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かみかわ陽子

論文・対談・投稿・マスコミ

 

導入まで 2年 裁判員制度の課題は

 

2007年7月12日付 中国新聞インタビュー記事

 

 

あと 2年を切った裁判員制度の導入までに解決しておくべき課題は何なのか。自民党の 「裁判員制度の円滑な実施のために」 と題する中間とりまとめで中心的な役割を果たした「裁判員制度と国民の司法参加のあり方に関する小委員会」委員長の上川陽子衆院議員に、国民の不安材料の解消策や報道のあり方に対する考えについて聞いた。

 

守秘義務の基準明確に

 

―― 国民の参加意欲が必ずしも高くない状況をどう見ますか。

制度は知られてきたが、その分、重大事件を扱うことなどに対する不安が広がっている。中でも、守秘義務と安全確保の問題は大変だ。

 

――  不安はどう解消していくべきでしょうか。

裁判員を経験した人が、自分の体験をどこまで話していいか分からない。守秘義務で守らなければいけない項目とともに、話してもいい項目を決めて、きめ細かく説明する必要がある。

法廷の公開の大原則と個人の安全という対立をどう解決するかは難しい問題。特に、地方など小さいコミュニティでは、誰が裁判員になっているか見ただけでわかり、不安だという声もある。裁判員を選ぶ地域の範囲を拡大するとか、法廷の中で配慮するとか、工夫してほしい。

 

報道側の自主規制必要

 

――  報道については、裁判員に対する取材のあり方と裁判官に予断を与えない公正な事件報道を課題に挙げています。

新聞、テレビ、雑誌など、それぞれの媒体で自主ルールを作ってもらうのはもちろん、裁判所とより協力的な形でルールができればいい。政府にも報道機関との協議の機会を設けてほしい。

「報道の自由」があるのでルールを国が決めるのは難しいが、理解度に違いがあっても困る。丁寧にコミュニケーションを図り、共有できるものを公表し、自主規制していただきたい。まずは、ガイドラインのようなものを日本新聞協会などから出していただけると、議論のたたき台になる。

 

――  自主規制を求めるべきケースとは。

例えば裁判員に取材する際、守秘義務の範囲外の話していい項目を聞くのはいい。だが、話してはいけないこともいろんなテクニックを使って聞き出そうとする意思が働きがち。裁判員が「話してはいけない」と思っていたにもかかわらず、しゃべらされた結果、萎縮してしまうことがあっては制度そのものが成り立たなくなる。報道の倫理観の問題だ。

 

――  制度に対する国民の理解を深めるのに不可欠なことは何ですか。

地方自治体の協力が欠かせない。自治会役員や民生委員など、地域社会で活躍している人たちにまず理解していただき、そこから住民に伝えていく形が望ましい。

模擬裁判を積み重ねていくことも大切。参加者から「心理的な負担が重く、日常生活との切り替えができないかもしれない。精神的なケアが必要では」との指摘もいただくなど、いい体験談を聞くことができた。よりよい制度にしていくため、絶えず改善していく取り組みが必要だ。

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