくために、法務行政の中に、この大きなミッションを入れる必要があると考えたところです。
 平成28年には、自由民主党の司法制度調査会長として提言を取りまとめ、「司法外交」という考え方を初めて世に送り出し、京都コングレスに向けて、準備を本格化させたところです。
 二度目の法務大臣在任期間中の平成30年4月には、新たに大臣官房国際課を設置し、司法外交の司令塔と位置付けました。
 そして昨年9月、みたび法務大臣に就任することになり、今年の3月に京都コングレスの議長という大変な重責を担うこととなりました。
 今回はコロナ禍により1年遅れでの開催となりましたが、関係各位の御尽力・御努力により、オンライン参加を併用したハイブリッド方式で開催することにより、過去最大規模の御参加を得ることができ、「京都宣言」を採択し、国際社会から、法の支配と国際協力の推進に対する力強いコミットメントが得られたことは、大変感慨深いものがあります。
 また、サイドイベントの「世界保護司会議」では、100年以上の歴史があり、保護司を始め民間ボランティアに支えられてきた我が国の更生保護制度を世界に発信し、さらに、京都コングレスに先立って開催されたユースフォーラムでは、私も心を注いで開催に向けた努力をしてきましたが、未来を担う世界の若者の声が「勧告」として採択され、京都コングレスに提出されたところです。
 京都コングレスの成功を新たな出発点とし、「司法外交」の更なる発展につなげ、我が国が、いわば「フロントランナー」として国際社会でリーダーシップを発揮するため、法務省では、再犯防止に関する国連準則の策定、ユースフォーラムの定期開催、刑事実務家からの情報共有プラットフォームの構築など、京都コングレスの成果の展開に集中的に取り組んでいるところです。
 私は、京都コングレスにおいて、各国の閣僚との実質的な対話も重ねてまいりました。司法分野での具体的な連携強化について、マルチ又はバイの場でしっかりと意思疎通・情報交換をしていくことの重要性を改めて認識し、法務大臣として、法務行政のトップ外交をその後も進めてきました。
 具体的な取組として、直近では、シンガポール法務省と国際仲裁に関する取組を中心とした協力覚書(MOC)を交換し、また、英国とは、オンラインでしたが、司法大臣、内務大臣と、直接、実務的な意見交換をさせていただきました。そして、その中から、連携強化すべき具体的な協力分野、アジェンダを特定しました。さらに、令和5年の日ASEAN友好協力50周年の特別法務大臣会合の開催など、ASEAN諸国との関係を更に深化させるべく取り組んでいます。
 基本的価値を共有する各国と連携強化し、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の実現、ひいては、国際社会の安定・平和に寄与することを心から期待しています。
 引き続き、法務省の強み、それを支える有為な国際法務人材の着実な育成により、司法外交を通じた「ルールに基づく国際秩序」の実現に貢献していただきたいと考えています。

●少年法改正法案の成立について(10月1日)

【記者】
 少年法が半年後の来年4月に施行されます。上川大臣は、今回の就任以前から制度の検討に深く携わられてきましたが、改正法案が成立して施行されることについて、受け止めをお願いいたします。

