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ラジオシェイクradioshake

第47回「GAVIアライアンスのワクチン債」

<かみかわ陽子ラジオシェイク 9月17日オンエア>

(上川)リスナーのみなさん、こんばんは。上川陽子です。

(鈴木)コピーライターの鈴木真弓です。よろしくお願いいたします。今日は日本の知られざる国際貢献についてお聞きしようと思います。さっそくですが、8月末に、インドネシアに出張されたそうですが、どんな目的で行かれたんですか?

(上川)GAVIアライアンス  (ワクチンと予防接種のための世界同盟/The Global Alliance for Vaccines and Immunization)という組織の招待で、インドネシアで開かれる5種混合ワクチンの導入式典に参加するため3泊4日で行って参りました。

(鈴木)あまり馴染みのない組織ですが、WHOか何かの関連団体ですか?

(上川)ワクチンの普及はWHO(世界保健機構)の大きな仕事の一つになっており、ミレニアム目標として、2015年までに世界の5歳未満児の死亡率を3分の2減少させるという目標を掲げて取り組んでいるんですね。その目標達成のため、ユニセフ等さまざまな団体が活動する中、GAVIアライアンスはインドネシアの5種混合ワクチン接種の支援をしているというわけです。
5種混合ワクチンとは、ジフテリア、破傷風、百日咳、B型肝炎、インフルエンザB型に対応するワクチンのことです。今回、実際にワクチンを製造する施設も視察してきました。

(鈴木)そういうワクチンを受けられない子どもたちが世界にはたくさんいるというわけですね。

(上川)GAVIアライアンスの「アライアンス」とは「連帯」という意味ですね。GAVIを支えるのは、開発途上国とドナー国政府、世界保健機関、UNICEF、世界銀行、先進国及び開発途上国のワクチン業界、研究機関、技術協力機関、国際NGO、ビル&メリンダ・ゲイツ財団など多様な組織です。2011年より日本政府もGAVIを支援するドナー国に加わりました。GAVIそのものは2000年の設立以来、これまで約3億2600万人の子どもたちに予防接種を行い、550万人の死を未然に防いできたのです。

(鈴木)それはすごい活動ですね。

(上川)世界には180カ国ぐらいありますが、支援対象となるのは一人当たり国民総所得(GNI)が年間1,500米ドル未満の国々で、2010年には73カ国、2011年には9月現在で59カ国が支援を受けました。

(鈴木)そういう国々では、ワクチンを受けられないばかりに、子どもたちが亡くなっているんですか。

(上川)世界では毎年1000万人の子どもが5歳の誕生日を迎える前に亡くなっており、このうち4分の1にあたる250万人は、現在利用可能、あるいは新しいワクチンによって予防可能な感染症によって亡くなっているんです。こうした厳しい実態を受けて、ミレニアム開発目標として「2015年までに5歳未満児の死亡率を3分の2減少させる、つまり3分の1にする」を掲げ、GAVIだけでも、更に2億5000万人の子どもに予防接種を行い、400万人のワクチンで救える死を防ぐために活動しています。

(鈴木)ネットで調べてみたんですが、GAVIはもともとダボス会議で有名な世界経済フォーラムで発案された組織だそうですね。経済フォーラムがこういうジャンルを取り上げるって珍しいと思いました。

(上川)ユニークなのは資金協力について、ドナー国は10年間これだけの資金を提供すると約束する。その資金を国際的な金融市場で債券として売り出すのです。まさにダボス会議ならではの発想ですね。
貧しい国の子どもたちが予防接種を受けられないということは、幼い子どもの命が危機に晒されるだけでなく、多くの子どもたちが病に陥り、学校にも行けず、健全な成長期を送ることが出来なくなります。無事、成人したとしても脆弱な健康状態と教育の欠如により、彼らは職につけず生活に困窮するという悪循環に陥るのです。

(鈴木)開発途上国にとっては深刻な経済問題でもあり、先進国も看過できないわけですね。

(上川)GAVIの「ワクチン債」は、まさにワクチンを買うための債券です。イギリスがGAVIの資金調達のために提唱したメカニズムで、2006年に国際金融ファシリティ(The International Finance Facility for Immunization)を設立し、ドナー国であるイギリス、フランス、イタリア、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ブラジル、南アフリカの政府からの寄付金によって構成されています。正確には、ドナー国による将来のODA政府開発援助を担保に、前倒しで債券(ワクチン債)を発行し、資金を調達するというわけです。資金は、ワクチン購入を法的条件に、貸付ではなく寄付として、GAVIを通じて世界の開発途上国へ提供されます。

(鈴木)どれくらい発行されているんですか?

