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活動報告Report

ウィルソン・センター極域研究所 主催 北極 ウェビナー基調講演 日本語版 国政

持続可能な北極

希望の海へ、さらなる国際協力

 

 法務大臣 衆議院議員 上川 陽子

主催:米国ウィルソン・センター極域研究所

とき:2021年2月8日~9日

 

(はじめに)

1.本日はこのような機会をいただき、マイク・スフラガ博士、ウッドロー・ウィルソン・センターのチームの皆さまに感謝申し上げます。また、古くからの友人、ミード・トレッドウェルさん、丁寧なご紹介ありがとうございます。

 2019年9月、私はワシントンD.C.を訪問しました。その時、ウィルソンセンターと笹川平和財団が開催した日米シンクタンクによる協力対話に参加し、研究者の方々と議論させていただきました。今般このウェビナーを通じて再び皆様とご一緒する機会を持てることを嬉しく思います。

(海洋国家日本にとっての北極問題の重要性)

2.四方を海に囲まれた海洋国家である日本にとって、北極とは海を通じて繋がっており、またアジア地域において、最も北極海に近く、北極の気候変動の影響を受けやすい地理的位置にあります。

 2017年4月の北極圏監視評価プログラム作業部会(AMAP)の報告書や2019年9月に採択されたIPCC海洋・雪氷圏特別報告書が指摘するように、過去20年で、北極域の温暖化は地球平均の2倍以上の速さで進行している可能性があり、また、2030年後半には、夏の北極海の大部分の海氷は消滅するという衝撃的な予測もあります。このように北極で進行中の環境変化は、生態系や北極圏に住む先住民の生活に大きな脅威となるとともに、地球全体に影響を及ぼし得るまさにグローバルな問題となっています。日本としては、先住民の生活様式への影響を重視しつつ、国際協力を積極的に図りながら、観測・研究を通じた実態解明に取り組んでいきます。

(北極のフロンティアを考え行動してきた経緯)

3.私(大臣)は北極問題について、法務大臣就任前から大きな関心を持って取り組んできました。具体的には、北極議連の幹事長として積極的に活動しており、2016年に国立極地研究所ニーオルスン基地開設25周年記念国際ワークショップに参加するため、ノルウェー・スバールバル諸島のニーオルスンを訪問し、スピーチを行いました。

 2019年9月にはワシントンD.C.を訪問し、米国北極議員連盟議長であるリサ・マコウスキー上院議員とも意見交換をしました。その場で、私からは「議員外交による北極圏諸国との協力推進」という新たな柱を提唱し、次の3つの具体的な提案を行いました。

1)今年5月に東京で開催予定の第3回北極科学技術大臣会合(ASM3)に向けて日米が協力してサイドイベントを開催すること、

2)日本が建造に向けて準備を進めている新しい北極域研究船を、国際研究プラットフォームとして活用することに向けて日米で協力して検討を進めること、

3)北極域の問題に取り組む若い世代の日米交流を実現すること。

 これに対して、マコウスキー上院議員からはご賛同を頂いただけでなく、北極問題に取り組む日米の議員交流を促進し、継続的な議論を行うことについてご提案を受けたことは大変に喜ばしいことでした。

 また、同年12月には、対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」で招聘された、アラスカの先住民アサバスカ族の若者と意見交換を行いました。

 さらに、私は、日本の政策における「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進を図るため、2017年4月に「自民党持続可能な開発目標(SDGs)外交議連」を立ち上げその会長に就任し、これまで様々な活動や政策提言を実施してきました。

 北極における持続可能な開発目標(SDGs)の実現は、北極における諸課題に取り組むためのキーとなる概念であると考えています。実際、我が国もオブザーバーとして参加している北極評議会(AC)における動向に目を向けてみますと、2013年、カナダはAC議長国就任時に、「持続可能な北極圏コミュニティ」を重要テーマの1つとして提起し、2017年にもフィンランドがAC議長国就任時に北極における持続可能な開発目標(SDGs)の実現を提起しております。重要なことは、同じ地球上で運命を共有している様々なステークホルダーと積極的に連携して、北極における持続可能性という観点から諸課題の解決に取り組むということであると考えます。

(日本の北極政策)

4.日本の北極政策については、2015年に総合海洋政策本部決定された「我が国の北極政策」及び2018年に閣議決定された「第3期海洋基本計画」に基づき、

① 北極域に関する観測・研究体制の強化等の研究開発、

② 国際ルール形成への積極的な参画等の国際協力、

③ 北極海航路の利活用等の持続的な利用

の3つの分野を柱としているところであり、政府としては、民間企業や研究機関とも協力し、オールジャパンでこれらに取り組む考えです。

(観測・研究)

