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かみかわ陽子

プロフィール

2児の優しいママでもある上川さんの素顔は?子育て観は?

月刊誌「ふぁみりす」1994年7月号

    WAI・WAI 子育て− 「グローバリンク総合研究所」代表の上川さん

  • 「グローバリンク研究所」というのは、どういった仕事をされているんですか。
    • 官公庁を中心とした公的機関から委託を受けて、冷戦後の国際情勢やエネルギー、環境問題について分析し、政策面で助言しています。最近のテーマとしては、たとえば、住宅建築分野に女性が大工さんとか左官さんとして現場職種に参入・活躍する場合、どういう壁があり、どういう形で乗り越えていったらいいかというような問題について、アンケートを取ったり、専門家にヒヤリングしたり、各省庁に出向いて情報を収集したりして、一つの方向性を出し提言をまとめました。
  • 幅広い分野にわたっての仕事ですね。
    • テーマが新しいほど好奇心もわくし、エネルギーが出るんですよ。それらの問題は、すべて私たちの社会生活にかかわるものだから、まず自分たちの問題であるという認識からスタートするんです。
  • だんなさまとお子さんが東京にいらっしゃるんですよね。
    • そう。中3と、下が3歳7か月です。上は中3だから、自立心も旺盛で、自分で何でもするし、勉強の合間に電話かけてきたりということもあるけど、下の子はちょっと小さいもんだから、しょっちゅう静岡に来てるんだけれども、やっぱり恋しいです。私も恋しいんだけど、彼女も恋しいみたいで……。
    • 今はね、実家(静岡)の私の母が週末以外東京に行っていて単身赴任(笑)! 父はこっち。そういう変則的な状況です。

可能性を広げてくれた母親

  • 上川さんご自身の小さいときのしつけというのはいかがだったですか。
    • 勉強は、あんまりうるさく言われなかったですね。ちょっと勉強するとものもらいができたり、七時ぐらいになると眠くなってしまう子だったものだから(笑)。やるときはすごく集中してやるということはあったけど。
    • 私の母は、自分が戦争中で教育を受けていないという意味で、そうじゃない子どもに育てたいということはあったと思うんです。何何をしなきゃいけないとか、女の子はこうあるべきとか、そういうことを言われたことは一切ないんですよ。むしろ、これからの時代は、女の人でも能力があればどんどん社会に出ていくということがだいじなんだよ、あなたもやればできるんだからやりなさいねと、いつも私の前の障害物をどけていてくれるというか。たとえば東大に行くというのは、なかなか許されないところがあるじゃないですか。偏差値や点数がよほどよければ、「あなた東大に行きなさいよ」と先生も言うかもしれないけど。そうでないと扉がしまっちゃう。先生のところに行っても、だれもゴーサインをくれない。生徒も、点数が満たないからあきらめようとする。
    • そこを乗り越えられるかどうかだと思うんですよ。いろんな壁があるから、なかなか乗り越えられない。それをいつも取り除いてくれたのは母かなという気がします。そのときは気づかなかったけれど、今考えてみると、非常によく考えてくれていたと思うんです。
  • ご自身の子育ては?
    • 上の子のときには会社に勤めていて、育児時間というのもなかった。1時間とか30分とか授乳時間というのはあったんだけれども、結局それを取ることができなかったのね。仕事も残業で忙しかったし。だから、わりと無理しちゃった。おむつも、働くということについて後ろ指をさされないようにしたいと思ったものだから、紙おむつは絶対使わないと、布のおむつ!
  • 洗たくがすごい大変じゃないですか。
    • そう。だんだん2枚にするでしょう。そうすると毎晩十何組、夜中に洗うわけですよ。梅雨時とか雨の日はものすごい量。それで乾燥機買ったのね。ドラム式の。あれはヨレヨレになっちゃうのね。性能が悪くて、薄くなっちゃうし、全部アイロンかけて、のばして持っていくという、ばかみたいなことしていた(笑)。それでも後ろめたさがあるから、これだけは言われまいと思って、泣き泣き……。
    • 2番目の子は紙おむつ!(笑)  あのときの産休は産前8通、産後8週、育児休暇なんかないし、育児時間が1時間認められていたぐらいだけど、取れなかったし。今考えてみると、後輩のために取っておいたほうがよかったかな。