(上川)2006年11月に、初回債である10億米ドルの債券が発行されました。推算では、10年間に40億米ドルが投資され、新たに5億人へ予防接種を提供し、1000万人の子どもの命が救われる、と期待されているんです。

(鈴木)ワクチン債は誰でも買えるのですか?

(上川)日本では大和証券グループが中心になって、南アフリカ共和国のランドやオーストラリアドル建てのワクチン債が販売されました。

(鈴木)へえ、まったく知りませんでした。そういう組織の会合に参加されたんですね。後半、詳しくお聞きします。

♪ 

(上川)今回、インドネシアで開かれたGAVIアライアンスの会合に、私は『ワクチン議連』の一員として参加しました。

 (鈴木)あら、そういう議連があるんですね!どんな議連ですか。

(上川)子どもの命を守るというのは、私の大事な政治信条ですから、国境を越えたとても重要な議連活動として位置づけています。今回、議連からは、参議院議員の谷合正明先生、藤井基之先生、藤末健三先生と私の4人が参加しました。

 (鈴木)どんな会合でしたか?

(上川)日本から4名、韓国から3名の国会議員が参加しました。2日間公式行事がありまして、1日はジャカルタからバスで3時間ほどのところにあるバイオファーマス社というワクチンメーカーを訪問しました。2日目は西部ジャワ州で5種混合ワクチンの導入式典がありました。この2つがビッグイベントでしたね。

左:保健大臣と日韓国会議員団 / 右:5価ワクチン導入式典

左:保健大臣と日韓国会議員団 / 右:5価ワクチン導入式典

(鈴木)インドネシアにはそういう会社がたくさんあるんですか?

 (上川)バイオファーマ社はオランダの植民地だった時代からある会社で、今はインドネシアの国営企業になっています。インドネシアにおけるワクチン製造は唯一、国営のこの会社が担当しています。1000人規模の組織で、局長さんたちは日本のJICAの無償支援を受け、日本でワクチンに関する教育研修を受けた方々なんですよ。

小児麻痺のポリオの製造設備も日本からの無償協力で作られて、フル稼働していました。初めて知ったことですが、この分野における日本との関係は非常に長く深いものがあり、大変嬉しく、誇りに思いました。

左:ワクチン製造工程の視察 / 右:JICAの無償資金援助で建設されたことを示すプレート

左:ワクチン製造工程の視察 / 右:JICAの無償資金援助で建設されたことを示すプレート

(鈴木)多くの日本人は初めて知るんじゃないでしょうか。

(上川)製薬の分野は世界の中でもしのぎをけずって開発競争が行われていますが、こういう企業は、開発途上国の貧しい地域にも、安全な薬やワクチンを安価に迅速に届けることができます。こういったしくみづくりが重要だと実感しました。

(鈴木)現地で印象的だったことは?

(上川)通常、先進国ではワクチン製造の現場はオートメーション化されていると思いますが、今回訪問した企業は国営で1000人規模の従業員が働いていました。オートメーションですべて管理してしまえば、それはそれで効率がよいと思いますが、雇用の面ではこういう現場も必要ではないかと。・・・どこか、昭和の時代の日本の製造現場を想起させてくれました。

(鈴木)2日目はセレモニーと現地の国会議員の皆さんとの交流だったそうですね。どんな感じでしたか?

