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かみかわ陽子

      

 <月刊誌「水道公論」 2002年 No.5>

 

     国民とともに水問題の解決へ

     〜 おいしい水」をキーワードに 〜 
 

       「おいしい水推進議員連盟」事務局長 衆議院議員 上川 陽子

議員連盟」を発足させたわけですが、まずその動機なり目的をお聞かせくださ

21世紀は生命の時代。その生命の源である水は人間が生きるための基本的な財産。しかし、水の恵みをもたらしてくれる山や水源がどんどん弱ってきている。そのことが消費者や生活者に伝わっていない。だから、生活者に一番蜜着している「おいしい水」をキーワードに水の大切さを訴えていきたい。

昨年12月、国会議員60名に呼びかけ「おいしい水推進議員連盟」を立ち上げた上川陽子衆議院議員。国内だけでなく、世界的な規模で起こりつつある水危機に警鐘を鳴らし、国民と一緒に水問題を考え、伝統的な水文化をよみがえらせたいと語る。来年、日本で開かれる「世界水フォーラム」にメッセージを発信するほか、内外の水道水やボトル水のコンテストや格付けを行なうことも計画中という。

先般、上川先生の呼びかけで「おいしい水推進議員連盟」が発足したわけですが、まずその動機なり目的をお聞かせください。

  私は、21世紀は生命の時代だと考えておりまして、地元・静岡でも特に身体と食ということを基本にいろいろ運動してきました。そういう運動の中で、近年、森林が非常に荒れていることに気付いたのです。例年、鮎釣りをしている皆さんが川が毎年変化していて涸れてきているというのです。しかも、雨が降るとダーッと鉄砲水のように水嵩が増え、止むと急にガーッと引いてしまう。水質的にも、昔と比べて悲しい現象が起きていると。それは山が育っていなかったり、森林が育っていないためではないか、と言うのです。

  で、生命の時代ということなんですが、いちばん大事なのは食べ物と水なんですね。人間の体は7〜8割が水でできていますし、食べ物もすべて水が原料になっていて、水がなければ生育できないわけです。そういう意味では、水は人間が生きるための最大かつ基本的な財産なんですね。

  その水資源が、実はどんどん弱ってきている。農林関係、水道関係、専門家の方々は、そういう危機的な状況にあることを知っているのですが、その危機感が消費者や生活者になかなか伝わっていかない。やはり水の恩恵を受けている生活者サイドが、そういう意識をしっかり持たないと水は蘇らないと思うのです。そこで、一番生活者に密着した「おいしい水」をキーワードに、水の大切さを訴えていこうと。要するに、生きるということ、生命ということの全体像の中で、この問題に取り組んでいこうと考えたのです。

  そして、もう一回伝統的な水文化を掘り起こすとともに、特に都市部で発生している水涸れ現象とか、世界的な規模で起きている水不足問題とか、そういう水危機が国内のみならず地球的な規模で起きているということについて警鐘を鳴らしそれを解決していくための国民的な輪をつくっていきたい。そのために、水に関心をお持ちの国会議員の先生方に呼びかけて「おいしい水推進議員連盟」を立ち上げさせて頂いたわけです。     
     


先生の水体験とも深く関わっているようですね。
    私は静岡県の出身なんですが、最近、友人が天城で温泉を掘っていたら地下 1000メートルから温泉ではなくて、すばらしい硬水が出てきたのです。そしたら、大勢の人がボトルを持ってその水を汲みにいくわけです。静岡市内には安部川、 藁科川という二つの川が貫流していますが、その源流まで水を汲みにいくという現象も出てきていますね。それを見て、おいしい水を求める新しい行動、ライフスタイ ルがすでに生活者の間に芽生え始めているなと感じたのです。そこで、そういうライフ感覚をもう少し刺激をして前面に押し出し、日本の水政策や水管理政策に反映させ、水の文化そのものをもう一回蘇らせようと思ったので す。