【上川大臣】
 私は、今回の法務大臣就任前、自民党・司法制度調査会長を務め、また、与党・少年法検討PTの座長を務めさせていただき、少年法の在り方、これは民法の成年年齢が引き下げられることに伴い、どのように少年を扱うのかという大きな課題でしたが、この点について検討してきました。
 少年法の在り方は、選挙権を有し、民法上の成年となる一方で、未だ成長途上にあり、可塑性を有する18歳及び19歳の若者を、刑事司法上、どのように取り扱うべきかという大変難しい問題でした。
 司法制度調査会においては、様々なステークホルダーの皆様からのヒアリングを徹底して行わせていただきました。また、与党PTにおいても、多岐にわたる重要な論点について、一つ一つ丁寧に議論を戦わせながら、検討を積み重ねた結果、昨年7月、これは大臣就任前ですが、与党PT合意を取りまとめるに至ったものです。
 三度目の法務大臣に就任し、昨年10月に法制審議会からの答申をいただき、本年5月21日に少年法等の一部を改正する法律が国会で成立するに至ったところです。
 既に御案内のとおり、改正法の内容については、18歳及び19歳の者を「特定少年」と呼称し、少年法の適用対象として、全事件を家庭裁判所に送致する仕組みを維持しつつ、いわゆる原則逆送対象事件を拡大する、公判請求された場合には、推知報道の禁止を解除することなど、社会情勢の変化に対応しつつ、少年の非行防止と立ち直りにも十分に意が尽くされたものとなったと考えています。
 少年法の在り方について検討に関わった経験は、私自身が、18歳及び19歳を含む若者たちを社会の中でどのように位置付けていくべきかについて、改めて深く考えるきっかけとなりました。
 国際化・デジタル化の更なる進展により大きく社会が変容していく時代の中で、しっかりと自分の意思を持ち、そしてしっかりと他者への思いやりを持って活動していく、そういうユースの存在は、国境にとらわれない地球規模の環境下において、極めて重要な役割を、未来を担っていくことになると思います。
 彼らに、多様性を認め合い、相互に理解し合い、尊重し合うための不可欠の基盤である「法の支配」や「法の役割」について考える様々なチャンス、機会を提供することは、我々の重要な責務ではないかと思います。
 私は、特に、若者たちへの教育の重要性、法の役割についての法教育活動を、絶えず注視し、応援してきました。文部科学省や学校現場とも連携して取り組むべき事柄であり、極めて重要なものです。
 中学校での模擬裁判を視察に行き、その中で、堂々と御自分の意見を話す若い人たちを、また、立場を変えてロールプレイをすることによって社会の仕組みを理解し、相手の主張をしっかりと聞く、しっかりと自分の主張をするなどの立派な模擬裁判をいくつも拝見しました。
 そうした中で、先ほど申し上げた京都コングレスにユースフォーラムを入れようと旗を振ってきて、実現に至りました。1回限りでは、教育の効果についても、プラットフォームの重要性についても、御認識いただけないので、これを定例化するために、「法遵守の文化のためのグローバルユースフォーラム」を、新たに日本で主催し、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)のしっかりとした協力を得ながら、国際的なユースフォーラムを継続して実施していく、今年、正にそれが実行されるわけです。
 こうした取組を通じて、若者たちの声がしっかりと受け止められる、また、若者たちがより積極的な役割を担う社会が構築されていくよう、私自身、法務大臣の立場は終わるわけですが、どのような立場にあっても、コミットしていく責任があると思っています。
 人を大事にしながら、人の具体的な行動の中に、法の支配、「ルール  オブ ロー」という大きなコンセプトがしっかりと根付いていくよう、これからも力を入れてまいりたいと思っています。

●性犯罪に対処するための法整備について(9月28日)

【記者】
 性犯罪について,大臣は16日に法制審議会に対して,性犯罪に適切に対処するための法整備の在り方を諮問されました。同時に諮問された侮辱罪関連では既に部会が設置されて本格議論が始まったようですが,性犯罪の議論についての進捗状況について教えてください。
 また,大臣はこれまで処罰されるべき行為が漏れなく捕捉されること,処罰されるべきでない行為がその範囲に取り込まれてはいけないことのバランスを指摘されていますが,性犯罪の深刻さを考えたとき,被害者に寄り添った法整備の在り方はどうあるべきかという点と,議論のスピード感についても改めてお考えをお聞かせください。

【上川大臣】
 御質問にありました今年9月16日の法制審議会において,性犯罪に対処するための法整備について諮問し,刑事法(性犯罪関係)部会を設置することが決定されたところであり,今後,この部会において,調査審議が行われるものと承知しています。
 部会の開催時期等については,現在,調整中との報告を受けています。
 私自身が申し上げた一つの認識について言及いただきましたが,これは,刑罰の在り方の基本的な考え方について申し上げたものです。すなわち,処罰されるべき行為が漏れなく捕捉されるようにすべきとの要請と,処罰されるべきでない行為が処罰範囲に取り込まれてはならないといった処罰範囲の明確性等の刑事法の諸原則との調和をどのように実現するかという課題があり,性犯罪に対処するための法整備についても,同様であると認識しています。
 性犯罪の被害は非常に深刻で根深いものであり,被害に遭われた方々に長期にわたる非常に大きな傷跡を残すものであると認識しています。
 私としては,このような認識を共有した上で,性犯罪の事案の実態を把握し,これに即した施策の在り方を検討することが重要であると考えています。
 こうした課題に取り組むに当たっては,いろいろな角度,様々な立場から御意見をお示しいただくことが重要であり,また,議論を通じて,できる限りの合意形成を図っていくことが重要であると認識しています。法制審議会部会での議論は部会長がリードされるわけですが,スピード感を持って,充実した御議論が行われるよう期待しています。

 

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