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かみかわ陽子

活動報告国会活動

  

  〔タイ・カンボジア出張報告〕

   「人身取引」の撲滅をめざすアジアの動きに呼応すべ

 

 今、国際社会では売春や臓器売買を目的とした女性や子供たちの「人身取引」が大きな問題となっています。とりわけ日本は人身取引の世界有数の「受入れ国」として批判に晒されています。アメリカ政府がこの問題への日本の対応を厳しく非難したことから国内でも関心が高まっています。私は三年前、ある国際会議にパネラーとして参加したことをきっかけにこの問題にかかわることになりました。

 九月上旬、ユニセフ(国連児童基金)の招待でタイとカンボジアを訪問し、「送り出し側」の実情を調査する機会を得ました。東南アジアの女性たちが海外へ送られる人身取引のうち、日本へ送られるケースの特徴として強く指摘された点は、件数が最も多いことに加え、組織暴力団がかかわるケースが多いこと、日本滞在中に出産した戸籍のない子供が増えていることなどです。 

  

 こうした中、タイでは今年八月、タクシン首相が自ら国民大会を主催し、人身取引との闘いを宣言しました。彼らの取り組みで日本にとっても参考になる点は、@売春の当事者である女性たちを「犯罪者」としてでなく人身取引の「被害者」として位置づけ、彼女たちの保護と実態の把握を最優先していること、A問題解決に当たっては周辺諸国との協力が欠かせないとの判断から、国際的な協力体制づくりに熱心に取り組んでいること、B政府がNGOの役割やノウハウを重視し緊密な協力関係を築いていることです。

 一方、タイ政府や現地NGOからは、日本に対し三つの要望が寄せられました。第一は、女性たちを犯罪者として扱うのではなく、人身取引の被害者として一定期間日本に滞在させ、十分なリハビリを行うほか、その間に帰国後の安全確認や日本国内における犯罪実態の究明を徹底して欲しいということ。第二は、人身取引を重大犯罪として位置づけ、厳罰化を図ってほしいということ(日本には人身取引そのものを禁止する法律が存在せず、適用される罰則も軽いため、再犯を防止しにくい現状です)。第三は、日本政府に対し、犯罪者についての情報提供や定期的な意見交換を求めたいということ(日本から逃げ帰った被害者の事情聴取だけでは必要な情報が得られず、捜査が難航するケースが多い)。こうした具体的な要望に対しては、今後、国内法を整備する中で誠実に応えていかなければなりません。

 しかし同時に、日本として人身取引問題に対するこれからの対応を考える時、今回、カンボジア国境地帯で見た厳しい現実を見過ごすわけには行きません。紛争終結から十年経った今も地域社会が立ち直れず、子供たちは極度の貧困の中でその日を生きることに追われています。そうした地域全体を覆う貧困が人身取引の温床になっているという事実です。すでにユニセフやILO(国際労働機関)はベトナム・ラオス・カンボジアなどで人身取引の撲滅をめざし地域開発や啓蒙活動を行っており、緒方貞子さんの提唱で国連に設置された「人間の安全保障基金」もこれらに支援の手を差し伸べています。そうした努力の中から一つでも二つでもモデルとなる成功事例を作り出していくことが、今は何より大切です。これまで「人権軽視の国」と批判され続けてきた日本だからこそ、こうした活動をさらに積極的に応援していくべきではないでしょうか。

 

 

    イナゴの羽むしり作業

 

カエルの解体作業

 

    カンボジア国境で働く子供たち

 

NGOスタッフと意見交換

 

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