夫と乗り越えてきたもの

  • だんなさまは、お仕事は何をしていらっしゃるんですか。
    • 銀行に勤めています。周りの人には働く奥さんなんていない。「上川さんは奥さんを働かせてる」なんて、だぶん言われていたと思うんです。私には直接言わないけど。15年も前の話です。だけど、そういう中傷もあったかもしれないけど、主人は主人で、女性も社会の中で自分の持ち味を生かす世界をもつべきだという考え方で協力してくれました。私たちは家庭の問題は夫婦2人で納得すればいいことだし、ひとの家庭のことはうんぬんすぺきじゃないと考え、そのように行動してきたのだけど、実際に女性が働くということに対しては、今でも周囲の人たちがいろんなことを言うんでしょうね。でもそこが乗り越えなくちゃいけない壁ね。
  • 上川さんと同じくらいのお子さんをもつ読者の方に何か。
  • 私、上の子と下の子の子育ては違うところが一つあるんですね。上の子のときには、本当に育てるということで肩ひじ張って、育児書なんか丹念に読んだりして、よく言われる模範的に育てているみたいなところがあったけど、下の子については、もうアバウトもいいところ。それでも子どもは育つし、むしろ型とかルールとかいうのを一切取りはずして、この時期はこうしなきゃいけないとか、この時期になるとこういう能力が発達するから、親はこういうふうに接するんだとかというような、頭で考えた子育てでなくて、スキンシップというか、その子がくっついてきたら受け止めてやる。本当に本能の部分でできるだけたくさんかかわりたいなという感じですね。
    • アメリカから帰って、ひとと比べたりするのは絶対やめようと思ったの。ひとが何かをしているから私もやる。ひとと同じだから私も安心するとか、そういうものの考え方は、全部捨ててきちゃった。私が考えることがだ いじであって、それはひとに迷惑をかけるとかというのは除いての話ですけど、どんなつまらないことでも、私が考えたことに、私は自信をもちたい。子育てについていえば、子どもが自分で考えたり、自分で行動することについては認めてあげたい。できてるかできてないかわからないけど、そういう比較をしたり、あの子は走るのが速いけど、うちの子は遅い---というんじゃない。一生懸命走ってるから、がんばってねという、それぞれにキラキラ星のような光があるんだから、その一つを見てあげたいという感じ。
    • そうすると、子どもは伸びますよ! ほんとに。親が信じてあげたら、絶対伸びます。ここのところが、どうも母親は焦るのね。私もそう。上のときは塾なんか入れたりしたけど、今はちゃんと自分から進んで勉強するようになったし、何も言わなくてもね。
    • 私自身、中学から高校とのんびり6年一貫教育の私立の学校できたから、わりと人が考えないことでもやってみようとか、何かおもしろそうだなとか、そういう夢を自分の中で大切に育てることができたような気がします。ここに行きたいなあと思うと、どうしたら行けるかなあと考えるでしょう。ちょっと勉強してみようか、浪人してもやろうかとかね。
    • ハーバードヘの留学だって、いちばん行きたいところへ行こう、そのためにはどうしたらいいのかな。でも、行きたいという熱意は、やっぱりレポートに出てくるわけだし、自分の言葉で書くわけだから。そういうのは相手に伝わるんじゃないですかね。何よりまず自分の中に意欲がないと。いやいやながら、ほどほどになんて思ってたら、自分を生かすことはできないですよね。
    • まずは自分の可能性を信じて---。
  • どうもありがとうございました。 (構成・ふぁみりす編集部)

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