議連の組織・機構はどうなっているのでしょうか。
  橋本龍太郎先生に会長をお願いし、お引き受け頂きました。橋本会長は一年後の平成15年度に日本で開催される第3回「世界水フォーラム」運営委員長として既に国際的にご活躍されておられます。具体的な取りまとめ等は国土交通省の河川局にお願いしています。
  水と一口にいっても、河川行政は国土交通省、環境行政は環境省、水文化は文部科学省、飲用水は厚生労働省、工業用水は経済産業省、農業用水は農林水産省、それから、発展途上国の水供給施設などに対する技術的・財政的支援は外務省という具合に、7省庁にまたがっているわけです。私達の活動は、それら水行政全般に係わるわけですが、役員には、そういう関係省庁の水政策に関わっておられる、あるいは関心を持っておられる国会議員の先生方にお願いしています。メンバ−は、自民党だけで60名でスタートしました。私が事務局長をやらせていただいて、幹事長には、お医者さんでもある鴨下一郎先生にお願いしています。

  

どんな活動をされるのですか。
  昨年12月に正式に旗揚げをしまして、もう数回勉強会を開きました。先月3日にもやりました。 また、第3回「世界水フォーラム」には、政府機関だけではなく、NGOやNPOも参加しますが、私達の議連も国会議員の任意団体として参画し、政府の見解とは別の視点から水問題についてのメッセージを発信していきたいと思っています。
  具体的には、60名のメンバーの方々が水についてどういう思いをもっておられるのか--世界水フォーラムでは水の声というのを募集していますので、そこに文集みたいな形で発表したいと思っています。いま水への思いを綴ってもらうようお願いしています。 それから、アンケートも実施しました。その回答の中に、こういう分野に取り組んでほしいというのがありますので、それを整理集約し、テーマを絞っていきたいと思っています。

定期的な勉強会とかイベントは考えておられるのですか。
  とにかく精力的に活動をしていこうということで、1ヵ月に1〜2回のペースで勉強会を持とうと思っています。当面はメンバーの先生方の意識調査や要望などをまとめたり、地域の様々な水文化について調査をしようと思っています。それから最近の水行政の取り組み状況や水に関する動きなどを広く情報収集し、その中からテーマを絞って取り組んでいこうと思っています。 

ご自身は、これまで水についてどんな思い出なり、関わりをもってこられましたか。
  私の地元・静岡は、一つの市の中に河川が貫流しているんです。源流から海まで。ですから、地域の生活と川が一体化しているのです。昔は、伏流水の水脈が網の目のように張っていて、私が通っていた小学校の周りにもいっぱい湧き水が出ていましたし、道路の脇には小さな水路がありました。子供の頃、湧き水をすくって遊んだりしたことがありますが、とても綺麗で冷たくて気持ちがよかった記憶が鮮明に残っています。そういうハッとするような綺麗な水とか、小さな砂粒がぽこぽこ浮き上がっている湧き水のたまり場は、今は周りにないんですね。ですから水というのは自然の恩恵として出てきているんだ、ということをややもすると忘れてしまう。自分の体にある水は、もともとは自然の山の中でつくられた水なのに、蛇口の水を飲んでいると、そのことを忘れてしまうのです。
  私も娘が2人いますけれど、都会の子は水道の水がどこから来るのか、教科書で学ばなければ分からない。水の原点を見るとか、触れるとかいった体験ができないのです。これは人間の生きる力ということからすると、非常に弱いと思うんですね。水道にしても、源流を見てもらうことが大切なのです。つまり、おいしい水ということから辿っていくと、当然、山に行き着くわけです。山を見てもらいたい。山と触れてもらいたい。そういうことを今すごく感じます。子供の頃に見た、あの綺麗な冷たい水がこんこんと湧き出る泉--自分が原体験した自然の姿を取り戻したいのです。