(上川)静岡の駿府城公園のようなところに大きなテントをはり、500人ぐらいの人が座るイスが並べられ、インドネシアのジャワの踊りで歓迎セレモニーが始まりました。ひととおりの挨拶があった後、各テントでは実際に5種混合ワクチンを子どもたちに接種する活動があり、多くの母親と子どもたちで会場はいっぱいでした。
とにかく想像以上に盛大なセレモニーで、大勢の子どもたちが国歌を歌ったり民俗芸能で歓迎してくれたりしたんですよ。

 (鈴木)ワクチン接種を始めるという記念行事なんですよね。日本ならば地味な会場で粛々と行いそうなものを、何か国を挙げてのお祭りのような・・・。

(上川)そうなんです。ママたちが赤ちゃんの身長や体重を量ってワクチン摂取量を決めるんですが、なんと天びん秤で量るんですよ。布地の袋の中に子どもを入れて一人ずつ量って投与するんです。とにかくお母さんたちに、子どもが幼いうちに接種させるという啓蒙活動が大切で、母子たちと一緒に写真も撮らせていただきました。
やはり栄養が十分と行き届いているとはいえない状況で、赤ちゃんたちはみんな小さくて痩せているんですね。保健師さんたちはワクチン接種と栄養管理の指導に力を入れておられました。

5価ワクチン接種会場にて

5価ワクチン接種会場にて

(鈴木)GAVIのスタッフやインドネシアの議員さんたちとは、どんなお話をされましたか?

(上川)今回、GAVIが我々を招待した目的の一つは、GAVIの活動実態をドナー国の議員に見てもらいたいということでした。彼らの目標達成のためには、さらなる資金調達が必要ですし、技術面でもワクチンの種をいったん凍結保存し、組み合わせて作る。一定の品質を維持するには、国境を越え、2~8℃ぐらいの低温保存環境が必要なんですね。いろいろな地域の子どもたちへ届けたくても、電力が行き届いていない貧しい村もあります。そういうところへ届けるための支援として、太陽光発電やクールボックスを小分けして配送するコールドチェーンシステムも必要です。日本はこの分野で高度な技術貢献ができます。

(鈴木)ワクチンを通してその国の生活全般を向上させていく、そのために日本が貢献できる分野はたくさんあるということですね。

(上川)そうですね。国際的なネットワークでワクチンを届けるとなると、国によっては税関の手続きが煩雑であったりして、よい状態でワクチンが届けられない場合もあります。そんなときはユニセフのような組織がサポートする、といったしくみも必要です。とにかく日本の国会でお一人でも多くの議員の方々にそのことをご報告をし、問題の解決に当たりたいと思っています。

(鈴木)陽子さんから日本を代表して何かメッセージはお伝えしたんですか?

(上川)まずは、3・11で多くの国々から国際援助をいただいたことに感謝の意を申し上げました。私たちも被災地の中で地域コミュニティや国際支援の重要性を学びました。同じようにワクチン接種の問題でも、地域コミュニティや国際支援の絆、連帯が必要であると思います。その中で日本がしっかりと関わっていきたいと申し上げました。

日本に戻ってからは、バイオファーマスの実態と、日本の援助で100年の取り組みが結実しているという現実を踏まえ、一気に何か解決させるというよりも、長く継続していく活動の重要性を報告しました。またコールドチェーンの技術で日本が貢献できるということ。とくに私は医療機器の推進のための議員連盟をしていますので、この活動の中でもワクチン製造市場の将来性を踏まえ、しっかり取り組んでいきたいと申し上げました。

(鈴木)陽子さんが日頃、おっしゃっていた議員連盟の活動を具体的に理解できた、よい実例をお聞きしたと思います。本当におつかれさまでした。

   ♪ 

(鈴木)今日は、ワクチン債という新しいしくみによる国際貢献について貴重な情報を得ることが出来ました。これから新聞やニュースで取り上げられることがあったら、注目していきたいと思います。ところでインドネシアのあと、また、別の海外出張にも行かれたんですね。

 (上川)私は今、国会の中で厚生労働委員会に所属しており、山中教授のiPS細胞で注目される再生医療や薬のネット販売について、イギリス、フランス、デンマークの現場を見てきました。

(鈴木)では次回、また詳しくお聞きします。出張の成果をぜひ国政に反映させてくださいね。

(上川)ありがとうございます。

さあ、そろそろお時間となりました。最後までおつきあいくださったリスナーのみなさま、ありがとうございました。それでは次回まで、ごきげんよう。

 

 

 

法務大臣 活動記録 2017.8.3~、2014.10.21~2015.10.7 総務副大臣 活動実績!

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