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かみかわ陽子

論文・対談・投稿・マスコミ

 

2008年1月30日付 フジサンケイ ビジネスアイ

仕事と生活の調和を国民運動に

内閣府特命担当相 上川陽子さん

 

―  国力の源泉である人口問題について最近、よく「少子高齢化」が枕詞のように使われる。しかし、その割には「少子化」に対する危機意識がまだまだ足りない

上川   とくに少子化問題は親、今の子育て世代が発信していくしかありません。2006年には約109万人の赤ちゃんが生まれましたが、私としては、育てている世代の発信できない現場の声に耳をすませて受け止め、それを大事にしながら少子化対策を遂行していきたいと思っています。第一次ベビーブームといわれる戦後の団塊世代(1947〜49年)の赤ちゃんは、最高の49年が年間約270万人。一人の女性が一生の間に産む子どもの数を表す合計特殊出生率は、47年の4.54から05年1.23、06年1.32になりました。また、平均年齢は26〜27歳から43歳へと高齢化しました

 

―  先行きもっと深刻なのでは

上川 06年末の将来推計人口によると、命をつないでいく基本的な営み(人口構造)に大きな変化が起きる見通しです。それをみんなに感じていただきたい。2055年には総人口が9000万人を下回り、その4割は65歳以上の高齢者、といった姿が示されています。15〜64歳の生産年齢人口は4600万人、総人口の51%にまで減少し、平均年齢が55歳となります。高齢者を支える方が負担を感じ、ものすごくバランスが悪くなります。社会の幸せ感や元気、活力がなくなってしまいます

―  人口減少下で貴重な人材をどう生かしていくか。少子化の背景には、結婚・出産、子育てに関する希望と現実の間にギャップが存在し、働き続けることと結婚して子供を持つことの二者択一を迫られている状況を解決する必要がある

上川 働き方の改革の第1弾として、仕事と家事・育児の両立を可能にするワーク・ライフ・バランスの実現に向け昨年12月18日、政労使の官民トップ会議で仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章と推進のための行動指針が策定されました。憲章は、国民的な取り組みの大きな方向性を示したもので、今、なぜ、仕事と生活の調和が必要か、それが実現した社会の姿、関係者が果たすべき役割を明らかにしました。また、行動指針は、企業や働く人たちの効果的な取り組み、国や地方公共団体の施策の方針を示したもので、社会全体としての目標として、年齢階層別の就業率や年次有給休暇の取得率、第一子出産前後の女性の継続就業率など14の数値目標を設定しました

 

政労使合意の憲章は大きな起爆力

上川 働き方の見直しは、これまで個々の企業の取り組みに委ねられていたことから、社会的な広がりに欠けていました。今般、政労使の合意によって憲章と行動指針が定められたことは今後、社会全体を動かしていく大きな起爆力になるものと確信しています。今年を『仕事と生活の調和元年』に位置付けていきたいと思います

―  産業界でもようやく、主要企業が子育て支援に本格的に取り組むようになってきた

上川 子育てにやさしい企業に対する、次世代育成支援対策推進法に基づく厚生労働省の認定マーク『くるみん』は、とくに男性の育児休業取得率など認定基準のハードルが高いようですが、認定企業は昨年末で403社(ほかに審査中12社)になりました。認定企業の多様な働き方、雇用制度は、そこで働く人たちに幅広い選択肢を提供することになります。経営トップ、管理層の問題意識や取り組み姿勢によるところが大きいわけですが、子育てを心配せず、仕事に集中できれば、生産性の向上、国際的な企業競争力の向上にもつながります。私自身がトップセールスで皆さんに熱く語りかけ、ワーク・ライフ・バランスを国民運動として展開していきたいと思っています

―  国と都道府県・市町村の連携強化とか、少子化対策の推進体制を充実する必要もあるのでは

上川 1月8日、内閣府に仕事と生活の調和推進室を新設しました。日本経団連には各企業に経営トップ直属のチーフ・ワーク・ライフ・バランス・オフィサー( CWO)を置くようお願いしました。それから、全国約1600の自治体にも首長直属の部局横断的な総合司令塔、少子化対策推進本部や地域ごとの推進会議を設置するなど、体制づくりに猛烈に取り組んでいます。国としての枠組みづくりとともに、各自治体の取組状況が一覧・比較可能なかたちで情報提供できるようにしていくつもりです。また、07年度から『家族・地域のきずなを再生する国民運動』を展開しています。11月の第3日曜日を『家族の日』、その前後各1週間を『家族の週間』とし、地方公共団体や民間の関係団体、有識者などと政府が連携・協力して、家族・地域のきずなの重要性を呼びかけるさまざまな行事の開催や広報・啓発を行なっていきます

―  企業にとって少子化対策は、経営改革、経営効率化のきっかけともなる。金融・税制面での奨励策は

上川 単なる企業の福利厚生施策ではなく、企業自身の経営の効率や業績アップに効果があるような先行モデルをどんどん紹介していきたい。例えば税制面では、企業内保育園に対する法人税の優遇措置(割増償却)を07年度から継続実施しています。また、育児手当などの経済的支援よりも、多様な育児サービスの提供に重点を置くことで、働き方に関する社会の仕組みそのものを変えていくことが大事だと思っています

子育てを支える「家族・地域のきずな」フォーラム

•  静岡大会=2月2日10時〜、会場・静岡県男女共同参画センター「あざれあ」

主催者あいさつ(上川陽子・内閣府特命担当相、石川嘉延・静岡県知事)/講演(音楽家タケカワユキヒデ氏「21世紀の子どもたちのために」)/家族の大切さを伝える創作劇「ハートフル」/分科会「子育てを支える地域の力」/親子ふれあいコーナーほか

•  高知大会=2月23日10時〜、会場・高知市文化プラザ「かるぽーと」

主催者あいさつ(上川陽子・内閣府特命担当相、尾崎正直・高知県知事)/こどものひとこと宝物表彰式/次世代育成支援企業認証書交付式/講演(内田伸子・お茶の水女子大学副学長「ゆとりある『待ち』の子育てが子どもを伸ばす」)/トーク(音楽家タケカワユキヒデ氏「21世紀の子どもたちのために」)/パネルディスカッション/分科会「ワーク・ライフ・バランス企業を目指して」ほか/親子ふれあいコーナーほか

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