そういう環境は、今はなかなか見られなくなりましたね。
  そうなんです。それと日本は、こんなに豊かな水環境に置かれているのに、福岡市などでは渇水になると水源が枯渇し、給水制限や節水を余儀なくされます。それから、静岡市などでは、東海地震の恐れがあるものですから、タンクに絶えず水を蓄えておかなければなりません。そういう地域では、水は貴重なもの、水がないと生きていけないんだという危機感をもっているんです。
  今なお戦乱がくすぶり、たくさんの難民が出ているアフガニスタンでは、飲み水が不足し、極めて厳しい状況に置かれていると聞いています。日本の若い人たちがボランティアで井戸を掘って、それがすごく喜ばれているそうです。そういう水に困っている国々のことを考える、同時に、国内でも同じように水危機があるんだということも認識してほしいのです。
  21世紀は地球規模で水危機に陥ると言われています。中東やアフリカ諸国では、水は石油やエネルギーと同じように大変貴重な資源になっています。そういう現象がこれから世界的な規模で起きるのではないかと思うのです。豊かな水資源や水づくりの技術的ノウハウを持っている日本は、そういう水に恵まれない国々に対して積極的に貢献をしていく必要があると思います。生命の原点である水の分野で援助することは、日本の国際的評価を高めることにもなると思います。

おいしい水をアピールする企画なりイベントのようなものは考えておられるのですか。
  先程、水に関するライフスタイルが変わってきたという話をしましたが、そういう現象なり社会背景を踏まえて、おいしい水というものをもう一回考えよう。その第一弾として、水道水やボトル水のコンテストや国内の水と海外の水のコンテストなどを行って水の格付け、水道水の格付けをやろうと考えています。 それには、きちんとした評価基準も必要ですし、技術的に裏づけされた指標で格付けをしなくてはいけないので、格付委員会のようなものをつくりたいなと思っています。そこに専門家の方に入っていただいて検討をしていただき、議連のメンバーにも評価をして頂いて格付けをする提案を進めようと計画しています。 つまり、おいしい水の格付けを行うことによって、同じ水でも地域によって違いがあることを知って貰う。そうすれば、水道事業体にもお互いに競争意識が芽生えてくると思いますし、生活者にも、おいしい水の原点である山を大切にしようという思いが芽生えてくるだろうと思うのです。
  その意味で、水道事業に携わっている人達に元気を出してほしいのです。もっと表に出ていただいて、私たちはこういうことをしているんだ、こんな努力をしているんだ、こういう技術開発もしているんだ、ということをもっともっとアピールしていただきたいのです。私たちも側面から応援しますので…。

おいしい水を得るためには山を含めて水環境の保全に向けた総合的な水行政、水政策が必要かと思いますが。
  現在の縦割行政は、すごく弊害があると思いますね。水基本法をつくろうという動きもありますが、水に関しては縦割行政ではなくて1本横串を貫くような総合的な水政策が必要かと思います。そこは、やはり政治がリーダーシップを取って引っ張っていかなくてはいけないと思いますが、それには、きちんと説得できるだけの理論構成がなければなりません。いろいろな角度からおいしい水を取り巻く環境ということを考えていきながら、総合政策が是が非でも必要であり、それが一番いいんだという方向に集約できるような形にもっていけたらなと思っているのです。そうすれば、国民の健康とか福祉という観点からも、全く新しい切り口が見えてくるかもしれませんし、一本化へ向けた動きも出てくるのではないかと思うのです。
  「世界水フォーラム」も、国際会議が行われたよということでおしまいにするのではなく、国民的な意識改革につなげていくには、どうしたらよいのかという発想で取り組んでほしいのです。私たちも議連も、その方向で動き始めています。ただ自分たちの力だけではできませんので、他の団体や活動と連携し、おいしい水という輪の中に引き寄せて今申し上げたような課題・問題を解くカギにしていきたいなと思っています。

最後に、国民の皆さんにメッセージをお願いします。
  人間にとって生まれ育った土地やそこでの水との触れ合いは宝物だと思います。そういう生活になくてはならない水との関わり方を皆さんにプレゼントしたいと思います。そこに感動が生まれ、故郷の水を大切にしようという気持ちが芽生え、人に伝わり、赤ちゃんには、おいしい水でミルクをつくってあげたいねとか。そういうことをみんなで話し合える場を提供したいなと思いますし、皆さんに、そういう輪をつくってほしいと思います。行政任せではなく、生活者自らが、水への関心を深め、おいしい水づくりに参画して頂きたいと思います。

どうもありがとうございました。

 

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