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かみかわ陽子

論文・対談・投稿・マスコミ

 

「子どもがほしいのに持てない場合はどうしたらよいか」とのテーマでプレジデント誌の取材を受けました。以下、私の回答をご紹介します。

 

 子どもがほしいのに持てない場合はどうしたらよいか

プレジデント  2008年2月4日号

2006年、合計特殊出生率は6年ぶりに上昇し、1.32となりました。とはいえ、決して楽観できる状況にはありません。55年には、06年現在109万人である出生数は50万人を切り、日本は65歳以上の高齢者が四割を占める「超少子高齢社会」になることが予測されています。

しかし女性の出産に関していえば、私は希望を持っています。というのも未婚女性を対象に調査を行ったところ、9割以上の方が結婚したいという希望を持っており、また子どもを2人以上待ちたいと答えた方も多くいらっしゃるという結果を得ました。子どもがほしくても持てないという理想と現実のギャップを埋めるために、現在「子どもと家族を応援する日本」重点戦略の策定を進めています。

政府は、保育園・幼稚園の整備などというハード面での少子化対策を中心に行ってきました。にもかかわらず出生率が大きく伸びないのは、これまではキャリア形成と育児を並行してできないという現実があり、これはハード面の支援だけでは解決できないからです。

身体的にはピークでなくとも、仕事が一段落したという理由から30代後半を出産の時期として選ばざるをえない人も増えています。その結果、高齢出産に伴う流産などのリスク、さらには不妊問題を引き起こしています。

この背景には、男女とも自分の体についての正確な知識と理解が不足していることが挙げられます。子どもからお年寄りまであらゆる年齢層の人が近所に住んでいた頃には、誕生や死を間近で見て、年齢を重ねると体がどう変化していくのかを無意識のうちに学んでいました。

いまは違います。「30代後半での出産はリスクが高いことを20代の頃、正しく理解していれば、早い時期に決断ができたかもしれない…」という女性の声を聞くこともあります。

育児とキャリアは二者択一ではない

では、20代でキャリアを諦めて出産、子育てという道を選ばなければならないのかというと、そうではありません.「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」の考え方が浸透してくれば、キャリアかという二者択一ではなく、面々を取ることも可能になるのです。

今後は、政府としてハード面での支援に加え、出産・育児によってキャリアを中断せずにすむよう多様な働き方を選択できるようにするといった、ソフト面での支援にも重点を置いていきます。

不妊治療をされている方に対して支援をしていくことは、極めて大事な政策です。一方で、自分の体について知る努力をすることも重要です。特に女性には、自分の体についてよく理解し、体の状態に合わせて思いきって休むことを選び取るという余裕も持ってほしいと思います。

子どもがほしくても持てない人がいれば、愛情を受けて育つという環境に恵まれない子もいます。自分の子を持たなければだめだと思いつめないでほしい。たとえばアメリカでは、実子のない人が里親になって養子縁組をするといったケースも珍しくありません。日本では血縁を

大事にする傾向が強いのですが、養育能力がない親のもとに生まれた子どもたちを、血縁の有無にかかわらず育てていく気持ちを持っていただけたらと思います。

当然ながら、出生率という数字を上げさえすればいいのではありません。子どもを持ちたいという希望をかなえ、また、子どもが幸せに成長できてこそ、出生率上昇も意味を持つのです。子どもが好き、子どもがほしいという気持ちを、さまざまな形で活かしていただくことを願っています。

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