5.北極域は観測データの空白域であり、他の海域に比べて科学的知見が不足していることから、更なる観測・研究が急務です。

 我が国は、1991年にノルウェーのニーオルスンに国際観測拠点を設置して以来、国際連携による北極観測を地道にかつ継続的に行ってきました。これらによる質の高く、かつ継続的な観測データは地球規模の気候変動予測に貢献しているところであり、我が国の誇りです。

 2011年からは、政府の大型北極研究プロジェクトとして、北極気候変動研究プロジェクト(GRENE(グリーン))を開始し、北極温暖化増幅の仕組みの解明に貢献しました。後継事業として2015年から開始した北極域研究推進プロジェクト(ArCS(アークス))では、アラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センター(IARC(アイアーク))に日本の若手研究者を受け入れていただき、多くの若手人材の育成を行うことができました。

 昨年開始した北極域研究加速プロジェクト(ArCSⅡ(アークス・ツー))では、米国とも連携し、海洋観測と宇宙観測のコラボレーションを一層加速させる計画です。これにより、北極域の様子をより立体的に捉え、地球をより俯瞰的に把握できるようになります。これら日本の研究者が取得したデータは北極域データアーカイブシステム(ADS)で世界へ公開し、多くのステークホルダーに活用いただく予定です。

 また、社会科学の研究者も参加し、北極域における生活様態が気候変動によりどのように変化するか、先住民を含め北極域に暮らす方々への成果還元を加速させる予定です。

 さらに、北極海域のデータを多数の国による国際協調で取得し、共有することも必要です。日本政府は、北極域研究の国際プラットフォームとなる北極域研究船の建造を決定しました。政府予算案が国会で可決されれば、直ちに建造に着手することとなります。就航までの約5年間に、地球上で最も大きな観測データの空白地域を埋めるため、Sustaining Arctic Observing Networks (SAON(セイオン))の体制強化など、北極域の国際観測ネットワーク及びデータ共有体制の強化に関する国際枠組みの議論を加速します。

6.日本は、アイスランドとの共催により、本年5月に第3回北極科学大臣会合(ASM3)を開催します。北極域における科学分野での国際的な絆をつなぐ絶好の機会です。地球規模の気候変動の把握及び予測に北極域の観測データが大きな意味を持ちます。人類が直面するこの大きな課題に対応するため、北極域は国際協調を体現する、いわば「国際協調の海」でなければなりません。北極評議会のメンバー国や先住民団体のみならず、多くの国の参加を得つつ、「持続可能な北極のための知識」というテーマのもと、北極域を人類にとって開かれた地域とするために必要な、将来にわたる国際協力体制の構築に向けたメッセージを力強く発信したいと考えています。アジア初の東京開催に、是非とも第1回会合を開催した米国の協力をお願いいたします。

 私としても、このASM3の成功を後押しするとともに、北極サークル日本フォーラムの機会を活用し、日米の議員交流イベントなど更なる関係深化に取り組みたいと考えています。 

(航路の利活用)

7.北極海の海氷減少に伴い、海上輸送における新たな選択肢として関心が高まっています。例えば、北極海を通って東アジアとヨーロッパを結ぶ海上輸送ルートは、マラッカ海峡、スエズ運河を経由する「南回り航路」と比較し、航行距離を約6割に短縮でき、海賊リスクも少ないことから、言わば「希望の海」です。

 北極は脆弱な環境であり、持続可能な利用を行うことが大前提ですが、我が国では、民間事業者、研究機関、行政機関等からなる「北極海航路に係る産学官連携協議会」を定期的に開催し、沿岸国の関係制度の動向や北極海航路の利用動向等に関する情報の提供・共有を行っています。また、我が国の誇る科学技術や観測データも活かし、北極海における航行の安全を確保する上で有用な運航支援システムの構築にも取り組み、持続的な利活用を目指します。

(国際協力・日米協力)

8.今後とも、日本は、北極評議会等を通じ、各国と協力・連携し、観測をはじめとした科学研究、生態系や先住民の生活に配慮した持続可能な経済活動、法の支配の確保に向けて貢献していきます。

 特にアメリカとは、本シンポジウムのように今後も日米シンクタンクの連携により議論の場を設定すること、またバイデン新政権の下でも北極政策に係る協力、連携が進展していくことを期待します。また、ウィルソンセンターはシンクタンクとして幅広い知見を有するので、私としては、議論のスコープを広げて、観光、漁業、航路、安全保障、公衆衛生、教育、ジェンダー、遠隔医療、エネルギー、インフラといった日米間の共通の関心事項における議論を進めることが望ましいと考えます。

 その際、日米双方の議員によるワークショップの開催など、政治レベルでの議論・交流を深めることが重要であると考えています。政治家によるリーダーシップを発揮するために、私も、マコウスキー上院議員と緊密な連携を取りつつ、引き続き、日米議員の交流にも力を入れたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

法務大臣 活動記録 2017.8.3~、2014.10.21~2015.10.7 総務副大臣 活動実績!

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