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かみかわ陽子

私の意見

 

 はじめての中国訪問で考えたこと

情熱だより2002年8月号巻頭

はじめての中国訪問で考えたことこの夏、自民党の若手同僚議員数人とはじめて中国の都市、北京と上海を訪問した。公式行事を入れない自由な立場で、中国の発展ぶりを一度実感しておきたかったからだ。ところが中国政府の手厚いご配慮で、とても気ままな物見遊山というわけにはいかなくなった。江沢民主席の右腕である銭其シン副総理と会談したのを皮切りに、北京では中国外務省の対日外交責任者や軍の担当者、国際政治学者等、また上海では、上海市副市長と意見交換する機会を与えられた。

次世代の人脈づくりに熱心な中国

国会議員1年生というわれわれの立場を考えれば、日本ではとても考えられない破格の厚遇といえよう。そこに、日本の若い政治家とホンネで語り合え、相互に信頼できる人間関係を育てていきたいという、中国側の強い意気込みを感じた。その肌理の細かさと遠い将来を睨んだ対応は、さすが外交大国・中国の面目躍如といった印象である。以下、今回の中国訪問における私の印象を2点述べたい。

北京と上海の違い

第1の印象は、北京と上海の印象の違いである。北京では、銭副総理ほか、主に日中関係を政治面でリードする立場の高官に会ったためか、先方の関心はもっぱら「国家対国家」の関係に集中し、歴史問題や靖国問題を巡る日本批判を繰り返し聞くことになった。身構えたタテマエ論に終始するのが政治の中心地・北京の特殊性ということかもしれない。
これに対し上海では、先方が経済発展著しい大都市・上海の行政責任者のため、問題関心はもっぱら地域開発や環境問題、経済政策など。これらのテーマは、われわれ自身が日本で直面している問題でもあるため、悩みを共有し、ホンネの議論ができる相手であることを実感した。

これからの中国はおそらく、「北京のタテマエ(政治)」と「上海のホンネ(経済)」を巧みに使い分けるかたちで、日本に攻勢をかけてくるに違いない。日本としては、通り一遍の薄っぺらな議論で対抗するのではなく、中国の全体像を見すえた、厚みのある対応が求められるのではないか。

外交は波打ち際で終わる

第2の印象は、日本外交のあり方についてである。中国は日本の国論がどの程度まとまっているかを見極めながら、対日政策を決めているとの印象であった。一例は中国の経済水域内に沈んだ北朝鮮工作船の引き揚げについてである。日本の世論、与野党ともにこぞって中国に対し引き上げを求めてきたことから、中国は比較的簡単にこれを容認した。これに対し、先般の瀋陽総領事館事件に対し中国が強行姿勢を貫いた背景には、問題発生後、日本における世論や与野党の動きを細かく分析した結果、日本の国論が分裂していることに着目し、日本に強く出ても大丈夫、と判断したことがあるのではないか。

政治・外交の基本に、「外交は波打ち際(国境)をもって終わる」という言葉がある。国内の政治対立がいかに激しくても、外交交渉の場では国益を重視し一致団結して外国に当たるものだ、という原理原則である。瀋陽事件では、日本のある野党が独自に調査団を派遣し、外務省の不手際をあげつらったが、どこまで国益を意識したものだったのか。改めて日本の外交力の未熟さを痛感した。

唇歯輔車の日中関係

いずれにせよ、長い歴史の中で、日本と中国は「唇歯輔車(しんしほしゃ、上顎と下顎がうまく噛み合っている姿)」の関係にある。上顎だけでも下顎だけでも、人間は生き延びていくことができない。日本と中国が互いにホンネで語り合い、うまく噛み合ってこそ、これからの東アジアの平和と安定が可能になる。そんなことを今回の中国訪問で考えた。

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